ヘウォンの歌唱をたどると、力強さと柔らかさの両方が、デビュー前から紹介されていたことに気づきます。
その後の変化を知る手掛かりは、声が大きくなったか、高い音が増えたかという比較よりも、その声をどんな場面で使うようになったかにあります。
NMIXXの複雑な曲を歌うことと、親しみやすい曲に合う声色を見つけることは、同じ課題ではありませんでした。
初期の録音での戸惑いから、余裕を意識したアルバム制作、語りの役割まで。
本人の振り返りと作品の記録を重ねると、持ち味を曲へ生かしていく過程が見えてきます。
2021年、柔らかなソロと力強いデュエットから始まった
2021年11月、JYPの新人紹介企画でヘウォンが披露したのは、ステファニー・ポエトリの「I Love You 3000」でした。
穏やかなベッドルームポップに甘い歌声が乗り、温かな雰囲気を作るカバーです。
大きな音で圧倒する歌唱だけが、最初の名刺だったわけではありません。
後年の柔らかな表現を考えるときにも、この出発点は大切です。
同じ月には、リリーと歌うデスティニーズ・チャイルドの「Survivor」が公開されます。
こちらでは、ソロカバーでの甘い声とは異なる、芯のある力強い歌唱を披露しました。
一人で親密な空気を作る曲と、二人の声を組み合わせて力を示す曲。
デビュー前の時点で、ヘウォンには複数の表情を見せる機会が用意されていました。
変遷の出発点にあるのは、声の種類が一つだったという話ではなく、それを作品の中で使い分けていく可能性です。
2022年、強い第一印象と「KISS」で感じた難しさ
2022年2月にNMIXXがデビューした「O.O」は、曲の途中で音楽の景色が大きく切り替わる作品でした。
ヘウォンは、初めて曲を聴いたときの新鮮さを語っています。
秋の「DICE」の頃には、慌ただしく過ぎたデビュー期に比べて自信が増したことにも触れていました。
まずは、自分たちの音楽とパフォーマンスを人前へ届ける経験を積む時期だったといえます。

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その一方で、別の曲調では課題もありました。
ヘウォンが2023年2月に振り返ったのが、前年に取り組んだRAINBOWの「KISS」のリメイクです。
ヘウォンは声色をつかむのが難しく、あるフレーズをとても力強く歌っていたと明かしています。
音が出ることと、その曲らしい明るさを出すことは別だったのです。
これは柔らかな声を持っていなかった証拠ではなく、曲ごとの加減を見つける難しさが表れた経験でしょう。
2023〜2024年、声を重ねる曲と、親しみやすい曲への広がり
2023年の「Love Me Like This」を収めた『expérgo』では、声の組み合わせが作品の魅力として前面に出ました。
以前のシングルでの強い歌唱に加え、この曲では複雑なハーモニーにも耳を向けたくなります。
ヘウォン、リリー、ソリュンの連携は、アルバムを支える聴きどころの一つです。
一人の声の迫力だけでなく、異なる声がつながることで歌の厚みが生まれています。
この時期、ヘウォンは、デビュー作では強い第一印象を目指し、その後は自分たちの音楽をより多くの人に好きになってもらう道を進んでいると話しています。
他のメンバーの長所を自分に加えるなら、ベイとジウの声の大きさが欲しいという答えも印象的です。
歌唱力の高いメンバーが並ぶ中でも、自分の声だけで完結せず、周囲に魅力を見いだしていたことが分かります。
2024年には、本人が前年の「Roller Coaster」に対する見方の変化も明かしました。
初めは聴きやすさが長所だと捉えていた曲を、ファンが強く愛してくれたことで、自分もさらに好きになったというのです。
声の技巧だけで曲の価値を決めず、聴き手との間で育つ魅力を受け止める経験でもあります。
親しみやすさは、複雑な曲の合間に置く小さな要素ではなくなっていきました。
同じ2024年でも、『Fe3O4: BREAK』でヘウォンが好きな曲に挙げたのは「Run For Roses」でした。
理由は、強いギターを含むバンドサウンドへの好みです。
穏やかな方向へ進むことで力強い音楽から離れたのではなく、異なる音楽を好む感覚が共存していました。
この幅を残したまま、次の作品では別の見せ方を探していきます。
ソロでは、物語の人物像を表す歌にも取り組みます。
2024年9月の「Maru Is a Puppy」は、人間になった子犬が主人公のウェブトゥーンのテーマ曲です。
ヘウォンのはつらつとしたエネルギーが、物語の世界に重なっています。
NMIXXでの強い印象に加えて、物語の愛らしさを担う歌も、作品として届けるようになったのです。
落ち着いた親密さとは別の、明るく弾む表情も見せています。
2025年、「力を抜く」よりも余裕を作る
2025年の『Fe3O4: FORWARD』では、力強さを示すだけでなく、ゆとりを感じさせる表現へも関心が向いています。
ヘウォンは、2024年10月から録音を始め、全曲にわたって多くの修正を重ねたと説明しています。
タイトル曲だけでなく、アルバムを通して一つの作品になることを大切にした制作でした。
本人が示した言葉は、力を抜いたというよりも、余裕に近いというものです。
軽く歌って済ませる感覚と、準備の上でゆとりを見せる感覚を、ここでは分けて考えたいところです。

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その頃には、「High Horse」などの導入部に使う、息を多く混ぜる発声を、自分の好きな歌い方として説明しています。
曲に合わせた加減が、本人の言葉でも具体的になっています。
柔らかな表現が増えても、力強い歌は残りました。
2025年7月のファンミーティングでは、リリーとの「Survivor」を再び披露しています。
デビュー前の企画を振り返るユニットステージとして、当時の曲に取り組んだものです。
同じ曲があるからといって録音条件を無視した能力比較はできませんが、原点のレパートリーを現在の舞台へ持ち込んだ事実は、以前の持ち味を手放していないことを示しています。
2025年7月の公演より。
「Press」「Graveyard」「Survivor」を収めたステージクリップ。
歌う言葉と、曲の入口にも向き合う
2025年のフルアルバム『Blue Valentine』では、「PODIUM」の作詞に参加しました。
本人が担当部分として語ったのはブリッジです。
海外公演の当日に時間をやりくりし、ありふれてはいないけれど、聴き手に遠く感じさせない流れを考え続けたといいます。
与えられた言葉をどう歌うかに加え、歌われる言葉そのものの流れを考える仕事が始まりました。
歌唱技術の向上と同一視はできませんが、表現に関わる範囲が広がった出来事です。
2026年10月の『Strange Muse』では、タイトル曲「Birthday Wish」の導入のナレーションを挙げ、聴き手に曲へ没入してほしいと語っています。
同作にはリリーとのユニット曲「Sing to the Moon」も収録されました。
語りから曲に入り込む場面と、二人の声で歌を届ける場面が、同じ作品にあります。
ヘウォンが挙げる聴きどころは、歌の技術に加えて、聴き手の気持ちをどのように導くかにも向いています。
ヘウォンの変遷は、力強い声を柔らかい声へ入れ替えた歴史というより、もともと持っていた表情の使い道を広げてきた歩みです。
曲に合う声色を探し、仲間と重ね、余裕を作り、言葉や語りの役割へも関わる。
個々の曲で息や声をどう選ぶかは、ヘウォン(NMIXX)の歌い方で詳しく取り上げています。

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ウィンターが表現を選ぶ範囲の広がりをたどります。



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