ロニー・ジェイムス・ディオ(Rainbow / Black Sabbath)の歌い方|強い声で、弱い立場の人間も歌う

ロニー・ジェイムス・ディオの声には、魔法使いや王のような、物語を支配する人物が似合いそうです。
ところが、Rainbowの「Stargazer」で彼が演じているのは、魔法使いのために働かされる奴隷の一人でした。

堂々とした声だからといって、歌の中の人物まで堂々としているとは限らない。
その人物が何に怯え、何を願っているのかを考えると、ディオの強い歌が、威勢のよさとは違う表情を持ち始めます。
1976年のアルバム『Rising』に収められた「Stargazer」は、その聴き方がよく似合う曲です。

「Stargazer」で歌っているのは、塔を造らされる側の人間

「Stargazer」には、空を飛べると信じた魔法使いが登場します。
彼は奴隷たちに巨大な塔を造らせ、その頂上から飛び立とうとする。
ディオが歌詞に与えたのは、その計画を命じる者の視点ではなく、苦しい労働を強いられた者の視点でした。

この設定が分かると、曲の壮大さの意味も変わります。
大きな塔を造ることは、そこにいる全員にとっての栄光ではありません。
働かされる側には疲労があり、自分たちが信じているものへの疑いもある。
堂々と歌える声を使って、堂々とは振る舞えない人間の思いを伝えているのです。

物語では、魔法使いは飛ぶことに失敗します。
支配から解放された奴隷にも、その後をどう生きるかという問題が残る。
勝者が勝利を誇る歌とは違い、強く声を上げる理由の中に、苦しみや戸惑いが含まれています。

ディオの高音を追うときも、「どこまで上がるか」に加えて、「この人物は、なぜここで声を上げるのか」と考えてみる。
同じ声の力強さを、人物の切実さとして受け取れるようになります。

2009年、Heaven & Hellの公演で歌うロニー・ジェイムス・ディオ
2009年、Heaven & Hellの公演で歌うロニー・ジェイムス・ディオ。写真:.:-Badulake-:. / CC BY 2.0

歌詞を、高音やビブラートのための材料にしない

ディオは、歌詞を普段話す言葉のように理解することを重視していました。
声の力やビブラートを披露するために言葉があるのではなく、言葉の意味を伝えるために歌う、という考え方です。

たとえば、誰かを信じている人物と、信じた相手に裏切られた人物が、同じ言葉を口にすることはあります。
けれども、その二人が相手に伝えたいことは同じではありません。
歌詞を音符に当てはめるだけでは、その違いが抜け落ちてしまう。
ディオが話し言葉としての意味を大切にした理由も、そこにあると考えられます。

彼は、ステージで手を動かすことについても、歌の物語を伝えるためだと説明しています。
身振りは、声で伝えようとしている内容の続きでもあったわけです。
歌詞の主人公を理解し、その言葉をどう届けるかを考える姿勢は、音の外側にも表れていました。

「Stargazer」で奴隷の立場を知っておくことも、難しい物語の予習が目的ではありません。
歌う人物が置かれた状況を知ると、強い声を、単なる強さの誇示として聴かずに済むからです。

「Don’t Talk to Strangers」は、小さな声から始まる

ディオが自分のバンドDioで発表した1983年の『Holy Diver』には、「Don’t Talk to Strangers」という曲があります。
アルバムの録音で冒頭に入るささやきも、ディオ本人の声です。
続く歌い出しでは、彼は意識して高い声を選び、声の質感に変化をつけました。

ここでは、高い声を使うことと、大きく叫ぶことを分けて考えると分かりやすくなります。
ディオは高音の力強さで知られる歌手ですが、この歌い出しでは、高い声を重い演奏に向かう前の対照として使っています。
最初から終わりまで同じ迫力を保つための選択ではありません。

本人は、柔らかな導入から重い音楽へ進む構成を好んでいました。
静かな曲だと思わせたところで、バンドの重い音が現れる。
その変化があるから、後から出てくる声の強さにも、新たな意味が生まれます。

ささやく声と力を込める声を、一人の歌手が一曲の中で使う。
「ディオらしい声」を太く強い声だけに絞ってしまうと、その前に作っている緊張まで聴き落としやすくなります。

観客には、怒鳴るより話しかけたかった

歌の中では激しい声を使うディオですが、曲の紹介で観客に怒鳴りつけるような振る舞いは好みませんでした。
客席を一つの大きな塊として扱わず、一人ひとりに話しかけたいと考えていたからです。

ステージで歌うときも、観客それぞれの目を見て、その人のために歌っているように思い描く。
曲を紹介するときには、個人的な会話をするつもりで話す。
大きな会場を相手にしても、言葉を受け取るのは一人の人間だという意識がありました。

歌の登場人物を理解することと、客席の一人を想像すること。
ディオの歌には、言葉を発する側と受け取る側の両方を考える姿勢が見えます。
強い声を出せるからこそ、その声で誰の思いを伝え、誰に届けるのかを大切にしていたのでしょう。

2007年、カトヴィツェ公演のロニー・ジェイムス・ディオ
2007年、カトヴィツェ公演のロニー・ジェイムス・ディオ。写真:Marek Krajcer (Maross) / CC BY-SA 3.0

声の強さの中に、その人物が声を上げる理由がある

「Stargazer」の奴隷は、力を持つ支配者ではありません。
「Don’t Talk to Strangers」の歌い出しも、ディオの声量をいきなり見せつける場面ではありません。
物語の立場を選び、一曲の中で声の大きさや質感を変えることで、強い声が必要になる場面を作っています。

ディオの歌い方を知る面白さは、迫力を細かな技術に分解することだけではなく、その迫力が何を伝えているのかを考えられることにあります。
高音が来るのを待つだけでなく、その前にどんな人物が、どんな気持ちで歌っていたかを追ってみる。
力強い声の中に、苦しさや不安まで聴こうとする楽しみが増えてきます。

この歌い方は、初めからメタルの中だけで育ったものではありません。
ピアノを中心にしたElfの音楽からRainbow、Black Sabbathへ進む中での変化は、ロニー・ジェイムス・ディオの歌声の変遷でたどっています。

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