亀梨和也の歌唱変遷|乾いた「Rain」から、声の表現を試し直すまで

2026年の『WAVE』インタビューに登場する亀梨和也 シンガー
2026年の『WAVE』インタビューに登場する亀梨和也

亀梨和也は、2019年の「Rain」で、ふだんより乾いた印象の歌い方を意識した。
2026年の「Diamond」では、曲の制作者と口の開け方や言葉の乗せ方を試している。
曲に合わせて、声の表情や言葉の届け方を選び直してきた。

その歩みには、歌の登場人物への向き合い方や、舞台で声を出し続ける不安も関わっている。
自分らしい声を持ちながら、他の歌手や制作者と出会うたびに、表現の選択肢を増やしていく。
一曲をどう受け止め、誰と歌をつくってきたかをたどると、亀梨の歌の変化が見えてくる。

Diamond 公式リリック映像(2026年)

2019年、「Rain」で選んだ乾いた声

2019年5月に発表した「Rain」は、亀梨にとって初のソロシングルだった。
2017年の初ソロコンサートツアーを経て、シングルでも自分の声を届けることになった。
自身が出演するドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』の主題歌として制作された曲である。

発売時に亀梨は、ふだんより乾いた感じを意識して歌ったと明かしている。
佐藤結衣による当時の評も、KAT-TUNでの柔らかく艶のある声と、この曲でのざらつきのある質感を対比した。
亀梨の声にある艶をそのまま押し出すのではなく、この曲のために違う手触りを選んでいた。

佐藤は、切ない歌詞と、力を込めて歌う生々しさとの結びつきにも注目している。
声の印象を変えることが、曲の感情を届ける方法になっていたのだ。
亀梨が語った「乾いた」という感覚は、声の状態の説明ではなく、歌い手として意識した表現だった。

Rain 公式音源(2019年)

「青春アミーゴ」を歌い直して気づいたこと

新しい曲で声を選ぶ一方、長く歌ってきた曲にも、以前とは違う向き合い方が生まれていた。
2020年の山下智久との対談で、亀梨は「青春アミーゴ」の録音を振り返っている。
2005年の自分の声を聴き、格好をつけていたと感じたという。

当時も歌詞を解釈して歌おうとはしていたが、何より優先していたのは、自分が格好よく見えることだった。
今回の録音では、歌の登場人物へ、以前より気持ちを重ねられたかもしれないと話している。
よく知っている曲でも、歌う時に意識が向く先は変わっていた。

同じ言葉を歌う時、自分の見え方と、歌の人物の感情のどちらを強く意識するか。
亀梨が自分で感じ取ったのは、そうした表現の内側の変化だった。

舞台で声を出し続ける不安を語る

歌の感情に向き合うこととは別に、その声を本番で使い続けられるかという課題もあった。
2022年のテレビ出演で亀梨は、以前に音楽劇へ取り組んだ際の経験を振り返っている。
芝居で大きな声を出し、歌も歌う公演が長く続く。
いま声が出ていても、ある日突然出なくなるのではないかと、夜に不安を感じたという。

稽古期間中、憧れの稲葉浩志と食事をする機会があり、その気持ちを相談した。
コンサートではあまり感じたことのなかった不安だったが、稲葉にも同じような思いがあると知った。
長く第一線で歌う人にもある悩みなのだと分かったことが、亀梨には救いになった。

喉や背中のケア、呼吸、発声についても助言を受けている。
声を使う方法を教わるとともに、経験豊かな歌手が、不安を抱えながらどう歌い続けるかを知る機会だった。
歌う場が変わることで、それまでとは違う声の課題も見えていた。

2024年、他の歌手の曲を自分の声で歌う

2024年2月23日の『Inside 23』では、他のアーティストの曲を、生バンドと歌う場をつくった。
会場はBillboard Live TOKYO。
この日の選曲には人と人との関係というテーマがあり、亀梨は、他の歌手が描いた物語を自分を通して表現すると話している。

2024年2月23日の『Inside 23』で歌う亀梨和也
2024年2月23日の『Inside 23』で歌う亀梨和也。
画像出典:写真掲載元

山下穂尊がギターとブルースハープで参加した「オリオン」では、カウチに腰を下ろして歌った。
公演レポートは、その声を、優しく語りかけるような歌として伝えている。
山下が生演奏をその一回で届ける貴重さに触れると、亀梨も喜びを示した。
演奏者と同じ場所で歌をつくること自体が、刺激になっていた。

同じ夜、自分が歌ってきた曲にも違う表情を与えている。
「Real Face」はストリングスを伴って力強く歌い、「絆」はゆったりした編曲の中でしっとりと届けた。
客席の近い会場でも、全てを穏やかな歌にそろえず、曲と伴奏に応じた表現を行き来していた。

亀梨は、この公演を実験であり、インプットの時間でもあると捉えていた。
自分の持ち歌を増やすことだけが、新しい歌との出会いではない。
他の人の曲や、いつもと違う演奏の中へ入ることも、自分の声で何ができるかを探る機会になっていたのだ。

2026年、曲の作り手と録音の中で試す

初のオリジナルアルバム『WAVE』を発表した2026年には、曲を選び、録音する作業にも時間をかけている。
グループでは一日に複数曲を録ることもあったが、今回は一日一曲ほどのペースだった。
録った歌を確かめながら話し合い、その場で歌詞を調整することもあったという。

リード曲「WAVE」では、新たな活動の始まりを強く印象づける派手な曲も選択肢にあった。
しかし最後に選んだのは、その時の自分の気持ちに合う、浮遊感のある柔らかな音だった。
一人での新しい活動を始める時、どんな曲の中に自分の声を置きたいかも、問い直していた。

「WAVE」MV(2026年)。

「Diamond」では、提供者の友成空がボーカルのディレクションを担当した。
亀梨は、自分の感覚だけなら言葉をもっと強く乗せたかもしれないと振り返っている。
友成と相談し、口の開け方や広げ方、発声、言葉の乗せ方を試す録音だった。
長年の自分の歌い方を出発点にしながら、作り手の考えも受け取っていたのである。

「36度5分」は、スタッフの意見が大きく働いて選ばれた曲だった。
自分だけでは選べなかったような世界に、歌い手としてどう入るか。
歌詞の人物に寄り添い、一発録りでライブ感を狙うなど、曲を形にする方法を探った。
本人は、アルバムの中で最も難しかったかもしれないと話している。

「36度5分」公式音源(2026年)。

長く歌う中で身についた癖を、亀梨は自分の良さでもあると認めている。
それでも、どの曲も同じ感覚で歌うのではなく、曲の世界に応じて歌い手としての自分をつくろうとしていた。
俳優として、監督とのやり取りから新しい表現を見つけてきた経験も、そうした受け止め方に関わっているという。

新しい曲と、歌い続けてきた「絆」

『WAVE』の「ゆらゆら」は、聴き手として好きな音楽を、自分でも歌ってみたいと選んだ曲だった。
それまであまり扱ってこなかったタイプだからこそ、自分が歌うとどうなるかという楽しみがあった。
得意な曲を歌う安心感に、まだ知らない自分の表現を試す面白さも加わっていた。

「ゆらゆら」公式音源(2026年)。

同年9月19日のソロツアー東京公演では、『WAVE』の新曲に加えて、グループ時代からのソロ曲も歌った。
新作だけで自分を示すのではなく、これまで歌ってきた曲を含めて、今のステージをつくっていた。

2026年のソロツアーで歌う亀梨和也
2026年のソロツアーで歌う亀梨和也。
画像出典:写真掲載元

アンコールの最後に置いたのは、2005年に発表した「絆」だった。
サビでは観客も歌い、長く親しまれてきた曲をともに届ける場面になった。
新しい曲で表現を試す時間と、大切に歌い続けた曲を共有する時間が、一つの公演にあった。

さらに、10月16日公開の『THE FIRST TAKE』でも「絆」を歌っている。
視聴者として見ていた場所で歌うことに緊張しながらも、20年以上前の曲を、40歳になった自分が一発撮りで届ける機会に力を込めたと話した。
同じ曲を歌い続けることも、今の自分で改めて向き合う挑戦になっている。

「絆」THE FIRST TAKE(2026年10月公開)。

「Rain」で声の質感を選び、カバーの場では他の人の物語を歌い、アルバムでは制作者と声の出し方まで相談する。
亀梨の歩みには、自分らしさを持ち続けながら、その曲にふさわしい歌を選び直す姿勢が通っている。
声の艶やざらつき、言葉の強さによる表現は、亀梨和也の歌い方で取り上げている。

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