安田章大の歌唱変遷|「俺節」で役を歌い、自分の声で場をつくるまで

2026年のインタビュー撮影での安田章大 シンガー
2026年のインタビュー撮影での安田章大

安田章大は、自分の声が軽いことを以前から感じながら、どう直せばよいか分からずにいたといいます。
その課題に具体的に向き合ったのが、2021年に発表した「キミトミタイセカイ」の録音でした。
高い音を明るく歌える声を、歌詞に合う太さへと調整していったのです。

舞台で人物の思いを歌う時も、ギター一本で自分の言葉を届ける時も、問われるのは、その歌で何を伝えたいかということでした。
グループの歌を担う声が、どんな試行錯誤を重ね、自分の作品を届ける活動へ広がってきたのかをたどります。

友よ 公式MV・YouTube版(楽曲2019年)

2017年|演歌の中に、人物の言葉を探す

2017年の主演舞台『俺節』で、安田章大は演歌歌手を目指す青年・海鹿耕治を演じました。
父が演歌を好んでいたこともあり、本人には馴染みのある音楽でした。
制作発表で語っていたのは、人が抱える思いを言葉に乗せ、そこへメロディーが寄り添う歌を届けたいということです。
演歌を歌う役を通して、人物の気持ちと言葉に向き合おうとしていました。

2017年の主演舞台『俺節』で海鹿耕治を演じる安田章大
2017年の主演舞台『俺節』で海鹿耕治を演じる安田章大。
画像出典:写真掲載元

開幕時に公開された場面では、コージがヤクザに打ちのめされながらも立ち上がり、歌い始めます。
福士誠治が演じる相棒のオキナワは、その声に応えるようにギターを弾く。
歌は人物が立ち上がる行動と結びつき、相手との関係も、その声と演奏で描かれていました。

安田は、演歌には叫ぶように歌う面があり、気持ちを前に出したいと説明しています。
歌詞そのものに物語があるため、それをどう伝えるかを大切にしていました。
役の人生を歌で届けることが、この舞台で取り組んだ課題でした。

2019〜2021年|明るい高音を、歌詞に合う太さへ

2019年、関ジャニ∞は5人体制になりました。
同年のシングル「友よ」で歌い出しを担った安田の声を、後の音楽評は、表現力の高さが伝わる例として取り上げています。
グループの歌を最初の声で印象づける役割がありました。

その一方で、本人には、自分の声について以前から直したい点がありました。
声質が軽いという実感です。
2021年2月に発表した「キミトミタイセカイ」は、その課題に向き合う機会になりました。

この曲の制作は2020年3月に動き始め、11月からレコーディングが進められています。
5人で新しい音域に挑むバラードで、2021年2月の『関ジャム 完全燃SHOW』では、その録音の様子が紹介されました。
安田の場合、明るい印象の高音が、歌詞の表情に合わないことが課題になったのです。

本人は、声が軽いと感じていても、それまで直し方を知らなかったと振り返っています。
細かな発声の調整を重ね、話し声に近い太さのある声へと近づけていきました。
高音が出るかどうかにとどまらず、その高さでどんな気持ちが伝わるのかを見直す録音でした。

「キミトミタイセカイ」MV SING ver.(2021年)。

もともとの明るさを持ちながら、歌詞に合わせて違う声の出し方も探す。
長く感じていた課題が、一曲の制作を通して、具体的に取り組めるものになっていました。

2022〜2024年|もう歌えないかもしれない曲を、今の声で歌う

5人体制での活動には、新曲を作ることとともに、以前の曲をどう歌うかという課題もありました。
2023年に放送された番組は、前年11月のドームツアーのリハーサルに密着しています。
そこでは、メンバーのパートを分け直し、歌や楽器の担当を変えて取り組む姿が伝えられました。

安田によると、5人になったばかりの頃は、もう歌えないかもしれないと思う曲が多かったそうです。
それが、この時には歌おうという流れへ切り替わっていました。
以前の曲を今いる5人で引き受ける気持ちの変化が、本人の言葉に表れています。

グループの中で、安田は常に同じ強さで前に出るわけではありません。
2022年の北村由起による音楽評は、ハーモニーを重ねる相手によって声を変え、後ろへ下がって相手を際立たせる面にも触れています。
歌い出しを担う声と、他の声を支える声。
どちらも、グループの曲を形にするための役割でした。

2024年には、記者の横山慧が、近年の歌声に重みが増したように感じたと本人へ伝えています。
安田は、時間がたつことが深さを増してくれると答えました。
一曲の録音で声を調整する経験に加え、歌を届け続ける年月を、本人は表現の深さと結びつけて捉えていました。

2025年|自分の声で語るために、ギターの音も選ぶ

2025年の『ギタージャンボリー』出演前、安田は和田唱との対談で、歌とは歌詞と自分の声で物語を語り、話したいことを話すものだと説明しています。
ギターは、そこに寄り添う存在でした。

自分の言葉がはっきり伝わるように、ギターにも癖の少ない明るい音や、音の立ち上がりのよさを求めていました。
好みの楽器を選ぶ話にも、歌をどう届けるかという考えが通っています。
声だけを取り出して理想を考えるのでなく、自分が歌う隣で、どんな音が鳴るかも大切にしていたのです。

2025年公開の対談写真、和田唱が左、安田章大が右
2025年公開の対談写真。
和田唱(左)と安田章大(右)。
撮影:小原啓樹/画像出典:写真掲載元

弾き語りは、この公演で突然始めた表現ではありません。
中学生の頃にエレキギターを手にし、ゆずやMr.Childrenなどの影響からアコースティックギターへ移った安田は、そこから曲も作り始めたと話しています。
エレキギターで演奏する曲でも、作る時にはアコースティックギターを使う。
一人で声と言葉を重ねる作り方は、それまでの曲作りにもありました。

3月1日の本番では、即興の自己紹介の歌から、客席とのやり取りを始めました。
主催者の公演レポートを執筆した笹谷淳介は、「ワッハッハー」の力強い歌と、アデルの「Hello」での透き通る高音を伝えています。
一人で歌うステージの中に、違う声の表情がありました。

未発表曲を披露する時には、二つの曲名を示して、どちらを聴きたいか観客に尋ねています。
選ばれた「ざわめきは嘘」を、情感を込めて歌いました。
自分で作った歌を、目の前の相手の反応も受けながら届ける時間でした。

和田唱との「FEVER」では、二人が交互に歌い、ハーモニーも重ねています。
一人で物語を語る歌から、他の歌い手と呼吸を合わせる歌まで、ギターを抱えた同じステージで行き来していました。

2026年|その場で生まれた言葉から、自分の作品へ

2026年5月2日の『The ONE~一音一生~』では、ギターの音が出ないトラブルが起きました。
安田はアカペラに切り替え、感謝をその場で歌詞とメロディーにして歌っています。
続く「喝采」も、伴奏を使わずに歌い上げました。
吉岡俊による公演レポートは、会場が静まり、その声だけが響いた場面を伝えています。

伴奏が止まっても、目の前の人へ届ける歌は、その場の言葉から作ることができる。
ギターとともに語ってきた歌が、声だけでも客席をつなぐ場面でした。
その後は神山智洋と「わたし鏡」をデュエットし、他の歌い手とも一夜の音楽を作っています。

9月には、シンガーソングライターとして「ばっか/まだらびより」の配信を開始しました。
二曲とも、作詞・作曲・編曲を本人が担当しています。
2021年の『8BEAT』に収録された自作ソロ曲「9」も、ここに収録されました。
自分の歌を作ってきた歩みを引き継ぎ、その作品を届ける活動も広げています。

まだらびより Special Movie(2026年)

人物の気持ちを歌にし、歌詞に合う声を探し、観客へ届ける言葉をその場で選ぶ。
安田章大の歌には、自分が出せる声を、その曲と相手のためにどう使うかという問いが重なっています。
明るい高音を持つ人が、その明るさだけでは届かない表現を探してきた歩みです。
高音の印象や、ハーモニーでの声の使い分けは、安田章大の歌い方で詳しく見ていきます。

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