フィリックスは、録音のたびに、自分の声をどうコントロールするか考えると話しています。
曲のイメージと感情を決め、声の色と音の高さを準備する。
本人がGQ Koreaで説明した歌い方には、低音の個性を、曲ごとに使い分ける意識があります。
「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」―2025年発表曲の公式MV
低い声の中にも、選ぶものがある
声が低いことと、その声をどう聞かせるかは、別の問いです。
フィリックスは、自分の役割をベースギターにたとえ、扱い方によっていろいろな感じを出すように、自分の声も多彩にしたいと説明しています。
低い声の存在感だけを目印にすると、曲に合わせて何を変えようとしているのかを見落としやすくなります。
本人のいう声の色と高さを分けて考えると、音程の動きを追う聴き方と、言葉が持つ声の質感へ注目する聴き方が生まれます。
実際に曲を組み立てる側も、その声を生かす位置を考えています。
Rolling Stone UKのJoseph Kocharianは、Stray Kidsの制作を担う3RACHAが、フィリックスの低音を効果的に配置し、グループのサウンドを支えていると評しました。
低い声は、本人の目印であると同時に、曲の印象を作る材料にもなっています。
声が出ている瞬間だけでなく、その直前まで誰が何を歌っていたかにも耳を向けると、その役割がつかみやすくなります。
別の声から低音へ移る時と、同じ低音が続く時では、受け取る印象も変わるからです。
ベースギターという本人のたとえも、音域だけでなく、ほかの音を受けて曲を支える働きとして考えられます。
韓国語の発音も、声を整える過程にある
2021年のGQ Koreaの取材では、韓国語の発音を学んだ過程も話しています。
最初は適応が難しく、韓国の歌を繰り返し聴いて、どう発音するかを一つずつ覚えたといいます。
メンバーの助けも受けていました。
声の低さだけでは、言葉の形までは決まりません。
どんな声色であっても、言葉をどう発音するかという別の作業が残ります。
フィリックスの録音への意識には、声の個性を生かすことと、言葉を整えることの両方がありました。
「Deep end」は、伴奏が来る前から相手に話す
「Deep end」の歌い出しについて、フィリックスは、音楽なしで相手へ話しかけるように始めたかったと説明しています。
2023年のGQ Koreaで語った、本人のアイデアです。
収録情報は、『SKZ-REPLAY』の公式作品ページに掲載されています。
話す調子にもメロディーはあるとしながら、本当に誰かへ語る感じを求めていました。
この説明を手がかりにすると、歌い出しの言葉と、伴奏が加わる前後を分けて確かめられます。
どの言葉から、聴き手へ話が始まったと感じるか。
音の高さだけを追う時とは違う、声と相手との距離に気づく聴き方です。
歌い出しを一人の言葉として置くことも、曲の聞こえ方を作る判断になります。
フィリックスは、自分の声をどんな伴奏と組み合わせ、どの順序で届けるかまで含めて、歌の入り口を選んでいました。
本人は、その始まりを、再会した友人に近況を尋ねる場面になぞらえてもいます。
相手とよい時間を過ごした場合でも、うまくいかずに別れた場合でも、顔を合わせればまず声をかける。
大きく感情を説明する前に、日常のやりとりから歌を始めたかったのです。
その背景を知ると、歌い出しの声を、単に静かな導入としてだけ受け取らずに済みます。
どんな相手に向けた言葉なのかを思い浮かべると、伴奏のない時間にも、二人の関係を感じながら聴けます。
「Unfair」は、多彩な声を一つの感情につなぐ

画像出典:写真掲載元
「Unfair」では、曲の中で声を動かすこと自体が課題になりました。
2025年のEsquire Koreaで、聞き手は、一つの曲をダイナミックな声で満たしている点に驚いたと伝えています。
フィリックスも、展開に動きのある曲を好む一方、多彩であっても自然に聞こえなければならず、かなり練習したと応じました。
この曲には『美女と野獣』が背景にあります。
本人は映画を見直し、自分が野獣だったら何をするか、ベルはどんな存在なのかを想像したと話しています。
物語の人物へ気持ちを重ね、自分の表現で語ってみるという取り組みでした。
声の変化を、珍しい音を次々に出す技としてだけ聴く必要はありません。
どの声が、物語のどんな気持ちを運んでいるのか。
本人が多彩さと自然さの両方を求めたことを踏まえると、一つの感情が形を変えながら続く歌としても捉えられます。
「Deep end」の近況を尋ねる歌い出しと、「Unfair」の人物へ入り込む表現。
どちらも、声を聞かせる前に、誰が誰に何を伝えるのかが考えられています。
低い声を中心にした印象を保ちながら、相手との関係に応じて表情を選ぶところに面白さがあります。
「ReawakeR」は、相手と違う声だから役割が生まれる
LiSAとの「ReawakeR」では、自分の声だけを聴く時とは別の見方ができます。
LiSAはBillboard JAPANで、自分の高音とフィリックスの低音の対照を挙げました。
また、隣で一緒に戦うボーカルがいるような安心感もあったと話しています。
高さも歌の担い方も異なる声が並ぶことで、それぞれの役割が際立っています。
フィリックスの低音を考える時には、どこまで低く出せるかに加え、その声の前後に誰が歌っているかも手がかりになります。
その違いは、具体的なパートの置き方にも表れています。
アニメイトタイムズの取材でLiSAが説明した構成では、1番のAメロをLiSA、Bメロをフィリックスが担い、2番ではフィリックスがAメロを歌います。
決まった場所に低音が一度現れるだけでなく、歌い手の担当を入れ替えて、同じ曲の中で別の関係を作っているのです。
LiSAは、短いアニメのオープニングでも、共演だと伝わる形で彼の声を聞かせたいと考え、ラップを入れるよう澤野弘之へ頼んでいました。
フィリックスの声を、曲の外側から添える飾りとして扱ってはいません。
限られた長さの中でも、曲の性格を決める声として必要とされていました。
この曲を聴くなら、1番と2番のAメロへ戻り、担当が変わることで言葉の流れがどう感じられるかを比べられます。
高音と低音の差に注目した後、声が受け渡されるタイミングにも耳を向けると、共演の仕組みがより分かります。
なお、LiSAによると、二人の録音は別々に行われました。
隣で同時に歌ったから生まれた一体感というより、それぞれの声を曲の中でどうつなぐかによって作られたものです。
低音の存在感は、声色そのものと、ほかの歌との組み合わせの両方から考えられます。
曲に合う声色を探し、発音を整え、話しかける歌い出しを選び、共演者との違いを生かす。
低い声の印象の奥には、声をどう曲へ置くかという歌い手の判断があります。
ソロ曲と共演を通じて、その役割が広がった歩みは、フィリックス/Felixの歌唱変遷でたどっています。







コメント