SU-METALの歌い方・発声|なぜまっすぐな高音がメタルを貫くのか

SU-METAL singing style and vocal analysis SU-METAL

SU-METALの歌声が強く届く理由は、金属音に負けないほど大声だから、だけではありません。
本人がBABYMETALの曲について語った言葉に、もっと面白い答えがあります。

曲は速く、演奏は大きい。
そこでビブラートなどの技巧を入れすぎると、流れについていくこと自体が難しくなるというのです。
つまり、あのまっすぐな高音は飾れない声ではなく、音の密集した場所で一音を迷わせないための声でした。

ただし、現在まで同じ歌い方を守り続けてきたわけでもありません。
初期には曲を最後まで歌い切るだけで精いっぱいだった少女が、今では民謡調、ラップ、静かなバラード、海外アーティストとの掛け合いまで声を選び分けています。
変わらず残った直線の強さと、後から増えた表現の幅を一緒に見ると、SU-METALの発声がよく分かります。

ビブラートを減らした声は、メタルの中で輪郭を失わない

一般的なバラードでは、長い音を揺らすビブラートが感情や余韻を作ります。
ところが、速いドラムと歪んだギターが隙間なく鳴るBABYMETALでは、同じ装飾がいつも有利とは限りません。

SU-METAL自身、曲の速さと音圧の中では、技巧を加えるほど追いつきにくくなると説明しています。
長く揺らすより、音の始まりをはっきり置き、決められた長さで次へ進む。
この簡潔さが、演奏の壁から歌詞を切り出します。

ここでいう「まっすぐ」は、一本調子という意味ではありません。
音程を揺らさない場面でも、声を入れる勢い、言葉の長さ、語尾の切り方は変えられます。
装飾が少ないぶん、一音の入口と出口が表情になります。

大音量の演奏の中で歌うSU-METAL

高音の正体を「地声かミックスか」だけで決めると見失う

SU-METALの高音については、地声に近い強い声、頭側へ響きを移した声、ミックスボイスなど、分析する人によって説明が分かれます。
これは誰か一人が間違っているというより、曲と音の高さによって声の使い方が変わるものを、一語で呼ぼうとする難しさです。

「KARATE」のように芯のある音を連続させる場面と、「Monochrome」の静かな歌唱では、必要な音量も感情も違います。
前者だけを見てすべて地声だと決めれば、弱い音の柔らかさを説明できません。
後者だけを見て裏声中心だと決めれば、激しい曲で残る輪郭がこぼれます。

初心者には、声区の名前より二つの点を見る方が分かりやすいでしょう。
高い音でも言葉の頭がぼやけないことと、音を伸ばし終えた後すぐ次の言葉へ移れることです。
SU-METALの強さは、一番高い一音より、難しい音域を通りながら曲の速度を止めないところにあります。

ミックスボイスと地声の違いを知ると、強く聞こえる声をすべて地声と呼べない理由も整理できます。

「喉だけで歌っていた」時期が、現在の完成形ではなかった

現在の安定感だけを見ると、最初からこの歌い方ができたように思えます。
しかし本人は、成長期以前には「喉だけで歌う」感覚が強かったと振り返っています。

転機になったのは、生演奏の神バンドを背負うようになった時期でした。
それまでの歌い方では通用しない場面が生まれ、声を身体全体で支える方向へ変えていきます。
初期の直線的な声は完成された必殺技ではなく、激しい曲を生き抜くために作り直されたものです。

この経緯は、強い声を「喉に力を入れれば出る」と誤解しないためにも重要です。
初期の「紅月」で本人が覚えていたのは、声が割れても負けないという決意と、最後までたどり着く難しさでした。
気迫は魅力になりましたが、苦しさそのものが技術だったわけではありません。

SU-METALの年代による変化は、SU-METALの歌声の変遷で、初期の「紅月」から「METAL FORTH」まで詳しく追っています。

踊りながら歌うからこそ、音を長く飾りすぎない

BABYMETALでは、歌唱と激しい振付が別々の仕事ではありません。
SU-METALはリードボーカルであると同時に、舞台上を動き続けるパフォーマーです。

学術的な身体表現の研究やライブ評でも、激しく動きながら歌が途切れにくい点は繰り返し注目されています。
ここでも、息を大量に使う装飾を毎回足さず、音の長さを整理する歌い方には合理性があります。
声を大きく見せるより、次の動きと次の言葉へ間に合うことが優先されます。

一方で、これは「息を使わない」という意味ではありません。
息がなければ声は出ませんし、静かな曲では流れを長く保つ必要もあります。
重要なのは、息を見せ場として使うのか、速い旋律を運ぶ燃料として使うのかを曲ごとに変えることです。

BxMxCで、まっすぐな声がラップの武器へ変わった

「BxMxC」は、SU-METALの声を高音の美しさだけで語れない曲です。
本人は録音で苦戦した一方、ツアーで何度も歌ううちに自由になり、演奏するたびに進化した曲だと話しています。

ここでは長い高音より、短い言葉を打楽器のように置く力が前へ出ます。
まっすぐな声の輪郭は、ロングトーンだけでなく、言葉を細かく切る時にも生きます。
初期からの強みを捨てず、別ジャンルのリズムへ役割を変えた例です。

曲ごとに歌い方を変えることは、本人にとって苦しい例外ではありません。
ジャンルを切り替えて歌うこと自体を楽しみ、複数の方法を試してきました。
一つの声を守る歌手ではなく、曲から要求された課題を新しい声へ変える歌手なのです。

曲ごとに異なる声を選ぶ現在のSU-METAL

Monochromeで分かったのは、演奏が静かでも芯が残ること

音圧に負けないことだけが魅力なら、伴奏が小さくなった時には強みも薄れるはずです。
ところが「Monochrome」のピアノ版では、激しいギターがなくても歌の輪郭が消えません。

この歌唱例から読者が確認できるのは、大声と芯が同じものではないという点です。
声量を抑えても言葉の始まりが見え、旋律がぼやけない。
初期に必要だった直進力が、静かな場面では透明感へ姿を変えています。

本人が「歌は感情を伝えるもの」と考えるようになった背景には、海外の観客へ日本語で歌い続けた経験もあります。
意味をすべて理解できない相手にも、音の置き方や表情で届かせる必要がありました。
発音の明瞭さは技術であると同時に、言葉の壁を越える方法でもあります。

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METAL FORTHでは、声を貫かせるだけでなく相手へ溶かしている

近年のSU-METALは、強い声を常に中央へ立てるだけではありません。
「METAL FORTH」では複数の海外アーティストと制作し、相手の音楽へ入るための声を試しています。

本人は新曲を、新しい挑戦への招待状のように捉えています。
「from me to u」ではPoppyとの声の相性を意識し、「My Queen」では表面の大胆さと内側の不安を同居させました。
「メタり!!」で使った民謡調の節回しや吐き捨てる表現も、初期の直線一本では出せなかった色です。

面白いのは、表現が増えても中心が曖昧にならないことです。
装飾を覚えるほど飾り続けるのではなく、必要な曲では再び声をまっすぐ通す。
技術の多さより、使わない技術を選べることが現在の強さになっています。

真似するなら、高音の圧力ではなく「迷わせない声」を見る

SU-METALらしさを出そうとして、大声で高音を押し続けるのは危険です。
本人自身が喉だけの歌い方から変わった経緯を考えても、力みを表面だけ再現する理由はありません。

参考にしやすいのは、音を必要以上に揺らさず、言葉の始まりと終わりを決める考え方です。
「KARATE」では速さを止めない直線、「BxMxC」では言葉の打点、「Monochrome」では小さい音量でも消えない輪郭を見る。
三曲を比べると、同じ“まっすぐ”にも違う役割があると分かります。

高音で痛みや強いかすれが出るなら、その声は本人の迫力に近づいているのではなく、負担が増えている可能性があります。
高音で喉が痛くなる原因も確認し、音量より言葉が乱れない範囲を優先してください。

まとめ

SU-METALの高音がメタルを貫くのは、演奏より大きな声を出しているからだけではありません。
速く密度の高い曲で、ビブラートなどを足しすぎず、一音の入口と出口を明確にしてきました。

その直線的な歌い方は、初期には曲を最後まで歌い切るための必要でした。
神バンド、海外公演、活動体制の変化を経て、現在はラップ、民謡調、静かなバラード、コラボ曲から必要な声を選ぶための土台になっています。

一番の特徴は、まっすぐな高音そのものではありません。
飾る技術を増やした後でも、曲に不要なら削れることです。
SU-METALの声が強く聞こえるのは、迷わず前へ出る一音の背後に、何を足し、何を足さないかという長い選択があるからです。

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