HAKUEIさんの歌声は、「細くて高いヴィジュアル系ボーカル」と説明すると、分かったようで最も大切な部分を取りこぼします。
確かに、PENICILLINの代表曲「ロマンス」で聞ける鋭い高音は、一度で覚えられるほど個性的です。
しかし、30年以上その声が古びなかった理由は、同じハイトーンを守り続けたからではありません。
ロック、歌謡曲、バラード、コミカルな曲まで、曲が要求する人物へ自分の声を着替えさせてきたからです。
本人は、まったく違うジャンルの曲をカバーしても、3人で音を出せばPENICILLINになると話しています。
この記事では、その「何を歌っても自分たちになる」中心にHAKUEIさんの声がどう働いているのかを、本人の発言と公表された記録から整理します。
HAKUEIの個性は、声質より先に「曲を自分の世界へ連れてくる力」にある
声が個性的な歌手は、曲を選ぶと思われがちです。
ところがHAKUEIさんは、女性歌手の昭和歌謡や演歌まで取り上げたカバー作品を経て、正反対の感触を得ています。
原曲に近い声を作ろうとするのではなく、「もしこの曲がPENICILLINの曲だったら」と考える。
すると、構成も演奏も歌も自然にバンドの色へ変わったと振り返っています。
ここに発声を考える入口があります。
HAKUEIさんは、細い高音という一つの武器を全曲へ当てはめているのではありません。
曲の中にある芝居を見つけ、歌声が似合う舞台そのものを作り替えています。
「ロマンス」の高音は、細いのではなく輪郭が消えない
1998年の「ロマンス」は最高4位を記録し、90万枚に達した代表曲です。
この一曲が、HAKUEIさんの声を広く知られる形へ固定しました。
サビの高音には、太い声で押し切る歌手とは違う鋭さがあります。
ただし、それを単に「声が細い」と捉えると、声が前へ届く理由を説明できません。
重要なのは、音が高くなっても言葉の輪郭と劇的な勢いが薄れにくいことです。
高音を大きな塊として出すより、一音ごとに表情が切り替わるため、速いバンドサウンドの中でも主人公の声が埋もれません。

高音の強さは、低い声と静かな声が先にあるから際立つ
HAKUEIさんの歌を高音だけ抜き出して考えると、曲の山場がすべて同じに見えてしまいます。
実際には、低く語るような部分、滑らかに旋律を運ぶ部分、急に感情を露出させる部分が同じ曲の中にあります。
この落差があるため、サビの高音は高さ以上に大きく感じられます。
舞台で照明が一気に変わるように、声の明るさや言葉の距離が変わるからです。
「低音は地声、高音はミックスボイス」と外側から決めつけても、この演出は理解できません。
声区は音高や母音、音量によって動くため、映像だけで内部の使い方を断定することもできません。
HAKUEIさんらしさは声区の名前より、前後の場面をつなぐ選択にあります。
メロディーを派手にするより、言葉を曲へ染み込ませる
2015年の「Stranger」制作では、勢いだけで歌わず、言葉を伝えるように丁寧に歌うことを意識したと本人が説明しています。
翌年の作品でも、言葉が詰まった後に長い音が来る譜割りでは、リズムとニュアンスを両立させる難しさを語りました。
これは、HAKUEIさんの声が目立つ理由を別の角度から示します。
派手な高音の瞬間だけを狙うのではなく、短い言葉と伸ばす音の重さを変えることで、メロディーにドラマを作っています。
RUKIさんが言葉と声色を物語に合わせる方法と比べると、同じヴィジュアル系でも違いが見えます。
RUKIさんが登場人物ごとに声の質感を細かく変えるのに対し、HAKUEIさんは舞台の中心へ立つ声の輪郭を保ちながら、曲全体を自分の劇へ引き寄せます。
2016年の声帯手術後に選んだのは、さらに押す歌い方ではなかった
HAKUEIさんは2016年、良い医師との出会いをきっかけに声帯手術を受けたことを公表しました。
その後の録音では、喉の状態が良く、艶のある声で滑らかにメロディーを歌えたと話しています。
注目したいのは、回復後に「もっと強い高音を出す」方向へ進まなかった点です。
負荷をかけず、メロディーと言葉を気持ちよく運ぶことが作品の中心になりました。
手術の内容や発声への影響は、本人が公表した範囲を超えて推測できません。
それでも、声へ向き合う経験が、力で押すことと表現の強さを分ける契機になったことは本人の言葉から分かります。
高い声ですぐ枯れる時に見直すことでも説明している通り、かすれや痛みを「ロックらしさ」として続けるのは危険です。
HAKUEIさんの高音を参考にする場合も、手術歴を格好よい逸話へ変えず、声を守る判断まで含めて見る必要があります。

主役ではない時に「飛び道具」になれることが、声の幅を証明した
HAKUEIさんはPENICILLINとソロ活動だけでなく、The Brow Beatでは佐藤流司さんを中心に据えたプロデューサーとしても活動しています。
ツインボーカルを提案された際、自分は主役を奪うのではなく「飛び道具」になれると考えたそうです。
これは長くフロントマンを務めた歌手として意外な発想です。
常に一番大きく、一番高く、一番目立つ声を出すのではなく、もう一人の声へ起伏を加える役を選べる。
声の個性が強いからこそ、出番を絞った時にも一瞬で空気を変えられます。
HAKUEIさんの歌唱力は、主役を張る力だけでなく、曲の中で自分の役割を相対化できる力でもあります。
真似するならハイトーンより、同じ声で全曲を歌わない姿勢を見る
HAKUEIさんの雰囲気へ近づこうとして、鼻に集めた細い声や、喉を締めたような高音だけを作るのはおすすめできません。
本人の声質、長年の活動、医療的な経緯を外から再現することはできないからです。
参考にしやすいのは、代表曲を二つ並べた時の役割の違いです。
「ロマンス」では恋に振り回される主人公の切迫感、「パライゾ」では大きな物語を背負う滑らかな旋律、近年の「阿修羅 青年期」では極端な世界観を押し出す声が選ばれています。
同じ声のまま上手に歌うことより、「この曲では誰として言葉を置くのか」を先に考える。
その見方なら、危険な発声の模倣をせずにHAKUEIさんから学べます。
HAKUEIの細いハイトーンは、変わらない型ではなく戻ってこられる中心である
HAKUEIさんの歌い方は、細いハイトーン、低い語り、滑らかなバラード、荒々しい表現を別々に集めたものではありません。
どこまで曲調が離れても、最後にはPENICILLINの劇へ戻ってくる声の中心があります。
だから「ロマンス」の印象を残しながら、昭和歌謡も、重いロックも、2026年の新曲も同じ歌手の現在形として成立します。
一種類の高音を守ったのではなく、声の役を増やしても自分を見失わなかったことが、HAKUEIさんの本当の強さです。
年代ごとにその選択がどう増えたのかは、HAKUEIさんの歌唱変遷で詳しくたどります。
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