永瀬廉(King & Prince)の歌唱変遷|歌い直しを申し出て、二人の曲で長い展開を担うまで

2024年の映画『ふれる。』の取材に掲載された永瀬廉 シンガー
2024年の映画『ふれる。』の取材に掲載された永瀬廉

「愛し生きること」の録音で、永瀬廉は自分から歌い直しを申し出ました。
一度録った音源を聴き、声や息遣いで映画の印象をさらに深められると考えたからです。
普段はしないというそのお願いに、曲の中で自分の声をどう生かすか、判断する姿が表れています。

それ以前には、励ます気持ちをどう届けるかに苦労し、映画では自分なりに崩した歌も、役らしさが足りないと言われています。
そして2026年には、二人で歌う曲の中で一人が長い展開を担う歌割りにも挑みました。
永瀬の歌唱をたどると、求められた気持ちを伝える難しさから、録音や歌割りを自分たちで選ぶところまで、歌への関わり方が見えてきます。

愛し生きること MV(2023年)

2019年、励ます気持ちをどう声にするか

King & Princeの「君を待ってる」は、聴く人の背中を押す、グループ初のエールソングでした。
それまでのラブソングから、夢や目標へ向かう人を応援する歌へと、届ける言葉の役割が変わった一曲です。
2019年3月のテレビ初披露に際し、永瀬は、聴いた人が前向きになれるように気持ちを伝える歌い方に、とても苦労したと話しています。

この時の本人が難しさとして挙げたのは、励ましたい気持ちを、実際に相手へ届く歌にすることでした。
励ます側の思いが強ければ、それだけで相手に伝わるとは限りません。
本人が歌い方に悩んだという言葉には、歌詞を覚える先に、受け取る人の気持ちまで考える課題があったことが表れています。

君を待ってる MV YouTube Edit(2019年)

2020年、自分なりに崩しても役の歌にならなかった

映画『弱虫ペダル』では、小野田坂道役として劇中のアニメソングを歌いました。
ここでは、いつもの自分として歌うこととは別の難しさが生まれます。
三木康一郎監督から、格好よすぎるので、もっと坂道らしくしてほしいと指示を受けたのです。

本人はかなり崩して歌っているつもりでした。
それでも、役の歌としては十分ではなかったと振り返っています。
自分の中で歌い方を変えた感覚と、画面の中で坂道の歌として成立することが、同じではなかったのです。

自転車をこぎながら歌う場面では、息切れを伴い、完璧に歌う必要もありませんでした。
それでも撮影を続けると、歌うのが楽しくなり、実際に自転車の速度も上がっていくように感じたと話しています。
坂道にとって歌が前へ進む力になることを、永瀬自身も撮影の中で感じ取っていたのです。

ここで求められたのは、歌手として魅力的に聞こえる歌だけではありません。
息を切らしながら、それでも好きな歌を歌う人物が、画面の中にいることでした。
自分では崩したつもりでも監督には足りないと言われた経験からは、役に必要な声と、自分が選びやすい歌い方の違いが見えてきます。

2023年、声の表現を生かすために録音をやり直す

主演映画『法廷遊戯』の主題歌「愛し生きること」では、歌い方そのものを見直すために、自分から録り直しを頼んでいます。
理由には、この曲で息遣いが繊細に聞こえることがありました。
笑って楽しく歌うような作品ではなく、落ちサビを含め、自分の声の表現が生きる曲だと感じていたのです。

一度録った音源を聴き、まだ映画をより良くする余地があると考えました。
二度目の録音では、最初より歌い慣れ、聴き慣れていたとも話しています。
歌の表現をもう一度考えるために、録音の時間を用意してもらったのです。

普段は言わないという歌い直しのお願いは、この一曲で自分の声に任せられる部分を、本人が見つけた出来事でした。
声を強く張るかどうかだけではなく、息を含んだ細かな表情が、映画を見終えた人に何を残すかまで考えています。
同じ曲をもう一度録る時間を求めたのは、最初の歌を聴いたからこそ、次に試したい表現が見えたためでした。

2023年の映画『法廷遊戯』の上映イベントに登場した永瀬廉
2023年の映画『法廷遊戯』の上映イベントに登場した永瀬廉。
画像出典:写真掲載元

2019年には、どう歌えば励ます気持ちが伝わるかに苦労していました。
「愛し生きること」では、一度歌った結果を聴き、息遣いや落ちサビに表現の余地を見つけて、もう一度試すところまで踏み込んでいます。
求める気持ちを声にする課題は続きながら、録音への関わり方が具体的になったのです。

この曲は、ツアーの新潟公演前に特別撮影した『LIVE TOUR 2023〜ピース〜STAGE Ver.』としても披露されています。
通常の公演が始まる前に時間を取り、この曲のために映像や照明を用意したものでした。
永瀬は、どのタイミングまでその場で歌い、どこから動くかを、髙橋海人や振付師と相談したと説明しています。

録音で息遣いを見直すだけでなく、ステージでは、歌をどの場面でどう見せるかにも関わっていました。
舞台あいさつで初めて完成映像を見た際には、落ちサビに重なる紙吹雪にも喜び、準備を支えたスタッフへ感謝しています。
声の表現を生かしたいという意識が、録音と舞台上の見せ方の両方に表れた一曲です。

「愛し生きること」ピース STAGE Ver.(2023年、公演前に特別撮影した映像)。

2024年、歌い出しを二人で歌う意味

二人体制になってからの歌では、以前からある曲を、今の二人でどう届けるかも課題になります。
2024年5月の『with MUSIC』では、デビュー曲「シンデレラガール」を、二人になってから初めてテレビで披露しました。
この時に選んだのが、歌い出しから二人の声を重ねる形です。

永瀬は、二人にとっての始まりを表す「シンデレラガール」にするため、一緒に歌い始めることにしたと説明しています。
髙橋も、二人で歌い出すことの力強さを感じていました。
人数が変わった後の歌割りを考える中で、冒頭の声の重ね方に、新しい出発の意味を持たせたのです。

「愛し生きること」では、自分の声の表現をより良くするために、録音をやり直しました。
「シンデレラガール」では、二人の関係をどう伝えるかというところから、誰がどこで歌うかを選んでいます。
自分の声を生かすことから、二人の声をどう組み合わせるかへ、歌の作り方を考える範囲が広がっています。

2026年、二人の歌を細かく交代せず長く担う

『So Honey EP』の「うそだよ すきだよ」では、1番を髙橋海人、2番を永瀬がまとまって歌う構成に挑みました。
一人ずつ長く歌を届けることで、物語の展開を聴く人が追いやすくなると考えた歌割りです。
永瀬も、展開ごとに大きく分けたほうが歌の良さが伝わると感じ、この大胆な分け方を気に入っています。

髙橋によれば、この分け方は制作の途中で生まれた案でした。
言葉をゆったり聴かせる曲だからこそ、短く交代するより、一人がまとまって歌う時間を取ったほうが、聴き手も物語に入れると考えています。
二人で声をそろえる「シンデレラガール」と、一人ずつ長く受け持つ「うそだよ すきだよ」では、同じ二人の声でも、配置する理由が違うのです。

番組で披露した際、これまでこれほど長く一人ずつ歌う機会はなかったと話し、さらにDメロまで聴いてほしかったと振り返りました。
二人の曲の中で、一人が続けて物語を担う形を試したのです。

うそだよ すきだよ 公式音源(2026年)

同じEPの「Chillin' Dizzy」では、大人っぽくゆっくり歌い、余裕を感じさせることを意識しました。
長く一人で歌う歌割りも、ゆったり歌う意識も、自分たちの声をどこで、どんな表情で聴かせるかを考えた選択です。

2026年の『So Honey EP』を語る永瀬廉(左)と髙橋海人(右)
2026年の『So Honey EP』を語る永瀬廉(左)と髙橋海人(右)。
画像出典:写真掲載元

Chillin' Dizzy 公式音源(2026年)

この頃の作品作りについて、永瀬は、二人の意見が一致しなければ発表することはないと話しています。
自分たちで選んだ曲が届き、楽曲そのものを褒めてもらえる機会が増えたことも、喜びになっていました。
歌い手として一曲を仕上げることに加え、その一曲を二人で選び、どんな歌として届けるかまで引き受けるようになっています。

歌を直す判断から、歌う長さを選ぶ判断へ

永瀬の歌唱には、気持ちをどう届けるかという問いが続いています。
励ます歌での苦労、役に合わせて崩す歌、息遣いを生かすための録り直しを経て、二人の曲で長い展開を担う歌割りにも向き合うようになりました。
音程や声量だけでなく、その曲で自分の声が何を引き受けるかを考える歩みです。

曲の中で声をどう響かせ、息や言葉に表情を付けるかは、永瀬廉の歌い方で掘り下げています。

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