ころんの歌の歩みには、いつもの声を生かす方向と、その印象を変えてみる方向があります。
制作側と声の魅力を探った「だいよげん」と、本人が新しい挑戦と位置づけた「シンフォニア」は、その違いがよく表れた作品です。
柔らかな歌声やファルセットは、初期の舞台にもありました。
すでにあった表現を土台に、どんな選択が増えていったのか。
2019年、自分の言葉と歌声を結びつけた「敗北ヒーロー」
2019年5月29日、ころんは初のオリジナル曲「敗北ヒーロー」を公開しました。
作詞はころん、作曲はるぅとと松。
すとぷりのメンバーであるるぅとは、先に受け取った歌詞のイメージから、ころんをどう表す曲にするか考えたと説明しています。
るぅとは、出来上がった曲へ歌声が入ったとき、言葉と音楽に一体感が生まれたと振り返っています。
歌い手の個性を、声質だけでなく、自分で選んだ言葉からも形にする。
この曲は、ころんが自分自身の物語を歌ううえでの出発点になりました。
一方で、そのころの本人が、完成された歌唱技術を自分たちの売りとしていたわけではありません。
2019年のメットライフドーム公演を前に、本人は歌やダンスにはまだ課題があると話しながら、観客を楽しませるためなら挑戦したいと語っていました。
上達したあとに人前へ出るのではなく、届ける相手を思い浮かべながら舞台を作る。
歌とエンターテインメントを一緒に育てていく姿勢が、この時期から見えます。
2020年初頭には、柔らかさもファルセットもあった
2020年1月4日のZepp Nagoya公演でも、すでに歌い分けていました。
「Move on!」では柔らかな声を聴かせ、「少女レイ」ではファルセットを使っています。
高い声をひとつの調子で押し通す歌い手、という出発点ではなかったのです。

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初期から複数の表情があり、その声をどんな作品や場面に置くかが変わっていく。
ここを起点にすると、その後の広がりも捉えやすくなります。
「だいよげん」で、キャラクターより声を前に出す
同年4月に公開した「だいよげん」では、みきとPと制作を行いました。
曲の世界はみきとPに任せ、難しさを感じた歌は、助言を受けて自分の色にしていきました。
みきとPが焦点を当てたのは、ころんのキャラクターよりも声でした。
「敗北の未来地図」で、悔しさも歌う題材にする
2020年5月の「敗北の未来地図」は、「敗北ヒーロー」の続編です。
制作にあたり、るぅととは前作より勢いのある曲にしようと話し合いました。
ころんは、予定していたことが進まない悔しさを背景に、暗さを含む言葉でも未来へ進む気持ちを伝えようとしています。
この曲では、励ましの内容が変わっています。
明るく背中を押すだけでなく、思いどおりにならない気持ちを抱えたまま、一緒に乗り越える歌へ。
歌う言葉に悔しさを引き受ける役割が増えたことは、前作との大切な違いです。
『アスター』で、一曲ごとに違う自分を選ぶ
2021年1月の初フルアルバム『アスター』では、グループとソロの違いも、歌うときの判断につながりました。
すとぷりでは他のメンバーとの役割を考える一方、ソロでは、曲ごとにリスナーが見たい自分を考えたというのです。
録音前にはリスナーの反応も確かめていました。
メンバーの中で役割を選ぶことから、一曲ごとに歌う自分の姿を選ぶことへ。
その判断が、アルバムの表情を広げています。
それでも、自分の言葉でリスナーに向き合う歌は続きます。
2023年の「ポジティブブルー」も、ころんが作詞し、るぅとと松が作曲した曲でした。
本人は、一緒に困難を越えてきた相手と、この先の壁も越えたいという思いを説明しています。
他者の世界で表現を試すことと、自分の気持ちを直接歌うことが、並行しているのです。
「シンフォニア」で、いつもの透明感から離れてみる
2024年12月24日に公開された「シンフォニア」は、声そのものの印象を変える試みでした。
ころんは、普段と異なるケロケロボイスを、自分にとって新しい挑戦と説明しています。
音程の動きを加工した、電子的な質感も含めて届ける歌です。
海を思わせる曲調に、加工した響きを重ねる選択です。
「だいよげん」で生かした声の持ち味に加え、別の質感も試したのです。
新しい表現と、歌い続ける曲が同じ舞台に並ぶ
2025年12月17日には、2作目のフルアルバム『空色エンドロール』を発表しました。
表題曲は、ころんの希望で*Lunaに制作を依頼した曲です。
長く憧れていた作り手とともに、活動を支えた人たちへの思いを歌にしました。
新しいアルバムには、声を加工する方向とは別の表情もあります。
「Easy×Breezy」は、力を抜いて隣に寄り添うような歌として受け止められる一曲です。
大きく声を張る場面を増やすことだけが、ソロ作品の広がりではありません。
言葉の終わりをどう残すかという、小さな動きにも目を向けられます。
翌2026年1月、さいたまスーパーアリーナで開いたワンマンでは、新作と以前からの曲が同じ舞台に並びました。
1月4日夜公演では、「少女レイ」で演じるように歌い、「ヒバナ」では激しい声を響かせ、「敗北の未来地図」では思いをまっすぐ届けました。
新曲だけで現在地を示す公演ではなく、以前から歌う曲も、その日の流れを作っています。

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この公演では、トロッコで客席をあおる賑やかな曲の連続から、「唱」の歌とダンスへ進み、その後にバラード「月は綺麗なのに」を置きました。
ひと息整えてから、大きな月を背に丁寧に歌う場面へ移る流れです。
曲ごとに声を変えるだけでなく、強く動いたあとに柔らかな歌をどう届けるかまで、舞台全体で組み立てています。
初期からあった声の幅に、録音で作る質感と、大きな会場を動かす曲順や演出が重なってきた。
ころんの歌の広がりは、その積み重ねとして捉えられます。
曲ごとの声の使い分けは、ころん(すとぷり)の歌い方で詳しく扱っています。







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