高木紗友希の歌には、自分で歌い回しを考えて曲へ加える自由があります。
その自由を支えるために、本人は声の出し方を学び直し、歌の最中には何へ気持ちを向けるかも考えてきました。
さゆべえとしての「マイラブ」にも、声を出す準備と、言葉に合う歌を選ぶ作業が表れています。
顎や舌の位置を変えて、声が出る感覚を探す

画像出典:写真掲載元
2015年のレッスンでは、顎を少し横へずらしたり、舌を前へ出したりした時に、声が出る感覚を経験したと書いています。
この時、本人が取り組んでいたのは、喉を無理に使わない声の出し方でした。
口の使い方を変えると、自分の声はどう変わるのか。
レッスンでの体験が、その関係を確かめる手がかりになっていました。
2017年のブログでは、教わった方法が身につくにつれ、声の出やすさと衝撃の少なさを感じていると記しています。
自分の声の出方を確かめることが、歌い方への納得につながっていました。
2015年には、それまでの自分に無理をしている自覚がなかった、とも書いています。
一方、2017年の記述では、以前は考えながらでなければできなかった方法が、少しずつ身についていると感じていました。
レッスンの場で出せた声と、曲を歌いながら使える声には距離がある。
本人は、外から聞けば小さな違いでも、自分にとっては大きな変化だと受け止めています。
顎や舌の話も、本人が指導を受けた場で、歌いやすさを確かめた具体例です。
形を変えたことだけで説明を終えるより、そこで得た感覚を、自分の歌の中へ持っていくまでの過程を見ると、発声を学び直した意味がわかります。
出し方を考え続けず、歌へ戻る
高木は2016年のブログで、先生から何も考えずに歌うよう言われても、それができなかった経験を振り返っています。
方法を学ぶことと、歌う瞬間にその方法ばかり考えることには、違いがあります。
本人は、ただ歌が好きだった頃の感覚も忘れたくないと考えていました。
2018年の取材でも、声の出し方へ意識が偏ると、伝えたいことを歌えていない気持ちになると説明しています。
声の状態に気を配ることと、歌そのものを楽しむことを、ライブ中にも両方考えていました。
何も考えないという目標は、準備を省くことではなく、身につけた方法を使って、言葉や相手へ意識を向けられる状態とも捉えられます。
聴いて覚えた表現を、自分の曲へ持ち込む
高木は、子供の頃にコブクロの曲を繰り返し聴き、ハモリを練習していたと話しています。
主旋律を追うだけでなく、もう一つの歌の線を自分で歌ってみる。
聴いたものを声にして試すことは、早くから歌の楽しさと結びついていました。
海外の歌手の表現にひかれたときも、まず真似して何度も練習し、できるようになると自分たちの曲へ生かすと説明しています。
目標の音を具体的に持って試し、それを持ち歌のどこで使えるか考える方法です。
ほかの歌手のように歌えることだけでなく、曲の中で選べる表現が増えることに、その練習の意味があります。
フェイクへ、言葉にしきれない気持ちを乗せる
「生まれたてのBaby Love」の最後のフェイクは、高木が録音中に考えて歌ったものが使われました。
完成したCDでほかのメンバーもその歌い回しを歌っていて、感動したと振り返っています。
思いつくのは録音中だけでなく、ライブ中や、自転車に乗っているときもあるそうです。
本人がフェイクに優先して乗せたいのは、その歌の言葉にならない気持ちです。
一方で、調子が悪いと声の出し方を考えてしまうとも答えています。
発声を整える練習は、歌う瞬間に方法ばかりへ意識を取られず、思いついた表現を歌へ戻すためにも必要だったのです。
経験のない歌詞にも、届ける相手を考える
歌う人物の経験を、自分がすべて体験しているとは限りません。
高木は2018年、恋愛の歌などでは、自分の周りにいる人の経験を重ねて歌うこともできるのではないかと話しています。
歌詞を自分の人生だけに引き寄せず、身近な人の気持ちを想像することも、表現の手がかりにしていました。
また、菅谷梨沙子の「Love together」の歌に衝撃を受けた経験を語っています。
本人が強く受け取ったのは、声の大きさ以上に、相手へ歌を届けるということでした。
自分が気持ちよく歌えたかだけで終わらず、言葉が聴き手へ届いているかを考える。
フェイクへ込めたい気持ちも、この歌全体への意識とつながっています。
息継ぎと表情を、歌の言葉に合わせる

画像出典:写真掲載元
「マイラブ」では、録音前に歌詞カードへ息継ぎの位置を細かく書き込んで練習しました。
久々の録音で、初めて仕事をする人もいたため、準備して臨みたかったといいます。
さらに今回は、約5時間かけて歌い方や表情を変え、録った声を聴きながら選ぶ時間がありました。
後半が春のような雰囲気になる曲なので、笑顔で明るく歌うことも試しています。
高音で困ったような顔になる自分の癖にも気をつけ、笑いながら歌うとどう変わるかを確かめました。
「マイラブ」では、主人公の気持ちに沿って、冬から春へイメージが移ると説明しています。
後半を明るく歌う試みは、単に声を軽くするためではなく、曲の中の変化を聞かせるためでした。
一曲をずっと同じ切なさで歌わず、どこで気持ちが動くかに合わせて、声の表情も選んでいたのです。
終盤のサビ前には、仮歌より高い旋律で歌ってほしいという注文もありました。
本人は久しぶりに出す高さに不安を感じたものの、練習を重ね、録音側にもリラックスできるよう支えてもらったと話しています。
高音が出るかどうかに加え、その声を曲の展開の中へ収めることも、この録音の課題だったのでしょう。
本人は、こうしたゆったりした曲を、むしろ得意とは感じていないとも話しています。
気を抜くと勢いが強くなったり、歌が雑になったりするため、「マイラブ」では言葉を届けることを意識したそうです。
声を伸ばす余地のある曲でも、響きの気持ちよさだけで進めてよいわけではない。
ブレスや表情を細かく試した背景には、勢いを曲に合う形へ整え、言葉を埋もれさせたくないという課題もありました。
息継ぎの場所は先に準備し、声の表情は実際に録って聴き比べる。
事前に決めることと、現場で選び直すことが、この録音では分かれていました。
高木紗友希の歌い方を支えるのは、出せる声を確かめたうえで、その声をどんな気持ちに使うかを選ぶ姿勢です。
その考え方が育った過程は、高木紗友希の歌唱変遷でたどっています。







コメント