LISAの歌には、ラップの密度とメロディーの柔らかさを使い分ける面白さがあります。
ビートの上に言葉を詰める「MONEY」もあれば、柔らかな歌声を前に出す「Dream」もあります。
その違いは、強く歌えるかどうかだけでは説明できません。
曲の中で声に何をさせるかを、彼女は選び直しています。
「MONEY」と「LALISA」で違う、ラップの置き方
本人が「MONEY」で楽しんだのは、強いビートに速い言葉を乗せる、タイトなラップでした。
一方の「LALISA」には、メロディックなラップがあります。
言葉の密度で進めるか、旋律の流れを含めるかで、声の役割が変わります。
比べる入口は、声量の大小よりも、言葉とメロディーの関係にあります。
そのラップに乗る堂々とした態度も、彼女にとっては歌う中で作られるものです。
「LALISA」の制作時には、特定のフレーズを口にすることで自信が湧くとも話していました。
最初から強気な気分が完成していて、それを声にするだけではありません。
言葉を歌い、その人物として振る舞うことが、本人の気持ちも押し上げるのです。

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「Moonlit Floor」では、声の柔らかさを曲の中心に置く
「Moonlit Floor (Kiss Me)」は、幻想的な歌声とラップの両方を生かした曲として紹介されています。
Sixpence None the Richerの「Kiss Me」の旋律を取り込んだ、親しみのあるメロディーも大きな特徴です。
この曲の魅力は、言葉をリズムへ乗せる持ち味を残しながら、歌声の柔らかな質感を前に出せることです。
メロディーを任せたときの表情まで含めて、LISAの歌になっています。
ただし、LISAはこの曲を自分が作詞したものとはしていません。
歌に恋愛の気配があることと、本人の私生活をそのまま歌っていることは別です。
歌い手としての仕事は、書かれた気持ちを、自分の声の魅力で届けるところにあります。
「New Woman」の切り替えは、曲の流れの中で生きる
ロザリアと共演した「New Woman」では、冒頭からラップと歌を行き来するLISAの表現が特徴として挙げられます。
曲の途中では流れがゆっくりになり、ロザリアの艶のある世界へ移ってから、再びビートが勢いを取り戻します。
声だけを取り出して一種類の質感に決めつけると、この面白さは見えにくくなります。
LISA自身のラップと歌の違いに加え、曲の速度感や、相手の声へ渡す展開も表情を作るからです。
声を切り替えることが、曲を次の場面へ進める働きにもなっています。
この曲ではKuk Harrellがボーカル・プロデュースを担い、Tove LoやIlyaらもバックボーカルに参加しています。
完成した音の厚みには、主役の歌と、それを支える声の重なりがあります。
LISAの一声だけで、録音にある響きのすべてを説明しようとしないことも、歌の魅力を捉えるうえで大切です。
「Born Again」で、三人の声の中に置かれたLISAの歌
Doja Cat、RAYEとの「Born Again」では、ラップをDoja Catに任せ、LISAが歌う側へ回る組み合わせが評価されています。
三人それぞれの音色が、曲を進める構成です。
ファンキーなベースを持つ曲の中で、声が交代するたびに印象が変わりながら、つながりは保たれています。
LISAの歌を考えるうえでも、誰と歌い、どこを受け持つかは大切です。
この曲では、歌う役を引き受けることで、相手のラップと組み合わさる魅力が生まれています。
「Born Again」やTylaとの「When I’m With You」では、しっかりした力を感じさせながら、親しみやすさもある歌声が評価されました。
一方、「Chill」では、そっけなさや冷ややかな態度が曲の印象を作っています。
同じアルバムの中でも、声で相手を引き寄せる曲と、距離を感じさせる曲があるのです。
どんな気分を前に出すかによって、その声が持つ意味も変わります。
共演者のいる曲と一人で歌う曲を並べると、選択の幅が見えてきます。
「Dream」の小さな歌が伝えるもの
「Dream」の特徴として挙げられるのは、柔らかな歌唱と、子守歌を思わせる穏やかな音作りです。
制作にはShintaro Yasudaとher0ismが関わっています。
派手な舞台の姿とは違う感情を届けるために、声と伴奏が同じ方向を向いた曲です。
ここでは、激しさを足して存在感を作る方法より、穏やかな歌を受け止められる環境を整えることが効いています。
冒頭の歌を支えるのは控えめな鍵盤の音で、サビには豊かなシンセサイザーが加わります。
静かな始まりから、伴奏の広がりとともに気持ちを届ける構成も、歌を引き立てています。
アルバムの過剰さに厳しい批評でも、「Dream」については、飾りを抑えたことで表情豊かな声が伝わると評価されました。
声の良さを見せるために、音数や仕掛けを増やすことが最善とは限らないのです。
この曲で注目したいのは、ラップの速さや華やかな共演とは別の場所にある、感情を運ぶ声の存在感です。
その歌は、本人にとって気軽に出せるものでもありませんでした。
LISAは「Dream」の録音で不安を感じたことを明かしています。
強く振る舞うことと、恋愛の感情を作品にすることでは、必要な勇気が違います。
柔らかな声の奥には、感情を歌として差し出す選択もありました。
踊りながら歌うときは、声の配分も課題になる
『Always Lalisa』で取り上げられたソロ公演の準備には、歌と踊りを同時に成立させる難しさが表れています。
コーチがもっと多くの部分を歌うよう求める一方、LISAは激しい振り付けと同時に歌うには息が足りなくなると伝えていました。
これは、録音した歌声の魅力とは別に、一回の舞台でどう声を保つかという問題です。
激しい動きを続けながら、必要な場所で歌える状態を作る必要があります。
映像の完成形だけでは見えにくい、歌う部分と踊る負荷の兼ね合いが、リハーサルでの課題になっていたのです。
初のソロ活動でも、一人で約三分を担い、終わりまで力を保つために、日々の運動やピラティスを取り入れていました。
舞台での声は、曲の歌い方だけでなく、全体を支える体力とも切り離せません。
LISAの歌い方の面白さは、タイトなラップ、柔らかなメロディー、共演者との役割の違いを、一人の表現として行き来できるところにあります。
力強さを感じる曲だけでなく、静かな歌も並べると、彼女が声に任せる仕事の多さが見えてきます。
そこへ至る録音での苦労や制作環境の変化は、LISA(BLACKPINK)の歌唱変遷でたどっています。

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