SU-METALの歌声はどう変わった?「紅月」からMETAL FORTHまでの変遷

SU-METAL vocal evolution SU-METAL

SU-METALの歌声は、少女らしい高音がそのまま力強くなったのではありません。
初期には激しい曲を最後まで歌い切ること自体が挑戦でしたが、現在は曲ごとに声の表情を設計するボーカリストへ変わっています。

その間も、音をまっすぐ届ける芯は消えませんでした。
大きく変わったのは、その一本の声しか使えなかった時期から、ラップ、民謡調、静かな歌、海外ボーカリストとの掛け合いまで選べるようになったことです。

変遷をたどると、世界進出の物語とは別に、曲に追いつこうとしていた歌手が、曲の姿を変える側へ回るまでの物語が見えてきます。

2010年から2012年、メタルを知らないまま声だけ先に走り始めた

BABYMETALは、さくら学院の重音部として2010年に始まりました。
当時の中元すず香さんはすでに歌や舞台の経験がありましたが、メタルという音楽には詳しくありませんでした。

初期の「ド・キ・ド・キ☆モーニング」では、制服姿の三人と重いギターの組み合わせそのものが驚きでした。
SU-METALの役割も、完成されたメタルシンガーになることより、かわいらしい世界の中央に一本の歌声を通すことから始まっています。

この時期の声を、後年の歌唱法だけで評価するのは公平ではありません。
プロジェクト自体がまだ答えのない実験であり、本人も知らないジャンルへ歌いながら入っていったからです。

2013年の神バンドが、「喉だけでは通用しない」転機を作った

最初の大きな変化は、生演奏の神バンドを背負ってライブを行うようになった時期に起きました。
本人は、それ以前の歌い方を「喉だけで歌っていた」感覚だったと振り返っています。

生のドラムと歪んだギターは、音源に合わせるステージよりも予測できない圧力を持ちます。
さらに成長期の声の変化も重なり、従来の方法では通用しない場面が生まれました。
そこで声を身体全体で支え、演奏の中へ通す歌い方を探すことになります。

同じ頃の「紅月」は、現在のSU-METALが初期を振り返る時に欠かせない曲です。
当時は曲の激しさについていき、最後まで歌い切るだけでも難しく、たとえ声が割れても負けないという決意で舞台へ立っていました。
一般的な高音で声が裏返る原因と練習法とは別に、ここには十代の歌手が未知の音楽へ食らいつく物語があります。
初期の迫力は余裕の証明ではなく、余裕のなさを決意へ変えた迫力でした。

2014年、ギミチョコ!!と海外フェスで「届く声」が必要になった

2014年の「ギミチョコ!!」は、BABYMETALを世界へ広げた代表曲です。
本人は録音時、仮のように見えた言葉が振付と結びつき、いつの間にか曲として完成していたことに驚いたと振り返っています。

同年のSonisphere出演では、BABYMETALを初めて見る大規模なメタル観客の前へ立ちました。
日本語の歌詞も、かわいさと重さの組み合わせも、観客にとって当然のものではありません。
細かなニュアンスを説明する前に、まず歌の存在を会場へ届かせる必要がありました。

この経験を重ねた時期から、ファンの記録にも、声が前へ飛ぶようになった、以前より強く聞こえるという見方が増えます。
ただし、身体の内部で何が起きたかを外から断定することはできません。
確かなのは、本人が生バンドと成長期を転機として認識し、ステージの規模も急速に大きくなったことです。

2016年、KARATEと東京ドームで直線的な声が完成形に見えた

「KARATE」の頃になると、BABYMETALは海外の珍しい企画ではなく、世界ツアーを行うグループとして見られるようになります。
SU-METALのまっすぐな歌い方も、激しい演奏に耐えるための工夫から、グループを識別する音へ変わりました。

同年には、長く目標にしていた東京ドーム公演へ到達しています。
二日間で異なる全25曲を披露する構成は、高音の一発勝負では成立しません。
速い曲、長い曲、静かな曲を通して同じ歌手として立ち続ける持久力が必要でした。
高音が安定しない時の整え方で扱う一音ごとの問題よりも、この公演では二日間を通した再現性が問われています。

ここで完成したように見えた直線的な高音も、本人にとっては終点ではありません。
BABYMETALの歌い方・発声の現在については、SU-METALの発声分析で、ビブラートを抑える理由から近年の表現まで整理しています。

2018年から2019年、三人の形が崩れて声の役割も変わった

YUIMETALの離脱は、編成上の出来事だけではありませんでした。
SU-METALとMOAMETALがグループの核となり、これまで三人で作っていた舞台を別の形で成立させる必要が生まれます。

この時期の「METAL GALAXY」は、ジャンルを宇宙旅行のように移動するアルバムでした。
一曲ごとに別の歌い方を試し、「BxMxC」ではラップに近い短い言葉へ挑戦しています。

録音では苦戦したものの、ツアーで歌ううちに自由になり、演奏ごとに変化していったと本人は語っています。
初期は決められた激しさへ追いつくことが課題でしたが、ここではライブの経験によって曲の歌い方そのものを育てています。
曲に耐える歌手から、曲を更新する歌手への変化です。

2021年の武道館と封印が、歌うことを一度日常から切り離した

10周年の「10 BABYMETAL BUDOKAN」を終えた後、グループはライブ活動を封印しました。
十代から走り続けたSU-METALにとって、BABYMETALとして歌うことが公の場から消える初めての長い区切りです。

休止を単純な技術向上期間として扱うことはできません。
本人たちは、蓄積した経験を受け取り直し、次の物語をどう始めるかを考える時間として語っています。
歌声の変化も、毎日歌い続けた結果だけでなく、一度距離を置いたことで見えた役割から始まりました。

2023年、Monochromeで「大音量がなくても残る声」が表へ出た

復活作「THE OTHER ONE」は、それまで知られていなかった別のBABYMETALを示すコンセプト作品でした。
楽曲の作り方も、写真や神話から世界を組み立てる方法へ変わり、SU-METALには場面ごとの細かな表情が求められます。

「Monochrome」のピアノ版は、その変化を確認しやすい公式歌唱です。
大きなバンド音と振付を外した場所で、静かな声から広がる構成を一曲の中に置いています。

この歌唱が意味するのは、昔より声が弱くなったということではありません。
直線的な芯を残したまま、音量を小さくしても言葉を保てる幅が表に出たのです。
ファンや第三者の記録でも、初期の鋭い印象に加え、近年は柔らかさや深さを感じるという見方が増えました。

復活後に静かな表現も広げたSU-METAL
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2023年の新体制で、歌声は三人の会話へ戻った

MOMOMETALが加わり、BABYMETALは再び正式な三人体制になりました。
SU-METALは、それ以前をメタルの人々に認めてもらうための時期だったと振り返り、新体制では自分たちがただBABYMETALであることを楽しむ段階へ進んでいます。

「メタり!!」では、近年身についた民謡調の節回しを自分の武器として使い、吐き捨てるような歌い方も選びました。
初期のかわいさと重さを再現するのではなく、祭り、和の表現、Tom Morelloのギターを混ぜた新しい形です。

ここで声の役割は、中央から二人を引っ張るだけではなくなります。
三人の掛け合いと、それぞれの個性が見える余白を作ることも、リードボーカルの仕事になりました。

2025年のMETAL FORTHで、声はコラボ相手の世界へ入っていった

「METAL FORTH」では、さまざまな海外アーティストとの共同制作がアルバムの中心になりました。
SU-METALは、新曲を新しい挑戦への招待と捉え、これまでと異なる声や表現を試したと語っています。

「from me to u」ではPoppyの声と自分の声の相性を意識し、「Sunset Kiss」ではPolyphiaのギターが加わったことで、リズムの捉え方と旋律まで変わりました。
「My Queen」では、強い女王像の内側にある不安まで表現しようとしています。

海外アーティストとの共同制作へ進んだBABYMETAL

初期は、未知のメタルへ自分の声を通すことが課題でした。
現在は、相手の音楽へ入り込みながら、BABYMETALの声も失わないことが課題になっています。
難しさの種類が、曲を完走することから、異なる世界を一曲で共存させることへ変わりました。

変わらず残ったのは、声より先に前へ出る決意だった

SU-METALの歌声は、初期より表現の幅が大きく増えました。
静かな音、ラップ、民謡調、英語詞、コラボ相手との混ざり方まで、曲ごとに別の入口を持っています。

それでも「紅月」で声が割れても負けないと考えた姿勢は、現在にもつながっています。
今では気迫だけで押し切るのではなく、音量を引き、相手へ溶け、必要な瞬間だけ芯を前へ出せます。
決意が技術へ置き換わったのではなく、技術が決意の見せ方を増やしました。

歌声の変化を「少女の声が大人になった」で終えると、この長い試行錯誤は見えません。
神バンドに通用しなかった時期、海外でまず存在を届かせた時期、三人の形を失った時期、歌う場を一度閉じた時期。
それぞれの危機で、同じ声を守るのではなく、歌う役割を作り直してきました。

まとめ

SU-METALの歌声は、「紅月」を最後まで歌い切るだけでも難しかった初期から、曲ごとに声の表情を設計する現在へ変わりました。
2013年の神バンドと成長期が喉だけの歌い方を変え、海外公演が届く声を育て、2019年以降の多ジャンル曲が声の役割を広げました。

2023年の復活では静かな表現が前へ出て、2025年の「METAL FORTH」ではコラボ相手の世界へ声を溶かしています。
変わらないのは、音をまっすぐ届ける芯と、未知の曲から逃げない姿勢です。

初期には「負けないための声」だったものが、現在は「相手と新しい世界を作る声」になりました。
SU-METALの変遷は、強い高音を保った歴史ではなく、その強さの使い道を増やし続けた歴史です。

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