ジェジュンの歩みを追うと、激しく歌う自分と、言葉を静かに届ける自分を、何度も選び直していることがわかります。
ロックへ進んだから、以前の声を捨てたわけではありません。
2013年のソロ作品から、日本でのオリジナル曲とカバー、2025年のロック作品まで。
それぞれの制作で何を求められ、どんな声を選んだのかをたどります。
2013年、グループで整える声からソロで引き受ける声へ
JYJの一員として歌うとき、ジェジュンは三人のバランスを重視していました。
2013年末には、グループで力を抑えるのは、全体を成立させるためだと説明しています。
ソロになると、その調整の相手が変わります。
一人の声でバンドと向き合い、客席を引っ張ることまで引き受ける。
本人も、初のソロツアーを通じ、バンドとの呼吸と、自分の音楽を発揮する方向をつかんだと振り返りました。

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その年の初ソロミニアルバム『I』では、キム・バダとロックの声を探しています。
「One Kiss」で求められた重い声は、最初から自在に出せたものではなく、録音の現場で発声や表現を学んだ結果でした。
すでに得意な声を並べるだけでなく、曲が必要とする声を身につけることが、ソロの出発点にあったのです。
『NO.X』で広がった、ロックの中の歌い分け
2016年の『NO.X』へ進むと、ロックという枠の中でも、異なる表情の曲を担う姿が見えてきます。
入隊前に制作された映像を用いた同年2月のホログラム公演では、アコースティックな「Breathing」や、重厚なバラード「Run Away」などが披露されました。
これは、その日に本人が会場で歌ったライブとは区別する必要があります。
それでも当時の公演評が「Run Away」の声質と歌い方に新しい可能性を見いだしたことは、激しい代表曲だけでは捉えられない方向が育っていたことを伝えています。
2018〜2019年、懐かしい声を保ちながら表現を広げる
2018年6月、日本で初のソロシングル『Sign/Your Love』が発売されます。
同日の横浜アリーナ公演で本人が語ったのは、ファンが以前から親しんできた声を意識したということでした。
その声を保とうとしてきた自覚があり、新曲にも昔を思い出せる感触を持たせたかったのです。
ここでは、新しい歌手として出発することと、長く聴かれてきた声を大切にすることが両立しています。
ロックを経験した後も、懐かしい声を大切にしていました。
一方、2019年には、自分の声への理解が以前より深まったと話しています。
十代のころは、新しい曲を歌いこなすまでに時間を必要としていた。
大人になってからは、長く歌い込まなくても、感情や曲の世界を表現しやすくなったというのです。
本人が挙げた成長は、音域の拡大よりも、声の扱い方や本番に向けた調整でした。
歌える曲が増えた理由を、高い声が出るようになったという一点に置かず、曲に入り込むまでの経験の蓄積として見ると、この時期の変化がわかりやすくなります。
カバーで深めた、言葉を相手へ渡す歌
2019年のツアーで歌った中島みゆきの「化粧」には、言葉を伝えるための具体的な考え方がありました。
本人は、整然と歌うことより、歌詞にあるメッセージを話すように表すと説明しています。
足や胸をたたく動きも伴い、歌の人物の感情を、自分の身体を通して届けていました。
ロックで声の質感を広げた歩みと並行して、言葉をどの距離から語るかも、歌唱の大切な選択になっていたのです。
2020年の『Love Covers Ⅱ』では、原曲のイメージを大切にする姿勢を、あらためて示しました。
歌詞がどんな人物の思いなのかを考え、原曲と同じ目線に立とうとする。
選曲も周囲の意見を聞き、聴く人に喜んでもらえる曲を探しています。
他人の曲を借りる以上、気軽に自分流へ変えることには慎重だったのです。
カバーの広がりは、レパートリーの数だけでなく、誰の思いを背負って歌うかという責任も増やしていました。
準備では、歌手の昔の映像や歌詞を繰り返し確かめ、感情の込め方を研究したといいます。
「for you…」では、録音で歌い始めてすぐに感情が高まり、涙が出たこともありました。
時間をかけて曲を理解することと、その場で生まれる感情を受け止めること。
この二つが、カバーの歌声を支えています。
HYDEとの制作、そして共演者と重ねる声
2020年に発表された「BREAKING DAWN」では、憧れのHYDEから、自由に歌ってほしいと任されます。
ジェジュンは完成度の高い仮歌に刺激を受け、声の出し方をまねることも考えましたが、最終的には自分の歌になったと語りました。
キム・バダに新しい声を教わった初ソロ作から、今度は憧れの歌手の楽曲を、自分の判断で引き受ける段階へ進んだことが見えてきます。
HYDEも、ジェジュンが歌ったときに魅力が出るよう曲を整えたと説明しています。
歌詞についても、アニメの主題に加えて、ファンを大切にする彼の姿を重ねていました。
一方、完成した歌にはHYDE自身の影響が強く出ていると、冗談交じりに評しています。
憧れの影響を、本人と作り手が違う形で受け止めていたことも興味深いところです。
2022年の『Fallinbow』では、共演者と声を重ねています。
「六等星」でジュンスと久しぶりに録音した際には、声を合わせた瞬間に、グループで歌っていた感覚が戻ったといいます。
ソロで個性を強めた後も、相手と一緒に歌う感覚が失われたわけではありません。
一人で表す声と、二人で完成させる声を行き来しています。
2023年、カバーとロックを一つの公演へ

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『Love Covers Ⅲ』では、それまでライブで歌っていた「GLAMOROUS SKY」などを、初めてスタジオ版として収めました。
ステージの定番を、録音作品としてあらためて形にしたのです。
「木蘭の涙」も含む選曲の中心には、誰かに会いたい、思いを届けたいという気持ちがありました。
なじみのあるカバーを続けながら、その時点の思いを作品として残す取り組みになっています。
同年11月2日の横浜公演では、カバーのバラードと、自身のロック曲が同じ舞台に並びました。
公演評では、「木蘭の涙」の力強い歌に対し、後半の「Big Revolution feat. SUGIZO」には荒々しいボーカルが記されています。
静かな曲から激しい曲へ移ると、声が担う役割も変わる。
別々に育ててきた歌の表情を、一晩の中で行き来する姿が見えてきます。
ただし、本人は同年、二十年の活動で声に深みが増したのかと問われても、簡単には肯定しませんでした。
むしろ、満足したと思っても、自分の不足を感じることが増えたと話しています。
聴く側が成長を感じることと、歌う本人が到達したと感じることは別です。
ファンの言葉に勇気をもらい、再び挑もうとする。
多くの歌を身につけても、完成形に落ち着こうとしていないところに、次の制作へ向かう理由があります。
2025年、整えた声から自由になる選択
『Beauty in Chaos』の「Last VoW」では、ジェジュンは、組み立てた発声や計算した音を前面に置かず、本能的に歌ったと説明しました。
ロックの声を学び始めた時期を経て、今度は整え過ぎない歌を自分から選ぶ。
ここでの変化は、技術を手放すことではなく、仕上がりの美しさを何に求めるかが変わったことと捉えられます。
同年6月1日の幕張公演は、ロック曲を中心に組まれました。
それでも「Kiss B」では、座った姿勢で、やさしく語りかける歌声を聴かせたと記録されています。
激しい曲を選ぶ割合が増えても、柔らかな声が消えたわけではない。
公演全体の勢いの中に違う温度を置けることも、それまでに育てた表現の働きです。
同年10月の『Rhapsody』では、久しぶりの日本語オリジナル曲を、ロックにしたいと考えていました。
作曲家に求める雰囲気を伝え、J-POPに寄った作品を作ろうとしたといいます。
日本語でどんな音楽を届けるかも、本人の大切な選択であり続けています。
この作品には「Last VoW」などの日本語版も収録されました。
韓国で発表した曲と、日本語の新曲が同じアルバムに並ぶことで、ロックと日本語歌唱の歩みが一つの作品につながっています。
新しい声を求めながら、親しまれてきた声も残す。
ジェジュンの変遷は、その両方を持ち、曲ごとに選び直してきた歴史といえます。
具体的な声の使い分けは、ジェジュンの歌い方で掘り下げています。

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