『ノ・レ・な・い Teen-age』のサビは、高音を張るところが続くので、毎回必死に歌っていた。
酒井法子は、初期の代表曲をそう振り返っています。
親しみやすいアイドルポップスにも、高い声を続けて歌う難しさがありました。
そして『Funny JANE』では、詰まった言葉を音符に乗せることから悩んでいます。
高い声を出す難しさと、言葉をリズムに乗せる難しさ。
本人の話から、曲ごとに求められる歌い方をたどります。
『ノ・レ・な・い Teen-age』、高音を張るところが続くサビ
1987年8月の『ノ・レ・な・い Teen-age』は、新人賞の時期によく歌った曲でした。
酒井法子自身、詞もメロディも気に入っていたといいます。
ただ、歌いやすい曲だったわけではありません。
サビでは高音を張る部分が続き、歌うたびに必死だったと語っています。
ここで知っておきたいのは、高い音が一つ出ることと、高音が続くサビを歌い通すことの違いです。
本人が挙げた難しさは、声を張るところが何度も続くことにありました。
好きな詞とメロディを歌いながら、サビでは高い声を続けて出すことに向き合っていました。
次の『夢冒険』も難しかったと、本人は振り返っています。
同じ1987年11月に発売されたこの曲は、長く歌い続けてきた大切な作品です。
若い頃の思い出が詰まった曲であると同時に、歌手にとっては、歌いこなす課題のあった曲でもありました。
初期のヒット曲を歌う酒井法子は、声を張るサビの難しさを感じながら、何度もステージで歌っていました。
本人の記憶には、曲への愛着と、高い声を届けるための苦労がともに残っています。

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松田聖子を聴いて覚えた歌と、録音で知った課題
酒井法子は、自分の歌い方の土台に松田聖子の影響が強くあると話しています。
幼い頃から聴いてきた歌は、声をどうメロディに乗せるかを覚える手本でもありました。
ただ、聴き慣れた歌でも、実際に歌うと非常に難しいと感じているそうです。
親しみやすく聴こえることと、同じように歌えることの間には距離があります。
その距離を、録音という形で意識した経験もありました。
最初のレコーディングだった『お願いダーリン』では、複数の歌唱から良い部分を使って仕上げたことを知り、もっと歌えるようになりたいと思ったといいます。
その後は先生の指導を受けながら、移動中や出番前、リハーサルなどでも繰り返し練習していました。
完成した音源で聴ける歌には、歌い手の声に加えて、録音と編集の仕事も関わっています。
本人がそこから受け取ったのは、完成品に安心する気持ちより、自分の歌を高めたいという課題でした。
初期の明るい歌声の背景には、聴いて覚えることと、実際に声を出して確かめることの両方があったのです。
『碧いうさぎ』は、歌い慣れたAメロにも難しさがある
高音の見せ場だけが、歌い手にとって難しい場所とは限りません。
2019年に『THE カラオケ★バトル』へ出演した際、酒井は『碧いうさぎ』のAメロが難しいと話していました。
長く歌って慣れてくると、歌い方が崩れてしまうこともあるというのです。
このときは採点のある番組だったため、慣れた歌をどう整えて得点につなげるかを意識していました。
大切なのは、本人がよく知る曲にも、改めて確かめる箇所があったことです。
歌い続けて自然に身についた運び方と、その場で求められる正確さを、もう一度すり合わせる必要がありました。
Aメロは、聴き手が歌の世界へ入っていく場所です。
印象的なサビを待つだけでなく、最初の言葉から、音の長さや言葉のつながりに耳を向けると、曲の入口にも聴きどころが見つかります。
本人の話は、声を強く張る部分以外にも、歌を支える細かな仕事があることを教えてくれます。
酒井はこの取材で、自宅では大きな声を出せないため、カラオケルームを発声練習の場所にしているとも話していました。
ステージで歌う機会を持ちながら、別に声を確かめる時間も作っていたのです。
慣れた曲をそのまま繰り返すことと、歌い方を点検することは、同じではありません。
『Funny JANE』、二つの手本からつかんだ歌い方
2023年の『Funny JANE』では、違う種類の難しさがありました。
冒頭からラップのように韻を踏み、言葉が畳みかけられる曲です。
酒井法子は、譜面を見ても詞が音符にはまらず、最初はどう歌えばよいか分からなかったと話しています。
この曲の出発点には、本人が歌いやすいと感じる曲から、あえて表現を広げたいという希望がありました。
しっとりした曲が好きで、ディナーショーもそうした選曲に寄りがちだったため、客席がリズムに乗れる、大人の格好よさを持つ歌を求めたのです。
その希望を受けて、作曲の伊澤一葉は複数の案を用意しました。
酒井は途中のダンス向きの案にもひかれていましたが、伊澤がさらに考えて最後に出した曲を選んだといいます。
『Funny JANE』の譜割りの難しさは、得意な歌だけにとどまらず、ショーの表情を増やそうとした挑戦の中で生まれたものでした。
しかも、仮歌も自分で歌うことになっていました。
誰かが先に歌ったお手本を頼りにできない。
そこで、普段コーラスを担当する堀望美と、ボイストレーニングの先生に相談しました。
届いた二つのデモは、違う歌い方をしていました。
堀望美の歌は、リズムの乗りを感じさせるもの。
先生の歌は、譜面に忠実なものでした。
その両方を自分なりに受け止め、やり取りを重ねるうちに、歌い方が見えてきたといいます。
譜面からはつかめなかった言葉の収まりを、実際に歌われたデモから学ぶ。
違うタイプの歌を聴き、やり取りしながら、自分の歌い方を見つけていく。
『Funny JANE』は、手本を受け取ってすぐ歌えるようになったのではなく、本人が二つの歌を咀嚼する過程を経て形になりました。
さらに本人は、曲に力があるので、あまり気張らず、作り込みすぎずに歌ってもよいのではないかと考えていました。
これは、制作を終え、これからステージでどう披露するかを尋ねられたときの言葉です。
歌い方を探すために重ねた準備の先で、曲の力を信じて歌おうとしていました。

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『ノ・レ・な・い Teen-age』では、高音を張るサビを歌い通す。
『Funny JANE』では、二つの手本を頼りに、詰まった言葉を歌にする方法を探す。
酒井法子の歌い方には、曲を好きになる気持ちと、その曲に必要な声の出し方や言葉の乗せ方を身につける作業が重なっています。
『碧いうさぎ』を後年に歌い直した変化は、酒井法子の歌唱変遷でたどっています。







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