リリーは、完成した歌だけでなく、そこへ至る途中の声を見せることにも向き合ってきました。
「Run For Roses」の録音を振り返った本人の話には、失敗を見られたくなかった気持ちが、少しずつ変わっていく過程が残っています。
高音を中心に練習してきた歌い手が、別の高さや、曲ごとの表情にも取り組む。
NMIXXでの活動をたどると、リリーが声に求めるものは、出せる音の高さとともに、その声をどう受け止め、どう届けるかへ広がっています。
「High Horse」―2025年公開の公式Stage Practice映像
2024年、「DASH」の頃に話した、高音以外の課題
リリーは、2022年にNMIXXのメンバーとしてデビューしました。
曲の中で異なるジャンルを組み合わせるMIXXポップに取り組み、歌とパフォーマンスを重ねてきたグループです。
2024年の「DASH」期のStar Newsの取材では、本人が、自分の歌の得意なところと課題を具体的に話しています。
練習生の頃から高音を中心にたくさん練習してきたため、超高音よりも、その途中の中高音に難しさを感じるという説明でした。
この取材で問われていたのは、ライブの歌唱を評価される中で、「DASH」の歌とパフォーマンスをどう両立したか、ということでした。
キュジンは、以前とは違う感覚の曲で、歌を生かしながら踊れるか心配し、レッスンと練習を重ねたと答えています。
その流れでリリーが挙げたのが、中高音への取り組みでした。
同じ曲を仕上げるメンバーでも、それぞれが向き合う難所は違っていたのです。
「DASH」―2024年発表曲の公式MV
印象的な高音を持っていても、歌のすべてが同じように簡単になるわけではありません。
本人の言葉には、得意な音を磨くことと、別の音の高さに取り組むことの両方があります。
高い声を出す力を、曲の流れ全体へどう生かしていくかも、活動の中の課題でした。
「Run For Roses」で、録音の途中も見せてよいと思えるまで
2024年発表の『Fe3O4: BREAK』には、「Run For Roses」も収められています。
翌2025年のIZMの取材で、リリーは、この曲の録音風景を公開した時の気持ちを話しました。
「Run For Roses」―2024年公開の公式Performance Video
完璧を求めるところがあり、最初は失敗を見せたくなかった。
けれど、最終的には完成した歌を届けるのだから、そこへ向かって良くなっていく過程を、ファンに見せてもよいのではないかと思うようになったといいます。
好きな歌手にも失敗する時はあるはずだと考え、以前より気持ちが楽になったとも説明しました。
本人によると、実際に録音風景を公開すると、そうした人間らしい姿に多くの共感が寄せられました。
見せたくなかった部分が、聴き手との距離を縮めることもある。
完成した歌への責任を保ちながら、そこへ至る自分の姿には、以前ほど厳しく構えなくなっていきます。

画像出典:写真掲載元
良い歌を目指す練習や録音には、試して、うまくいかず、歌い直す時間も含まれている。
その途中の自分も受け入れられるようになったことが、本人の語る変化でした。
「Run For Roses」―2024年公開の公式レコーディング映像
2025年、歌の表情を増やした『Fe3O4: FORWARD』
2025年の『Fe3O4: FORWARD』では、「High Horse」と「KNOW ABOUT ME」が、異なる挑戦を示します。
「High Horse」について、リリーはIZMで、技術と感情を短い時間の中で表す必要があり、仕上げるのに時間がかかったと話しています。
高音を聞かせることに加え、一曲の中へどれだけ表現を込めるかが問われていました。
新しい曲調への挑戦には、期待と戸惑いの両方がありました。
同じIZMの取材でキュジンは、「High Horse」を初めて聴いた時、いよいよこうした音楽に取り組めるという期待と、歌いこなせるかという心配が一緒に来たと振り返っています。
一方のリリーは、曲にNMIXXの技量が生きていることを感じ、ファンは新しい試みを喜ぶだろうと考えていました。
慣れた形の曲を選ぶより、今の自分たちの力を違う形で示すことに意義を見いだしていたのです。
「KNOW ABOUT ME」については、The Hollywood Reporterの取材で、それまでのNMIXXとは少し違う曲でも、自然に変化へ適応できたと振り返っています。
それまでの経験を持ちながら、新しい曲の雰囲気にも声を合わせていました。
「KNOW ABOUT ME」―2025年発表曲の公式MV
その余裕にも、積み重ねがありました。
IZMで以前より力が抜けたように見えると問われると、ヘウォンは、2024年10月から録音を始め、全曲に何度も修正を加えたと説明しています。
リリーも、余裕があるように見える人ほど準備を重ねているという考えを示し、舞台での落ち着きは、それまでの努力が積み重なったものだと話しました。
自然に歌えるように見えることと、簡単な制作だったことは、同じではありませんでした。
技巧と感情を凝縮する曲と、これまでとは違う雰囲気へ声を置く曲。
『Fe3O4: FORWARD』の時期には、高音を磨いてきた声を、異なる曲の表情へ結びつける経験が重なっています。
2026年、歌う言葉と、舞台での自由も広がる
自分で曲を作ることも、以前から試していました。
2025年のIZMでは、ピアノから作曲するとバラードになりやすく、もっと活発な曲にも挑戦していると話しています。
自分の声に合うファンクやR&B、好きなロックも、ソロで試してみたい音楽でした。
歌を受け取って表現する経験の先に、自分からどんな曲を生み出したいかという関心も育っていたのです。
2026年の『Heavy Serenade』では、リリーは作詞にも参加しました。
Teen VogueのCrystal Bellによる本人取材では、「Crescendo」の歌詞へ音楽の言葉を取り込み、特別な愛を表そうとしたことを話しています。
歌い手として音を形にするだけでなく、自分が大切にする音楽を、伝える言葉にもつなげていました。

画像出典:写真掲載元
「Crescendo」―2026年発表曲の公式MV
また、同年のRolling Stone Koreaの取材では、ツアーを重ねると、舞台がもう一つの家のように感じられるとも説明しています。
ステージで以前より自由に楽しめ、自分らしい振る舞いも受け入れてもらえたことを喜んでいました。
高音を磨き、曲に合わせた表現を探し、録音の途中の自分も受け止める。
そこへ、自分の言葉と、舞台での自由が重なっていく。
リリーの変化は、持っていた歌の力を、どんな気持ちで、何のために使うかという広がりにも表れています。
高音と中高音の違い、「High Horse」で求められた表現、曲の雰囲気へ声を合わせる選択は、リリー/LILYの歌い方で取り上げています。

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