宮舘涼太の歌唱変遷|一声を待たせる「間」から、一曲の世界を担う歌へ

2025年7月、ディズニー・オン・アイスの取材に登場した宮舘涼太 シンガー
2025年7月、ディズニー・オン・アイスの取材に登場した宮舘涼太

宮舘涼太が歌い始めるまで、会場が待っている。
そんな場面を作る力は、Snow Manのユニット曲からソロ曲へ受け継がれてきました。
一方で、静かな曲では仲間の声と重なり、ディズニーの楽曲では言葉の遊びまで一人で引き受けています。

その歩みで広がったのは、一曲の中で宮舘が担う表現の範囲です。
短い歌唱部分に個性を残すところから、曲の展開や観客との時間を組み立てるところへ。
2021年以降の曲とステージをたどると、華やかな「舘様」の中にある歌手としての選択が見えてきます。

2021年ツアーのユニット曲を収めた抜粋映像。

2021年、声を出す前から見せ場を作っていた

2021年のツアー『Mania』で、深澤辰哉、向井康二と歌った「P.M.G.」。
三人の個性を持ち込んだ楽しい曲の途中に、音楽が止まり、宮舘の声を待つ場面がありました。
一人に照明が当たる時間を急いで埋めず、客席の期待を引きつけてから次へ進める。
後のソロにもつながる、間を使った見せ方です。

同じ年の「Secret Touch」では、違う形で声の個性が表に出ています。
レコーディング風景を収めた映像で印象を残したのは、担当するフレーズの入りにある、色気と哀愁を帯びた声でした。
しっとりした歌の中では、長く注目を集める仕掛けを置かなくても、最初の音の表情で自分の存在を伝えられるのです。

にぎやかなユニット曲での間と、バラードでの短い歌い出し。
この二つを並べると、初期から場面に応じた見せ方があったことが分かります。
後年の静かな曲を、華やかな歌手が初めて繊細さを身につけた出来事として捉える必要はありません。

2022〜2024年、三人で作る声の景色を広げる

2022年の『Snow Labo. S2』では、阿部亮平、佐久間大介と「Color me live…」を歌っています。
深海を思わせる奥行きのあるサウンドに、三人の切なさを含む歌声が重なる曲です。
前年の「P.M.G.」のようにそれぞれのキャラクターを押し出す楽しさから、ひとつの大人びた雰囲気を共有する表現へ、ユニットでの役割が広がりました。

2024年の『RAYS』に収めた「ナイトスケープ」は、深澤、阿部との組み合わせです。
宮舘が制作の狙いとして挙げたのは、くつろいで聴ける心地よさ。
映像でも自然体の三人を見せたいと話しており、強いキャラクターを前へ出すときとは異なる入口を選んでいました。

「ナイトスケープ」では、阿部の希望で宮舘が歌い出しを担い、サビの主旋律も受け持ちました。
深澤の柔らかい声と阿部の低い声が、その周囲に重なります。
三人の声を組み合わせた、曲の中心に宮舘がいるのです。

「P.M.G.」では一度流れを止めて注目を集めた人が、「ナイトスケープ」では落ち着いた流れの中心にいる。
人数の少ないユニットは、宮舘の歌を大きく見せる機会であると同時に、他の声との関係を試す場にもなっていました。

2024〜2025年、舞台のソロから自分を映す一曲へ

2024年『祭 GALA』の公開ゲネプロ、上段左に宮舘涼太(撮影:和佐田美奈子)
2024年『祭 GALA』の公開ゲネプロ、上段左に宮舘涼太(撮影:和佐田美奈子)。
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2024年4月には、岩本照、深澤と主演・演出を担う『祭 GALA』が開幕します。
三人で歌い踊る場面と、それぞれのソロを組み込んだ新作でした。
宮舘は衣装にも関わり、歌、動き、見た目を含めた舞台全体を作る側に立っています。

この舞台で歌ったソロ曲が「Moon」です。
2025年の「I・だって止まらない」に先立って、劇場で自分の曲を担う経験があったことは押さえておきたいところです。
グループのアルバムにソロ曲が入ることと、一人で歌う場面を初めて持つことは、同じ出来事ではありません。

2025年1月の『THE BEST 2020 – 2025』では、メンバー各自がプロデュースしたソロ曲がアルバムに並びました。
宮舘の「I・だって止まらない」は歌謡曲の色を打ち出し、KABA.ちゃんによる振付とともに、自分らしい世界を一曲へまとめています。
三人の曲で部分的に見せていた個性を、曲全体に行き渡らせる機会になりました。

宮舘がこの曲で目指したのは、長く愛され、耳に残るサウンドでした。
バックバンドやダンサーにもこだわり、振付は聴き手にも覚えて踊ってほしいと伝えています。
自分らしさを濃くすることが、観客を遠ざける方向へは向かっていない。
一人の世界を作りながら、そこへ入って楽しめる場所も用意したソロ曲なのです。

3月の『ラヴィット!』での披露では、歌い終わってからも見せ場が続きました。
マイクスタンドを使った歌唱の後、カメラを見据え、大げさに息を切らす姿まで演出にしています。
音が終わった後の時間も手放さない。
ユニットで培った間の使い方が、ソロの曲を締めくくる楽しさへつながっていました。

4月19日の国立競技場公演では、同じ曲の歌い出しをいつも以上にため、後のMCでメンバーにリハーサルとの違いを指摘されています。
共に登場した岩本とラウールもいる中で、その場のやり取りまで一つのショーになる。
録音された曲を、客席のいる場所で改めて自分の時間にしていく姿がありました。

2025〜2026年、名曲の言葉を一人で引き受ける

2025年7月19日には、ディズニー・オン・アイスのスペシャルオープニングアクトで「フレンド・ライク・ミー」を披露しました。
自分のイメージに合わせて作るソロ曲から、多くの人に親しまれている作品の歌へ。
この日はスケートにも挑戦し、普段とは異なる舞台で歌とパフォーマンスを届けています。

一方、同年の『音故知新』では、佐久間とのユニット曲「地球(あい)してるぜ」も登場します。
前山田健一が作詞作曲を手掛け、言葉遊びとキャラクターの楽しさを組み合わせた曲でした。
ソロの機会が増えても、仲間と異なる世界を作る活動は続いています。

2026年7月、ディズニー・オン・アイスで歌う宮舘涼太(©Disney)
2026年7月、ディズニー・オン・アイスで歌う宮舘涼太(©Disney)。
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翌2026年7月のディズニー・オン・アイスでは「アンダー・ザ・シー」へ挑みました。
それまで山崎育三郎と歌った経験がある曲を、今度は一人で担います。
本人はその難しさと、広く知られる曲を歌うプレッシャーを認め、練習を重ねたと明かしています。

ソロ曲で自由に間を広げる場面から、親しまれた名曲の展開を一人で受け持つ場面へ。
前者で育った余裕だけで、後者の課題まで解けるわけではありません。
曲に合わせて新たに準備する姿が、歌手としての挑戦を具体的にしています。

変わったのは、声で担える場面の広さ

2025年、宮舘はグループ内での自分の役割を決めすぎたくないとも話しています。
幅広く活動したいから、一定の枠に当てはめない。
ユニットの組み合わせも、ソロで立つ舞台も変わってきた歩みは、その考えと重なります。
歌謡曲で示した個性を完成形として守るより、次の曲に必要な表現へ手を伸ばしているのです。

宮舘は2026年、以前の完璧主義から、自分の力を抜く加減を覚えたと話しています。
これは歌声そのものが軽くなったという発言ではなく、表現する場への向き合い方の話です。
きちんと決めることに加え、決まりきらなかった場面にも何を残せるかを考える姿勢が、今の余裕につながっています。

2021年の一声を待たせる間、2024年のユニットを導く主旋律、2025年の歌謡曲、2026年のディズニー楽曲。
宮舘の変遷は、声質が一方向に変わった歴史というより、声を置く場面を増やしてきた歩みとして捉えると鮮明です。
静かな曲を引っ張ることも、一曲の世界を演じ切ることも、同じ歌手の中で共存するようになりました。

その中でも、声を出す前から聴き手を引きつける間は、早くから育っていた持ち味です。
裏声や歌い出しの具体的な選択は、宮舘涼太の歌い方で掘り下げています。
一曲を任される範囲が広がるほど、その間の先でどんな声を選ぶのかにも、耳を向けたくなります。

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