斎藤宏介の高音はなぜ軽く聞こえる?UNISON SQUARE GARDENの歌い方・発声

斎藤宏介の歌い方と発声分析 シンガー

斎藤宏介さんの高音は、単に生まれつき声が高いから成立しているわけではありません。
本人がボーカルになった出発点には、少し変わった事情があります。

もともとはギタリストで、高校時代のカラオケで自分が友人より高い声を出せると気づきました。
その後、3ピースバンドの中で歌うと、低い声はギターやドラムに埋もれやすく、高い位置が最もバランスよく聞こえたと語っています。

つまり、あのハイトーンは見せ場として上へ伸ばした声ではありません。
音の密集した演奏の中に、ボーカル専用の通り道を作った結果です。
UNISON SQUARE GARDENの速い曲が軽快に聞こえる秘密も、声量よりこの「置き場所」にあります。

高音は才能の証明ではなく、3人の音を分けるために選ばれた

斎藤さんは、バンドを始めた時から歌手を目指していたわけではありません。
ギターを弾き、歌は担当していなかったものの、カラオケで偶然、自分の高音域に気づきました。

UNISON SQUARE GARDENでは、田淵智也さんのベースと鈴木貴雄さんのドラムが細かく動き、斎藤さん自身もギターを弾きながら歌います。
中低音で太さを競うと、三つの楽器と声が同じ場所へ集まり、言葉の輪郭が見えにくくなります。

そこで声を高い位置へ置けば、低い帯域はベースとドラムに任せながら、旋律と言葉だけを上へ抜けさせられます。
本人が「ちょうどいいところ」を探した末に高音へたどり着いたという話は、声を単独で考えていなかったことを示しています。

ギターを持つ斎藤宏介

この発想を知ると、斎藤さんの声が細いのに弱く聞こえない理由も分かります。
声を太くしてすべての楽器を押しのけるのではなく、他の音が少ない場所を選んでいるからです。

高音の出し方を「地声で耐えるか、裏声へ逃げるか」の二択で考えると、この設計は見えません。
ミックスボイスと地声の違いを整理する時も、声の名前だけでなく、曲の中で何を担当しているかを見る必要があります。

「天然のミックスボイス」だけでは速い歌が軽くならない

斎藤さんの高音については、同業の歌手や発声解説で「天然のミックスに近い」と表現されることがあります。
ただし、本人は高音が比較的楽に出て、声が枯れにくかったという出発点を話しているだけで、すべての高音を一種類の声区として断定してはいません。

そもそもミックスボイスは、地声と裏声の中間にある一つの固定音色ではありません。
高さ、音量、母音、曲調によって地声寄りにも裏声寄りにも変わります。
斎藤さんの歌も、鋭く前へ出る音と、力を抜いて上へ流す音が同じではありません。

むしろ注目したいのは、音の入り口がはっきりしていることです。
音程の中心へ素早く入り、短い音でも言葉を置いてすぐ次へ進むため、旋律が混み合っても渋滞しません。

『シュガーソングとビターステップ』は、言葉も音符も多い曲です。
一語ずつ重く歌えば、サビに着く前に息もリズムも苦しくなります。
斎藤さんは高音を長く見せつけるより、必要な位置へ短く当て、次の拍へ渡すことで曲全体を走らせています。

専門的な呼び名を決めることより、「高い音でも滞在しすぎない」と捉える方が、あの軽さを理解しやすいでしょう。

明るい母音より先に、子音がリズムを作っている

UNISON SQUARE GARDENの歌をカラオケで歌うと、音程は合っているのに重たく聞こえることがあります。
原因は高音の高さだけではありません。
日本語を一文字ずつ均等に発音すると、細かな旋律のたびにブレーキがかかるからです。

斎藤さんの歌唱では、言葉の頭が拍の目印になります。
子音で次の音へ進む方向を示し、母音は必要以上に膨らませません。
結果として声は明るく聞こえますが、明るい母音を作ることだけが目的ではないのです。

歌唱を分析した複数の解説でも、滑舌の明瞭さ、音程の入りの正確さ、リズムの細かさが共通して挙げられています。
一方で、鼻へ響かせる声、喉を上げた声など説明の用語は一致していません。

この食い違いは、誰か一人が間違っているからとは限りません。
外から聞こえる明るさを、響き、声区、母音の形という別々の角度から名付けているためです。
初心者は名称をまねるより、語頭が遅れていないか、母音を引きずって次の拍を潰していないかを聞く方が本質へ近づけます。

ギターを弾きながら歌うから、声もアンサンブルの一部になる

斎藤さんはボーカル専任ではなく、複雑なギターを弾きながら歌います。
この条件では、歌だけを自由に揺らし続けるより、バンドの拍とフレーズへ正確に組み込む必要があります。

本人は、曲は作曲者一人の頭の中だけで完成するものではなく、3人で演奏して初めてUNISON SQUARE GARDENの曲になるという趣旨を語っています。
歌も同じで、伴奏の上に後から乗せる主役ではなく、ギター、ベース、ドラムと噛み合って完成する一つのパートです。

ステージで歌いながらギターを弾く斎藤宏介

このため、速い歌でも独りよがりな加速にはなりにくく、細かな休符や語尾が演奏の隙間と結びつきます。
歌詞を感情的に引き延ばす場面より、短い言葉をバンド全体で跳ねさせる場面に個性が表れます。

藤原聡さんの高音も、鍵盤を弾きながら複雑な旋律を運ぶ点では近い存在です。
ただし、藤原さんが声の強弱や柔らかな揺れで一曲の景色を広げるのに対し、斎藤さんは音の立ち上がりと切り替えで3ピースの速度を保つ場面が目立ちます。

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真似するなら高さより、声が入る場所を聞く

斎藤さんらしさを目指して、最初から原曲キーで細く高い声を出そうとすると、喉を締めただけの声になりやすいです。
あの歌声は、高い音を出せる体質だけでなく、長年の演奏で身につけた脱力、正確な入り、リズムの判断が組み合わさっています。

参考にしやすいのは、声質の表面ではなく配置の考え方です。
ベースとドラムが密集する場所では言葉を短くし、演奏に空間ができる場所では母音を少し残すという違いを聞くと、曲が急いでいるだけではないことが分かります。

『オリオンをなぞる』と『シュガーソングとビターステップ』を比べる場合も、最高音だけを比べる必要はありません。
どこで声が前へ飛び出し、どこで演奏へ戻るのかを見ると、斎藤さんが声を楽器として扱う方法が見えてきます。

痛みや強いかすれが出る高さで同じ声色を再現する必要はありません。
高音域そのものを広げたい場合は、高音で喉が痛くなる時の見直し方を優先し、不調が続く時は耳鼻咽喉科などへ相談してください。

まとめ|斎藤宏介の高音は、バンドの空席を見つけた声

斎藤宏介さんの高音は、声の高さだけを競った結果ではありません。
ギターとドラムに負けず、3人の演奏を濁らせない場所を探した結果、高い位置が自分の担当になりました。

そこへ、音程へ素早く入る精度、子音でリズムを作る発音、母音を長く抱えない判断が加わります。
だから音符と言葉の多い曲でも、声が重りにならず、バンドを前へ進められます。

「天然の高音」という一言だけでは、最も面白い部分が抜け落ちます。
斎藤さんは持っていた声を披露したのではなく、3ピースの中で最もよく働く場所へ置き続け、その場所に合う歌い方を育てたのです。

斎藤宏介さんの歌声が2014年の手術を境にどう変わったのかは、UNISON SQUARE GARDENの作品とXIIXでの活動をたどりながら別記事で整理しています。

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