リョウクの歌い方|澄んだ高音を、繊細さにも大きな感情にも変える理由

「Drunk on love」について語ったリョウク シンガー
「Drunk on love」について語ったリョウク

リョウクの声は、細く澄んだ印象があるのに、歌の終盤では大きな感情を伝えます。
その違いを考えるときは、高音の高さだけでなく、言葉の明瞭さ、裏声の軽さ、そこへ至る歌の流れが手がかりになります。
同じ透明感が、どうして静かな歌にも劇的な歌にも合うのでしょうか。

声の位置も、ビブラートも、曲ごとに選ぶ

リョウク自身は、曲に応じて声の位置、ビブラート、呼吸の使い方を変えると話しています。
また、気持ちよく抜ける高音を自分の得意な部分として挙げています。
持ち味を生かしながら、その出し方まで毎回同じにはしないという考えです。

ここでいう声の位置は、本人が歌うときの感覚を表したものです。
特定の身体の場所に音を当てれば同じ声になる、という説明ではありません。
歌によって響きの感じ方や揺らし方、息の配分を変えている点が、曲を比べるときの手がかりになります。

本人は、高い音が出ること以上に、良い音色で歌い、必要な感情をそこへ持っていくことを重視しています。
高音は、歌の外に置かれた見せ場ではなく、その曲で積み重ねた気持ちが向かう先なのです。

透明感を支えるのは、言葉が見える歌い方

「The Little Prince」では、明瞭な発音が、澄んだ声を近く感じさせます。
繊細な声でも言葉の輪郭が残ることが、この曲の透明感につながっています。

この曲の録音では、マイクを変更して歌い直したという経緯もあります。
本人が納得していた録音にも、収音側から改善の余地があったのです。
録音の透明感を、発声の一つの技術だけで説明しないためにも、興味深い出来事です。

2016年1月の『人気歌謡』で同曲を歌った際には、冒頭の無伴奏の声から、オーケストラを伴う展開へ進みました。
最初に声の細やかさを受け取ってから、後半の広がりへ向かう順番です。
大きく歌う部分だけを切り取ると見えにくい、歌全体の設計があります。

静かな出だしを、後の高音までの待ち時間にしない。
言葉と声だけで聴き手を引きつける時間があるからこそ、音楽が広がったときの変化も伝わります。
高い声の迫力は、直前までどんな声で歌っていたかとの関係でも生まれるのです。

裏声は、軽いリズムを作るためにも使う

同じ初ソロ作品の「Hello(그대)」では、薄く滑らかな裏声がリズム感を作る歌唱として評されています。
重さを足して押し出すより、軽い声で曲の動きを生かす使い方です。
落ち着いた表題曲と並べると、澄んだ声が快活な曲にも合う理由が見えてきます。

裏声を、高音が苦しいときの代用品とだけ考えると、この軽やかさを捉えにくくなります。
この評価から分かるのは、声を薄くすることが、軽い動きの表現にもなるという点です。
ここでは、声の力を増やすこととは別の方向で、曲に勢いを与えています。

「One and Only」も、柔らかい声の表情が生きる曲です。
アコースティックギターに電子的な要素を加えたR&Bポップの中で、ボーカルの柔らかさが前に出ます。
劇的な「I'm not over you」とは対照的です。

薄い裏声と、柔らかなボーカルは、同じ技術の名前ではありません。
「Hello」では声の軽さとリズム、「One and Only」では柔らかな声と伴奏の組み合わせに注目すると、二つの選択を混同せずに楽しめます。
どちらも声を大きく張ることだけでは得られない、リョウクの親しみやすさを伝えています。

感情の大きさを、声と伴奏の両方で作る

「Hiding Words」は、ピアノやギターの温かな響きから、オーケストラとコーラスの大きな世界へ進みます。
声が向かう先に伴奏の広がりも用意されているため、歌唱だけを取り出したときとは違う大きさを感じる構成です。
後半の迫力を考えるときは、声の強さに加えて、その声を包む音にも耳を向けたいところです。

「It's okay」にも、小さく始めて音楽を広げる構成があります。
こちらはクラリネットとピアノから、動きのあるストリングスへ進む曲です。
ただし歌が伝えるのは失恋の切実さではなく、慌ただしい日々の中で何もしない時間があってもよい、という励ましでした。

2023年12月には、同曲のオーケストラ版も発表されました。
カン・ハンメが編曲し、SM Classics TOWN Orchestraと共演した版です。
原曲のミュージックビデオとは別に、オーケストラと歌うライブ映像が公開されています。

伴奏の規模が大きいことは、歌う感情が激しいことと同義ではありません。
傷ついた思いを表す「Hiding Words」と、休息を肯定する「It's okay」。
曲の相手や言葉を踏まえて聴くと、同じように大きく展開する歌でも、届けようとする温度の違いが分かります。

三人で歌うときは、自分の声の使い道を考える

三人の声の違いは、2019年の『SUPER SHOW 8』日本公演でも印象に残るものでした。
「Love Disease」では、イェソンのハスキーさ、キュヒョンの甘いビブラートに対し、リョウクは高く伸びる声で個性を示しています。
一人の歌の中で強弱を変えることに加え、別の声と並ぶことで、自分の持ち味が際立つ場面です。

K.R.Y.のイェソンは、リョウクの歌声を春らしいピンク色にたとえています。
三人の声の違いは、仲間も感じている魅力です。

2020年のアルバム『When We Were Us』に入った「I Can't」では、制作に参加したBrown Eyed Soulのヨンジュンから褒められ、録音が早く終わったと振り返っています。
本人も完成に満足した一曲です。

一人なら、曲の始まりから終わりまでを自分の声で組み立てる。
三人なら、ほかの声とどう並ぶか、どう一つになるかを考える。
澄んだ声そのものを変えなくても、歌の中で果たす役割は変わります。

明るい曲でも、歌い方を練り直す

2026年のポップロック「Runaway」を作る際には、歌詞と歌い方を研究し、録り直しを重ねています。
同じシングルには、温かな声を生かしたアコースティックR&Bの「Chamomile」も収録されました。
爽やかに外へ向かう曲と、一日の終わりを包む曲を、一つの作品で歌い分けています。

2026年「Runaway」期のリョウク
2026年「Runaway」期のリョウク。
画像出典:画像掲載元

リョウクの歌を聴く楽しさは、透明感を保ったまま、声の役割が変わるところにあります。
発音を明瞭にして物語を近づける、裏声を軽くしてリズムを動かす、感情と伴奏の流れに沿って歌を大きくする。
それぞれを具体的な曲で聴くと、澄んだ高音が、繊細さと力強さの両方につながっていることが分かります。

舞台や兵役を経て、歌う世界がどう広がったかは、リョウクの歌唱変遷でたどれます。
声の持ち味と、その持ち味を生かすために重ねてきた選択を、あわせて読むことができます。

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