リアム・ギャラガーの歌には、声そのものが前へ出てくるような強さがあります。
ざらついた質感や、手を後ろに回してマイクへ向かう姿も、その印象と深く結びついています。
ただ、彼の歌を強い声の連続として捉えると、柔らかな部分をどう残しているのかが見えにくくなります。
「Champagne Supernova」の録音には、強い高音へ向かう前に、柔らかく歌う部分を確保したという具体的な話があります。
曲の中で声を使い分けることと、その声が生きる状態を選ぶこと。
そこからリアムの歌い方を考えてみましょう。
「Champagne Supernova」公式MV(楽曲1995年・MV公開1996年)。
ざらついた声の中にも、旋律を歌う魅力がある
2017年のNMEの取材記事で、トム・ハワードは、リアムの歌を生々しくざらついたボーカルと、その態度や存在感が結びつくものとして描いています。
強く耳に残る質感は、彼の歌い手としての魅力の一つです。
その一方、歌い始めのリアムを知るボーンヘッドは、もっと天使のようで旋律的だったと振り返っています。
そこにも、すでにリアムだとわかる声があったそうです。
この二つの証言を並べると、彼らしさをざらつきの量だけでは説明しきれないことが見えてきます。
声に角があることと、旋律を歌うことは、リアムの中で同時に成り立っています。
強い部分で耳をつかみながら、曲の流れを担う声でもある。
歌声の質感に注目するときにも、フレーズがどこへ向かうかを一緒に追うと、歌の組み立てがわかりやすくなります。
「Champagne Supernova」は、柔らかな部分から録り直した
『(What's the Story) Morning Glory?』の制作を担当したオーウェン・モリスは、「Champagne Supernova」の歌を録り直した経緯を語っています。
通して繰り返し歌うと、高い部分を歌ったあとの声が次第にかすれていったため、最後には曲を部分ごとに録る方法を選びました。
柔らかい部分を先に歌い、高い部分を最後に回したのです。
柔らかな歌い出しと、盛り上がる高音。
両方を残すために、声を出す順番まで選んでいたことがわかります。
高いところの強さに惹かれたときにも、その手前でどんな声から始めているかに耳を向けると、歌の幅をつかみやすくなります。
声を近くに感じさせるため、効果を抑えることもある
Beady Eyeの「Second Bite of the Apple」では、歌をどれだけ飾るかという選択もありました。
2013年のCINRAの取材でリアムは、ゲム・アーチャーの提案で残響などを抑え、家でギターを弾いて歌うような音を目指したと説明しています。
リアムが挙げた理由は、周囲の音が大胆に展開するからこそ、歌を効果で覆いすぎないほうが、その世界が生きるというものでした。
響きを控えた声を中心に据え、その周囲を音が動いていく。
強い声を持つ歌い手でも、広く響かせることと、近く感じさせることを、作品に応じて選んでいます。
同じ取材でアンディ・ベルは、リアムの声に個性があるから、その後ろで自由に演奏できると話しています。
ゲムも、楽器だけならすぐには自分たちの曲とわからないような音でも、リアムが歌えばバンドの音になると説明しました。
歌声が中心を保つことで、伴奏には大胆に変えられる余地ができていたのです。
ここで声が担うのは、音量で楽器に勝つ役目だけではありません。
音の景色が変わっても、誰の歌を聴いているのかを感じさせる役目です。
「Second Bite of the Apple」では、声の近さと、その周囲の音の動きを別々に追ってみると、この関係を考えやすくなります。
「Second Bite of the Apple」公式公開音源(2013年)。
覚えられる旋律を、自分の声で歌う
2017年のThe Currentの取材でリアムは、口ずさめて覚えられるメロディーを大切にする考えを話しています。
自分自身も、ロックンロールを歌うシンガーとして捉えていました。
独特の声の質感は、聴き手が持ち帰れる旋律と結びついてこそ、一曲の魅力になります。
リアムの歌に惹かれた曲を追うなら、声のざらつきだけでなく、口ずさみたくなるフレーズをどう担っているかも、聴く手がかりになるでしょう。

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その姿勢は、歌詞の意味をどこまで説明するかにも表れています。
2017年のRock Cellarの取材でリアムは、歌の意味を言葉で決めてしまうと、聴き手が自分なりに感じたり探したりする余地を狭めてしまうと話しました。
歌へ自分を注ぎ、受け取る人に何かを感じてもらうことを重視しているのです。
説明を添えなくても、声の勢いや旋律によって、聴き手の中に感情が生まれることを信じているという見方ができます。
同じ言葉でも、強く押し出して歌うのか、柔らかく残すのかによって、受け取り方は変わります。
リアムが一曲に込めるものは、その声の届き方にもあるのでしょう。
マイクへ向かう姿勢には、本人の歌いやすさと気持ちがある
リアムの立ち姿で印象的なのが、手を後ろに回してマイクへ向かう姿です。
2017年のNMEの取材で本人は、下を向いて歌うことを好まず、マイクは同じ高さか、少し上にあるほうを好むと話していました。
手の位置についての説明には、気持ちの違いもあります。
ポケットに手を入れると、ただこなしているように感じる。
後ろへ回すと、戦いに向かうような気持ちになるというのです。
外から見ると様式になっている姿にも、本人なりの感覚があります。
この話から具体的にわかるのは、リアムには声を向けたい方向と、歌へ入っていくための構えがあることです。
手の位置だけを取り出すより、マイクに対してどこへ声を送ろうとしているか、そこへどんな気持ちで立つかまで含めて見ると、あの姿の意味が伝わってきます。
客席との関係も、外見だけでは決まりません。
The Currentの取材では、リアムは自分も会場の後ろで静かに聴きながら、最高の時間を過ごすことがあると話しています。
盛り上がる客席を好む一方で、動かずに聴く人にも歌が届いていると捉えていました。
前へ突き出すような歌声は、目の前の派手な反応だけを相手にしているわけではないのです。
強い声だけを取り出すと、リアムの歌はつかみにくい
「Champagne Supernova」では、柔らかな部分と高い部分を両方残すために、録る順番を変えました。
Beady Eyeでは、自分の声を近く感じさせる響きを選びました。
ステージに立つときにも、本人が好むマイクの高さと、歌う気持ちへ入る構えがあります。
こうした選択を見ると、リアムの歌は、ざらついた声を強く出すことだけでは成り立っていません。
どの部分にどんな声を残すか、どの響きで届けるかを含めて、その存在感が作られています。
強い声に惹かれたあと、その手前の柔らかさにも耳を向けると、一人の歌い手としての幅が見えてきます。
Oasis初期からBeady Eye、ソロ、再結成までの歩みは、リアム・ギャラガーの歌唱変遷でたどっています。

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