フロール・ヤンセン(Nightwish)の歌声の変遷|歌える声が増えても、歌の課題は終わらなかった

2014年のフロール・ヤンセン シンガー
Tinyex99 / CC BY-SA 4.0

フロール・ヤンセンは、ReVampで歌っていた時期から、歌い方の幅を広げてきました。オペラ風の声も、ロックの強い声も、荒々しいうなり声も使う。それならNightwishでは、持っている技術を発揮するだけだったのでしょうか。

本人の話では、そう単純でもありませんでした。あまり使ってこなかった柔らかい声を試す機会が増え、難しい旋律を覚えたあとには、歌詞の感情を伝える練習が待っていました。歌える声の種類を増やした先に、その声をどう生かすかという課題が続いています。

2013年のReVamp『Wild Card』は、表現の幅をさらに広げようとしていた時期の作品です。収録曲「Nothing」も、そのころのフロールを知る一曲です。

2013年、使える声をできるだけ広げたReVamp

フロールはAfter Foreverで活動したのち、ReVampを率いていました。Nightwishのツアーへ加わった2012年以降も、しばらくは両方で歌っています。『Wild Card』は、その活動が重なっていた時期のアルバムです。

この作品について、本人は前作よりも重く、現代的で、多彩なものを目指したと説明しています。歌でも、うなり声を加え、激しいロックの声、オペラ風の声、ポップスに近い声まで、できるだけ幅広く使おうとしていました。

ここで目指していたのは、歌手としてできることを曲の中へ持ち込むことです。幅広い声を使うという特徴は、Nightwishに入って突然生まれたものではありません。

歌を学び始めた17、18歳ごろのフロールは、最初のレッスンで「何を学びたいか」と聞かれ、ただ歌を学びたいと答えたそうです。当時は声の区分や技法を知らなかった。その歌手が、学んできたさまざまな声を使って作品を作るようになっていました。

2010年、ReVampのステージで歌うフロール・ヤンセン
2010年、ReVampのステージで歌うフロール・ヤンセン。写真:Foxistar / Public domain

Nightwishで増えた、柔らかい声を使う機会

ところが、歌える種類が多ければ、どんな曲もすぐに得意になるわけではありません。2016年にNightwishの曲について聞かれたフロールは、「Amaranth」のポップな感じには、最初は慣れていなかったと話しています。

新しい技術を一から覚える必要があったというより、以前はあまり使っていなかった、軽く柔らかい歌い方を試す機会が増えた。そのように、本人は加入後の変化を説明していました。

技術として知っていることと、曲の中で自然に使えることには距離があります。強い歌唱で知られていたフロールにとっても、柔らかく歌う場面は、自分の声の使い方を探る機会になったのです。

さらに、昔のNightwishの録音で曲を覚えると、前の歌手の解釈まで一緒に入ってきます。本人は2018年、自分なりに曲をつかめたのは、バンドと一緒にリハーサルをしたときだったと説明しています。録音をなぞる段階から、今のメンバーと曲を作る段階へ進んでいました。

2020年、音を覚えたあとに残っていた練習

2020年のアルバム『Human. :II: Nature.』では、歌を仕上げるまでの準備がさらに細かくなります。冒頭の「Music」などは、歌そのものが大きな挑戦だったとフロールは話しています。

本人は曲を一つずつ分解し、まず旋律を覚えました。難しい部分は、次の音を必死に考えなくても歌えるところまで繰り返します。そこから、曲全体の物語や、一つ一つの言葉の意味、感情、強弱へ取り組んだといいます。

音と言葉を覚える練習と、その歌の感情を伝える練習は、本人の中でも別の作業でした。それらを一緒にできるようになるまでには、さらに何週間もかかったそうです。

このアルバムには、人間が音楽を生み出していく過程を思わせる「Music」や、天文学者を題材にした「Shoemaker」があります。曲の物語が大きく複雑になるほど、歌手も、音程を追うだけでは物語を伝えきれません。

多彩な声を出せるようになるための学びから、その声で複雑な物語を語るための準備へ。声の種類がすでに豊富だったフロールにも、新しい課題が生まれていました。

2023年、ソロでは自分の音楽を探した

Nightwishでは、主にトゥオマス・ホロパイネンが作る曲を、フロールが自分の声で表現します。ソロになると、何を歌うかという出発点も自分で決めることになります。

2023年のソロアルバム『Paragon』について、フロールは、メタルから離れたときの自分がどんな音楽を作るのかを探したと話しています。ポップな旋律やバラードを含む作品になりました。

2022年に発表した「Fire」は、プロデューサーのゴードン・フロートヘッデと最初に一緒に書いた曲です。感染拡大で生活が制限されていた時期から、再び外の世界へ戻る気持ちを歌っています。

Nightwishで複雑な物語を歌えることと、自分の作品の方向を決められることは、違う仕事です。フロールはソロ制作を通して、自分の声に何を歌わせたいのかを考える側にも、改めて立つことになりました。

声の種類を増やしたあとにも、変化は続く

2013年のReVampでは幅広い声を使うことに挑み、Nightwishでは柔らかい歌い方を以前より多く試しました。2020年には複雑な歌を覚えた先で、言葉や感情を伝える練習を重ね、2023年のソロでは自分の音楽を探しています。

フロールの変化は、最高音がどれだけ伸びたかだけでは説明できません。使える声が増えたあとにも、慣れていない曲があり、覚えるだけでは伝わらない物語があり、自分で歌いたいことを決める難しさがありました。

高音で終盤を盛り上げる「Ghost Love Score」と、オペラ的な響きの加減を考える「Sleeping Sun」では、声をどう使うかという判断も変わります。フロール・ヤンセンの歌い方では、この2曲や「Shoemaker」での具体的な選択を扱っています。

今入れる? 近くで入りやすい飲食店がわかる混雑予報マップ

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました