タケヤキ翔(騎士X)の歌い方|鋭い高音と、声を柔らかく変える選択

2026年7月の取材に掲載されたタケヤキ翔 シンガー
2026年7月の取材に掲載されたタケヤキ翔

タケヤキ翔の歌で耳を引くのは、高く突き抜ける声です。
けれど、その高音だけを取り出しても、歌の魅力はつかみきれません。
鋭さを出す場面、裏声を選ぶ場面、静かな曲で柔らかさを見せる場面。
一曲の中や曲と曲の間で、声の役割が変わります。
発声と歌の表情がどう結びつくのか、具体的な作品から考えてみましょう。

高音の鋭さは、楽器の重さとの対比で生きる

ラトゥラトゥの初期作品では、マイキがドラムだけでなく、ギターやベース、打ち込みまで担っていました。
重い楽器とデジタルな音が並ぶ中で、ボーカルは旋律を運びます。
声だけを大きくすれば成立する音楽ではなく、演奏との組み合わせで歌の輪郭を作る音楽です。

「絶命ロック」の2024年のステージには、深い低音から高音へ展開する歌がありました。
高いところだけに注目するより、低い声が置かれたあと、どこで上へ向かうかを追うと、歌の起伏を捉えやすくなります。
強さの印象は、声の高さの対比からも生まれます。

絶命ロック(2019年・MV)

本人も、耳に残る鋭い声を意識し、発声練習やボイストレーニングを続けていると話しています。
ただ、高音を全部同じ声で押し通すわけではありません。
「未来のヒーローたちへ」では、ANCHORの提案からファルセットを選ぶ面白さを学びました。
高い音に届くことと、そこでどんな声を使うかを決めることは、別の課題なのです。

裏声を選ぶと、旋律の表情が変わる

ファルセットは、一般に裏声と呼ばれる発声です。
同じ高い旋律でも、声の質感が変われば、歌の表情も変わります。
強い声を保つのか、柔らかい響きを交ぜるのか。
最高音の高さだけを比べるより、この選択に注目するほうが、一曲の中の変化がわかります。

「未来のヒーローたちへ」は、アニメ『組長娘と世話係』のオープニング曲です。
本人は、歌がアニメの映像と重なったとき、自分の中で完成した感覚があったと話しています。
歌だけで個性を競うのではなく、作品の中に置かれて届くものもある。
声の強さや柔らかさを選ぶことが、一つの作品を形にする仕事につながっています。

2024年の取材に掲載されたタケヤキ翔
2024年の取材に掲載されたタケヤキ翔。
画像出典:画像掲載元

ラップでは、声の勢いを言葉のリズムへ変える

「パラダイスロスト」の2023年のライブでは、ラップの攻撃性と、迫力のあるボーカルが一緒に打ち出されていました。
旋律を伸ばす声に対し、言葉を刻んで勢いを作る場面です。
高音の伸びを聴かせるときと、言葉の切れで前へ進むとき。
この違いを追うと、声の強さにも複数の形が見えてきます。

パラダイスロスト(2023年・MV)

この曲の録音では、低音の凄みや色気に、ラップとがなりが加わります。
高い声で押し上げるだけでなく、低い声にも迫力を担わせる歌です。
対して、同じシングルの「Heavenly」は、甘さと鋭さを持つ高音が中心になります。
どちらもロックの強い曲ですが、低い声の重さを使うのか、高い声の明るさを使うのかで、聴こえてくる人物の表情は変わります。
二曲を対にして考えると、タケヤキ翔の力強さを、最高音の高さだけでは説明できないことがわかります。

静かに歌う場面にも、初期から魅力がある

2019年の初ワンマンで歌った「赤い信号機」では、静かで切ない声の表情を見せていました。
派手な曲が続いたあとに落ち着いた歌が入ると、聴き手の注意も変わります。
どれだけ高く歌えるかに向いていた耳が、言葉の気持ちへ近づく。
初期からあるこの側面も、タケヤキ翔の歌を知るうえで大切です。

赤い信号機(『万華鏡エタニティ』収録版)

静かな曲で聴きたいのは、単に音量が小さいかどうかではありません。
強い曲で示す鋭さに対して、言葉や旋律にどんな気持ちを残すのか。
高音に向かって盛り上がる場面と、落ち着いた声のまま余韻を伝える場面を分けて捉えると、歌の表情を追いやすくなります。
音量、音の高さ、声の質感は、重なり合いながらも別の要素なのです。

自分の声と、隣の声をどう組み合わせるか

生田鷹司と歌う「1/30000日の人生」は、力強い二つの声が並ぶ曲です。
歌う人が替わると、声の輪郭も替わります。
二人とも強く歌っていても、声色まで同じになるわけではない。
相手との違いに注目すると、タケヤキ翔の個性も捉えやすくなります。

「1/30000日の人生」には、2022年に発表したタケヤキ翔のソロ版もあります。
こちらは、一曲を通して彼の声を追える版です。
共演版では違う声と並んだときの個性、ソロ版では一人の声で作る起伏に注目できます。
同じ曲だからこそ、曲調の違いより、声を組み合わせること自体へ耳を向けやすい。

ばぁうとの「吉原ラメント」では、二人で愁いのある表情を作ります。
2025年の日本武道館公演でも、歌声と仕草を合わせて、曲の色気を届けていました。
ソロとは違い、歌を交わす相手がいる。
自分の声が出てくる瞬間と、相手へ渡る瞬間を追うと、二人だから生まれる場面に気づけます。

吉原ラメント(2025年8月6日公開・歌ってみた版)

2024年の取材に掲載されたタケヤキ翔
2024年の取材に掲載されたタケヤキ翔。
画像出典:画像掲載元

騎士Xの「RESIST」では、メンバーのシャウトを含むロックの歌を組み立てています。
シャウトは、叫ぶような声で勢いを伝える表現です。
整った旋律に荒さのある声が加わることで、強い意志を示す曲の性格が前へ出ます。
本人のプロデュース曲である点も、声の選択を考える手掛かりです。

一方、ソロ曲「Buff」は、疾走するビートと高音を前面に出した作品です。
短いフレーズの応酬と、声の強さが、曲を進める力になります。
グループの中で声を組み合わせる面白さに対して、ここでは一人の歌い手として押し出す個性を追えます。

稲葉浩志への憧れが深い本人も、自分の歌では似すぎないように意識していました。
影響を受けた声を知ることは入口ですが、曲の中で本人が選んだ表情まで追うと、その先にある個性が見えてきます。

鋭い高音、柔らかい裏声、リズムを刻むラップ、相手と交わす声。
「Paradise Lost」の低音の凄みと、「Heavenly」の高音の甘さは、同じ人の別の顔です。
そこへ「未来のヒーローたちへ」で学んだ裏声の選択を重ねると、彼が磨いているのは高さだけでなく、声の表情を決める力だとわかります。
こうした選択が育った過程は、タケヤキ翔(騎士X)の歌唱変遷でたどれます。

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