亀梨和也の歌い方|艶とざらつき、言葉の強さを選ぶ声

2026年のインタビュー撮影で椅子に座る亀梨和也 シンガー
2026年のインタビュー撮影で椅子に座る亀梨和也

亀梨和也の声には、柔らかな艶と、ざらつきを感じさせる表情がある。
曲に応じて声の質感を変え、言葉をどれほど強く乗せるかも選んでいる。
語りかける歌と感情をあらわにする歌を行き来できるところに、歌い方の幅がある。

Rain 公式音源(2019年)

声の手触りと、言葉の力加減を選ぶ

2019年の「Rain」で亀梨が意識したのは、ふだんより乾いた感じの歌い方だった。
当時の評は、KAT-TUNでの柔らかく艶のある声と、「Rain」のざらつきのある声を対比している。

乾いたという言葉は、この曲で選んだ声の印象を表している。
滑らかな艶を生かすときとは違う手触りが、曲の切なさに関わる歌唱として受け止められた。

2026年の「Diamond」では、曲を提供した友成空がボーカルのディレクションも担当した。
亀梨は、自分の感覚だけなら言葉をもっと強く乗せていたかもしれない、と振り返っている。
友成と相談したのは、言葉の乗せ方だけでなく、歌い心地、口の開け方や広げ方、発声だった。
自分の得意な歌い方へ曲を引き寄せるだけでなく、歌い手として提供者の考えを受け取り、いくつもの歌い方を試した録音なのである。

この話で大切なのは、強く歌えるかどうかより、どれほど強く言葉を乗せると曲に合うかを探ったことだ。
「Rain」で乾いた質感を選んだのと同じように、「Diamond」でも、いつもの自分の感覚をそのまま正解にしなかった。
声を出す動作と、聴こえる言葉の表情を、作り手と一緒に調整する経験だった。

Diamond 公式リリック映像(2026年)

一曲の人物に寄り添って歌い切る

歌い方を選ぶ基準には、その曲の中にいる人物も関わっている。
『WAVE』収録の「36度5分」では、亀梨は歌詞の登場人物に寄り添い、一発録りでライブ感を出すことを試した。
自分では選べなかったような曲で、本人はアルバムの中でも特に難しかったかもしれないと話している。

細かな部分を整える録音とは別に、一続きで歌う時の流れを生かそうとしたのだ。
言葉を一つずつ表現するだけでなく、その人物の気持ちを途中で切らずにたどる。
「Diamond」で発声の仕方まで相談した話と合わせると、曲ごとに完成させる方法も選び直していることが分かる。

人物の感情を歌うという意識は、長く歌ってきた曲にも向けられていた。
2020年に「青春アミーゴ」の録音を振り返った対談で、亀梨は、以前は格好よく見えることを優先していたと話している。
その時の録音では、若い頃より登場人物に感情を重ねて歌えたかもしれないと感じていた。

同じ歌詞を知っていても、歌う時に何を思い浮かべるかは変わる。
自分の見え方から、曲の人物が感じていることへ意識を向けるという、本人が語った変化だ。
艶や力強さという声の印象の内側には、言葉を誰の気持ちとして発するかという選択もある。

語りかける声から、感情を放つ声へ

2026年7月の『WAVE』インタビューに登場する亀梨和也
2026年7月の『WAVE』インタビューに登場する亀梨和也。
画像出典:写真掲載元

2026年7月放送の『The Covers』で歌った「Hello, Again ~昔からある場所~」は、語りかけるような表現と、むき出しの感情を放つ表現が取り上げられている。
一曲のなかにも、相手へ言葉を渡すような歌と、気持ちが前に出る歌がある。
声の表情が変わることで、歌の人物の距離や感情も伝わる。

同じ番組の「情熱」では、亀梨自身が、リズムに乗って身体を音に委ね、本番一回の生々しさを大切にしたと説明している。
前にUAと共演し、声や人柄にひかれたことが選曲につながった。
その歌を自分が歌うときには、バンドとの演奏に身を置き、その場の感覚を表現に取り込んでいた。

バンドや歌う場所によって変わる表情

バンドとの距離が近い公演では、語りかける声の具体的な場面も残されている。
2024年2月の『Inside 23』で、亀梨は山下穂尊のギターやブルースハープとともに「オリオン」を歌った。
公演レポートには、カウチに腰を下ろし、優しく言葉を渡すように歌う姿が記されている。

同じ夜の「Real Face」は力強く、「絆」はゆったりした編曲の中でしっとりと歌われた。
客席とステージが近い会場でも、全ての曲を小さく穏やかにそろえてはいない。
曲の性格と伴奏に応じて、その場に合う声の表情を行き来していた。

この違いを聴く時には、声の質感に加え、言葉を急がず置ける間や、バンドの音との関係にも注目したい。
同じ歌手の声でも、伴奏の速さや厚みが変われば、フレーズに感じる余裕や勢いも変わる。
亀梨がこの公演を実験やインプットの時間と話したことには、他の曲や演奏者の中で自分の歌を試す意味がある。

遊びのある歌でも、細かな音の動きに向き合う

声の表情の幅は、切ない曲や力強い曲だけには収まらない。
「アジパンダハニカンダ」の制作取材では、亀梨は、当初想像した可愛らしい曲とは違い、サビも思った以上に歌いがいがあったと話している。
作曲した本間昭光も、簡単そうに聞こえるサビの旋律に、難しいところを盛り込んだと説明した。

本間が挙げたのは、半音下から上がっていく音の動きである。
口ずさみやすい印象の中にも、細かく音をたどる必要のある部分がある。
亀梨自身は、そのサビを歌う気持ちよさや、つい繰り返したくなる感覚を気に入っていた。

さらに制作担当者は、録音中に亀梨がものまねも交えながら、楽しい雰囲気を引き出そうとしていたと明かしている。
歌の役割に合わせて、自分の声に遊びを加える余地も持っていたのだ。
キャラクターの可愛らしさを歌う曲であっても、音の細かさと表情づくりの両方に取り組んでいることが分かる。

芝居の声と歌声を、同じ舞台で使い続ける

こうした歌の表現には、声を本番で使い続けるという課題も伴っている。
亀梨は2022年の番組で、音楽劇の稽古中、芝居で大きな声を出しながら歌も担うことに不安を感じたと明かした。
今は出ている声が、突然出なくなったらどうしようと考えたという。

その時に相談した稲葉浩志からは、喉のケアや呼吸、発声について助言を受けた。
経験豊かな稲葉も同じように不安を感じると知ったことが、亀梨には救いになった。
歌う一場面の声を選ぶことと、公演を通してその声を保つこと。
亀梨の歌への取り組みには、両方の課題が含まれている。

「Diamond」では録音中に相談を重ね、「情熱」ではバンドのリズムに身を委ねて本番の感覚を選ぶ。
声の手触りや言葉の力加減は、その曲を誰と、どんな場で歌うかによっても変わる。
亀梨の歌い方には、決めた形へ近づける作業と、その場で生まれる表情を受け入れる余地がある。

曲に合わせて歌い方を試してきた歩みは、亀梨和也の歌唱変遷でたどっている。

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