ヘウォンの歌声を考えるとき、力強く歌えることと、いつも力強く歌うことを分けると、特徴が見えやすくなります。
本人が好むのは、寝る前にも聴けるような心地よさのある声です。
その一方で、NMIXXの曲では異なる声と重なり、複雑な展開の中で自分の役割を担っています。
この幅をつないでいるのが、息をどのくらい混ぜるか、どこで息を継ぐか、曲にどんな声色を置くかという選択です。
高音の到達点だけでは捉えにくいヘウォンの歌い方を、本人の説明と具体的な作品から見ていきます。
息を混ぜる声は、心地よさを作るための選択
2025年、ヘウォンは息を多く混ぜる発声を、自分が使う歌い方の一つとして説明しました。
例に挙げたのは「High Horse」を含むアルバム収録曲の導入部や、オリヴィア・ロドリゴの「deja vu」のカバーです。
本人が大切にしている心地よさと、好きだと感じる声の出し方が、具体的な曲につながっています。
ここで注目したいのは、すべてを同じ息の量で歌うという話ではなく、いくつかある声の選択肢の一つだということです。
こうした穏やかな表現には、早い時期から接点がありました。
2021年に新人紹介企画で披露した「I Love You 3000」も、甘い声が温かな雰囲気を作るカバーです。
後に注目される力強い歌唱だけを基準にすると、この側面を見落としてしまいます。
ヘウォンの声は、力を示す使い方と、親しみを感じさせる使い方を、もともと併せ持つものとして考えたいところです。
息継ぎの場所も、感情の伝え方に含まれる
ヘウォンが歌で感情を表すうえで大切にしているのは、呼吸と表情です。
台詞を話すときのように、息を入れる場所や空気の割合によって、伝わる感情が変わるという説明でした。
ヘウォンにとって呼吸は、フレーズを最後まで歌うためだけの準備ではなく、歌の意味に関わるものなのです。
同じ言葉でも、どこまで続けて届け、どこに間を置くかで、受け取られ方は変わります。
ヘウォンは息の量と息継ぎを、どちらも感情を伝える要素として挙げています。
一息で歌い切ることだけが完成形ではなく、言葉の途中に置く間も含めて表現になる。
台詞にたとえた説明からは、フレーズを単なる音の連続として扱わない考え方が伝わってきます。
また、ヘウォンは、歌うだけのときと踊りながらのときでは呼吸が違うため、両方を同時に行って練習すると説明しています。
振付のあるNMIXXの舞台では、声だけを別に完成させても、本番と同じ条件にはなりません。
表情を作る呼吸と、動きながら歌を続ける呼吸。
同じ息の扱いでも、曲の感情と舞台の動きという二つの要求に向き合っていることが分かります。

画像出典:画像掲載元
出せる声と、曲に合う声は同じではない
その加減を考える具体例が、RAINBOWの「KISS」を歌ったときの経験です。
ヘウォンは後に、声色をつかめず、フレーズを力強く歌っていたと振り返りました。
歌える音がそろっていても、曲が求める軽やかさや明るさに合うとは限らない。
声を十分に出す能力が、そのままどんな曲にも同じ形で使えるわけではないことが、この話から分かります。
反対に、声を強く押し出すことが作品の魅力になる場面もあります。
デビュー前にリリーと披露した「Survivor」では、ヘウォンの力強い歌唱が聴きどころになっています。
同じ歌手の表現でも、曲と組み合わせる相手によって、前に出す要素が変わります。
柔らかな声を唯一の正解にせず、必要なところに強さを残すことも、使い分けの一部です。
2024年のソロ歌唱「Maru Is a Puppy」は、もう一つ異なる方向を示しています。
人間になった子犬を描くウェブトゥーンのテーマ曲で、はつらつとしたエネルギーや、弾むようなキャラクターが中心に置かれています。
親密で落ち着いた声と、明るく元気な声は、異なる表情を持っています。
歌の中の人物に合う明るさを選ぶ、という視点も必要になります。
六人の歌では、声の違いがつながることも大切になる
「Love Me Like This」を収めた『expérgo』では、ヘウォン、リリー、ソリュンの連携が、アルバムを支える聴きどころになっています。
ここでの魅力は、誰か一人の声だけで成立するものではありません。
自分の担当を印象的に歌うことと、次の声へつながることが、一つの曲の中にあります。
この曲で声の重なりに注目すると、ヘウォンの特徴も、単独の高音とは異なる角度から考えられます。
NMIXXが公開するアカペラのハイライトメドレーについては、制作方法も興味深いものです。
ヘウォンは、音質のために事前録音を行いながら、撮影現場でも実際に歌っていると説明しました。
公開映像の音を、その場で録った音だけだと決めつけることはできませんが、撮影時にも歌う行為を共有していることが分かります。
録音と現場の歌唱を併用する企画なのです。
感情を込めることと、言葉を大きく歌うこと
『Blue Valentine』の収録曲「Shape of Love」を好きな曲に挙げた際、ヘウォンは、録音で最も感情移入できた曲を好きになることが多いと説明しています。
言葉への理解が、歌う手応えにつながる例です。
強い感情だから声も常に強くする、と決まっているわけではありません。
言葉にどう向き合ったかと、どの声で届けるかを合わせて考えると、歌唱の選択がより具体的に見えてきます。
「Blue Valentine」では、ヘウォンの強い歌声を知っているからこそ、抑えた歌唱の魅力にも気づけます。
声の迫力を楽しむことも、控えめな表情に惹かれることも、同じ歌手の中にある別々の魅力の見つけ方です。
聴き手によって響く部分が違うからこそ、一つの声色を歌手全体の特徴にしてしまわず、曲ごとの選択に目を向けたいところです。
2026年の「Birthday Wish」でヘウォンが挙げた見どころは、導入のナレーションでした。
聴き手が曲に入り込めるようにしたいという狙いを語っています。
声の役割が、旋律を大きく歌い上げること以外にもあると分かる例です。
最初の言葉でどんな気分を作り、その先の歌へつなぐのか。
息や声色に加えて、話す声も含めた届け方へ視野を広げると、ヘウォンの表現を捉えやすくなります。

画像出典:画像掲載元
ヘウォンの歌い方を支えるのは、強い声と柔らかな声のどちらかを選び続けることではなく、今の曲にどんな表情が必要かを考える姿勢でしょう。
息の割合、息継ぎ、声色、仲間との組み合わせを、具体的な場面で見ていく。
その選択が活動の中でどう広がったかは、ヘウォン(NMIXX)の歌唱変遷でたどっています。

こちらの記事もおすすめ

曲に合う声を探してきた歩みをたどります。


本人の発言を手掛かりに、息と言葉の扱い、デュエット、OST、「Dirty Work」の声色を考えます。



コメント