高垣彩陽の歌い方・発声|地声とクラシックの切り替え、言葉と語尾の整え方

2018年「melodia 4」インタビュー掲載の高垣彩陽 シンガー
2018年「melodia 4」インタビュー掲載の高垣彩陽

高垣彩陽の歌い方には、音大で学んだ声楽と、ミュージカルやポップスで身につけてきた表現が関わっています。
本人の録音の話をたどると、声を出す方法に加えて、日本語をどれくらいはっきり発音するか、母音や語尾をどうつなぐかにも細かな選択があります。
「Ave Maria」「糸」「魔法の音」やデュエットの制作から、その選び方を見ていきます。

地声の強い歌と、クラシックの発声を切り替える

2018年「melodia 4」インタビュー掲載の高垣彩陽
2018年「melodia 4」インタビュー掲載の高垣彩陽。
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高垣は、クラシックの声楽を学び続ける一方で、ミュージカル系の地声の発声も学んできました。
本人にとって、地声を使う歌とクラシックの歌には、歌唱法の違いがあります。

その二つの歌い方の違いが、具体的に表れたのが「melodia 4」の「Ave Maria」です。
2018年のミュージカル「ひめゆり」では、主に地声の強い声で歌っていました。
公演直後に「Ave Maria」を録音しようとしたところ、クラシックの歌唱法への切り替えがうまくいかなかったため、声楽のレッスンを受け直して再録しています。

この話から読み取れるのは、同じ人の声でも、直前まで使っていた歌い方が次の録音に関わるということです。
高垣は、その違いを自分で感じ取り、求めるクラシックの歌唱へ整え直しました。
それぞれの歌で求める声を出せるよう、切り替えそのものにも取り組んでいます。

同じアルバムの「Panis Angelicus」では、一人で複数の声を録り重ねる方法を選びました。
独唱者と合唱団という編成でも歌われる聖歌を、自分の声で形にしたかったといいます。
後藤望友のアレンジと多重録音によって、一つの声が次の声と重なっていく構成になりました。

ここには、声を切り替えるだけでなく、録った声をどう組み合わせるかという工夫もあります。
さらに、昔から歌っていたラテン語の歌詞を改めて確認し、覚え違いにも気付いたそうです。
慣れた曲でも、発音する言葉と音楽の形を確かめ直して録音していました。

「糸」で大切にした、日本語の届け方

声をどう出すかとともに、高垣が大切にしているのが、言葉をどう歌うかです。
「melodia 4」では、クラシックと日本語をテーマにしていました。
収録曲の「糸」も、日本語の歌を届けるという意図の中で選ばれています。

その背景には、コンサートを観た演出家・翻訳家の小林香から、日本語の曲も歌ってみてはどうかと勧められた経験がありました。
同じ作品には、小林が日本語詞を手がけた「Journey to the past~心のままに~」も収めています。
親しんできた海外の歌を、自分の言葉として届ける試みでもありました。

録音にあたり原曲を聴き直した高垣は、中島みゆきの日本語の歌い方に改めて感動したと話しています。
自分もできる限り日本語をきれいに届けたいという気持ちで、録音に臨みました。
歌詞の意味だけでなく、言葉が声になったときの伝わり方にも目を向けているのです。

ただ、日本語をきれいに届けるための方法は、曲によって変わります。
後の「魔法の音」では、言葉をはっきり発しすぎることが課題になりました。
一音ずつを明瞭にすることと、メロディの中で言葉を自然につなぐこと。
この二つの関係を調整する必要があったのです。

デュエットで生かす低い声と、相手に合わせる呼吸

2024年に豊崎愛生と録り直した「See You Tomorrow AT mix」では、高垣の低い声にも光が当たっています。
選曲した豊崎は、高垣の低音に少しハスキーさが混ざるところや、低い音域でのフェイクを魅力として挙げました。
クラシックの伸びやかな声とは違う持ち味を、長く一緒に歌ってきた相手が見つけていたのです。

高垣がこの曲で難しいと感じたのは、自然に語りかける表現でした。
感情を大きく示しすぎると、聴き手へ押し付けるようになってしまう。
歌詞に描かれた情景を大切にしながら、自分らしさと豊崎の穏やかな届け方をどう両立するかを考えています。
低い声の響きだけでなく、どれくらいの近さで言葉を渡すかが、この録音の課題になりました。

二人は、その場で同時に録音したわけではありません。
「トゥインクルクス」と二曲のカバーは豊崎が先に歌い、息継ぎの位置などを書いた歌詞カードを高垣へ送りました。
歌詞の解釈を一つに決めるより、声を重ねるための細部を共有したのです。
それぞれの表情を残したまま歌を合わせるために、呼吸の置き方にも相手への配慮がありました。

「魔法の音」で、発音の力を緩めて語尾を作る

2026年「愛のファンファーレ/魔法の音」インタビュー掲載の高垣彩陽
2026年「愛のファンファーレ/魔法の音」インタビュー掲載の高垣彩陽。
画像出典:写真掲載元

城田優と歌うシングルの「愛のファンファーレ」では、かわいらしく歌おうとしすぎるとキャラクターの歌に寄ってしまう、と高垣は悩んでいました。
城田の声との釣り合いを考えながら、自分名義の歌としての明るさを探しています。

一方、「魔法の音」の録音で城田が目指したのは、母音も子音も立てすぎず、音楽が滑らかに流れる表現でした。
高垣は普段、セリフやナレーション、ラジオで滑舌を意識しています。
その習慣が歌にも出るため、特にバラードでは、発音の力を抜く部分が必要になると本人は説明しています。

冒頭の自分のパートでは、少し気だるい感じを求められました。
これは、自然に話すように音へ言葉を乗せるための、具体的な指示です。
高垣はその指示を試す中で、これまで知らなかった声が出たと感じています。
発音を強く作りすぎないことが、この曲で新しい声の表情につながりました。

本人には、歌うときには音をしっかり出さなければ、という意識がありました。
それに対して城田は、もっと声を出さなくてもいいという方向も示したそうです。
十分に響かせることを目指してきた歌い手が、曲に応じて声の出方を控える。
この引き算が、話すように歌う感覚を知るきっかけになっています。

一方、力を抜いて歌うことと、フレーズを最後まで丁寧に扱うことは、同時に求められています。
高垣は、この録音で各フレーズの語尾に苦戦したと話しています。
母音が続くと一本調子になりがちだという自身の癖もあり、サビでは、その部分にどう気持ちを乗せるかを何度も試しました。

城田がこだわっていたのは、最後の一音から、音がなくなる瞬間までの表現です。
高垣も要求を理解しながら、実際に声で応えることの難しさを感じていました。
自然に話すような歌であっても、発音や語尾の細かな作り込みがあります。

高垣彩陽の歌い方を考えるうえでは、地声とクラシックの歌唱法、言葉の明瞭さ、母音のつながり、語尾の表情が手がかりになります。
それぞれを曲の中でどう組み合わせるかが、本人の録音の話から見えてきます。
こうした歌い方を学び、見直してきた時期については、高垣彩陽の歌唱変遷で取り上げています。

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