Minamiの歌声の変遷|シャウトからラップへ、激しい声の使い道を広げるまで

2016年1月7日、日本武道館でのMinami(撮影:小野雄司) Minami(Fear, and Loathing in Las Vegas)
2016年1月7日、日本武道館でのMinami(撮影:小野雄司)

Fear, and Loathing in Las VegasのMinamiを、激しいシャウトの人として覚えているなら、「LLLD」のラップは意外に感じられるでしょう。
ただ、その変化は突然別の歌手になったような出来事ではありません。
シャウトの表情を増やし、音程を付け、いつもの荒い響きから離れた声も試す。
Minamiの歩みには、強烈な声を持っているからこそ、その使い道を広げてきた過程があります。

2010〜2012年|シャウトだけで、一曲を動かせるように

2010年の『Dance & Scream』のころ、Sxunはバンドの特徴を、Soのポップな感覚、Minamiのシャウト、踊れる曲、複雑な展開の配分から説明していました。
Minamiの声は、最初からバンドの激しさを担う大切な要素だったのです。
Tomonoriも、録音でライブの声を再現する難しさを語っています。
歌う表情まで含めて届くMinamiの声には、音だけでは収めにくい迫力があると感じていました。

自主制作盤からの録り直しでは、グロウルの音の印象が改善したという指摘もありました。
Tomonoriは録音の音質については判断を避け、ライブでの迫力を強調しました。
初期から、声の評価には音源と舞台の両方が関わっていたのです。

翌2011年の「Shake Your Body」では、そのシャウトにも踊りやすく耳に残る感触を持たせようとしていました。
Minamiは音や楽器の構成にも関わっています。
激しい声を、曲ができた最後に足すだけではない。
踊れる音楽の中でどう声を働かせるかを考える姿は、初期から見られます。

2012年の「Crossover」は、そこからさらに踏み込んだ曲です。
それまではどこかに入っていたクリーンな歌を外し、全編をシャウトで進めました。
当初あったメロディーをいったん崩すと、曲の鋭さが増したとSoは説明しています。
同時に、Minamiが以前より多くのニュアンスを出せるようになったことも挙げました。
声の違いで、曲を持たせられるようになっていたのです。

2015〜2016年|荒さを抑え、音程を持つ声も試す

2015年、『Feeling of Unity』のインタビューに掲載されたFear, and Loathing in Las Vegas
2015年、『Feeling of Unity』のインタビューに掲載されたFear, and Loathing in Las Vegas。
画像出典:画像掲載元

2015年の「Meaning of Existence」では、Soとの掛け合いの中で、Minamiのシャウトに音程を付けています。
Sxunは、そのために声のざらつく部分が抑えられ、普段より素の声に近い響きになったと説明しました。
シャウトを磨くことは、荒さを増すことだけではなかったのです。

一方で、舞台上の激しさが薄れたわけではありません。
2016年1月の日本武道館では、Minamiが鍵盤を弾き、ステージへ飛び出し、スクリームや低くうなる声を響かせる姿がありました。
Soと動きを合わせ、客席も一緒に踊り出す。
声の選択を細かく広げながら、ライブでは身体ごと観客を巻き込む強さも保っていました。

2017〜2018年|「LLLD」で、叫ぶ声からラップへ

2017年の「LLLD」でラップを提案したのは、制作を導くマネージャーでした。
Minamiが向き合ったのは、声の質感をどう格好よく聴かせ、リズムの心地よさをどう出すかという課題です。
Sxunによれば、本人はエミネムの映像を繰り返し見て研究しました。
シャウトの途中に地声が一瞬混ざることと、ラップのフレーズを担うことは違う。
別の表現として、声と言葉の運びを学んでいたのです。

「LLLD」の映像では、Minamiが二つのヴァースでラップを担います。
激しく歪ませる声を前へ出し続ける姿とは異なり、本人の自然な声色が分かる場面が長く続く。
普段の印象を知っているほど、同じ人の声が別の役割を持つ面白さが出てきます。
曲の途中で激しい部分へ移るからこそ、ラップの時間との落差も生まれました。

翌2018年の「Greedy」でも、Minamiのラップが採用されます。
制作中には、シャウト以外のアプローチを考えたいという話が繰り返し出ていました。
Sxunは、シングルの最初の曲として、聴きやすさへの配慮もあったのではないかと振り返っています。
一度の驚きを見せて終わるのでなく、曲の入口を作る選択肢としてラップが残っていったのです。

2022〜2024年|ラップが増えても、シャウトを磨き続ける

ライブが減った間も、制作は続いていました。
2022年には、月・水・金にマネージャーとオンラインで曲を作り、それ以外の日に曲の案を用意する生活を明かしています。
舞台上の奔放な姿からは想像しにくい、決まった日程で積み重ねる作業です。
新しい作品へ向けた試行を、ライブのない時間にも止めずにいました。

『Cocoon for the Golden Future』の「Gas Will Blow You Away as Only Brakes is Boring」では、再びシャウト自体の表現に取り組みました。
本人は、同じシャウトでも違いを作ろうと試した結果、低めで出し方の異なる声を使えるようになったと話しています。
ラップが加わった後も、もともとの武器の中に新しい表情を探していました。

新しい表現が増えた後も、Minamiの鋭いシャウトはライブの中心にあります。
2024年の「SATANIC CARNIVAL」では、「Return to Zero」でSoの高い歌と対照を作り、「Luck Will Be There」では最後まで強烈な声を響かせていました。
曲作りで声の役割を増やすことと、観客を一気に引き込む声を保つことは、両立しています。

2025〜2026年|一人の激しさから、声を重ねる役割へ

2026年のインタビューに掲載されたMinami
2026年のインタビューに掲載されたMinami。
画像出典:画像掲載元

「Song of Steelers」は、ラグビーチームのコベルコ神戸スティーラーズのために作られた公式チームソングです。

2025年の「Song of Steelers」では、Minamiの声は大人数で歌っているような響きの一部にもなっています。
TaikiとTetsuyaが声色を変えて歌った録音に、自分の声も重ねていると本人が説明しました。
観客にも歌ってほしいという曲です。

神戸製鋼ラグビー部の部歌を英語のラップへ取り込む工夫も含め、バンドの外からの依頼が声の使い道を広げています。

2026年の『StandBy』では、冒頭の「Overwrite」をMinamiのラップで始め、最後の「Who I Am」もラップで閉じています。
制作側は、アルバムの入口と出口をつなぐ意図だったと説明しました。
一曲の中の意外な見せ場だった声が、作品全体の形を作る役目も持つようになったのです。

Minamiの歌声の変遷は、激しさを少しずつ捨てて穏やかになる話ではありません。
シャウトの中の違いを増やし、音程やラップに挑み、重ねる声やアルバムをつなぐ声にもなっていく。
その都度、強い声をどこへ置くかが変わってきました。
曲の中での具体的な使い分けは、Minami(Fear, and Loathing in Las Vegas)の歌い方で掘り下げています。

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