與那城奨の声は、デビューした頃から仲間にうらやましがられていました。
河野純喜が2020年の取材で語ったのは、どの曲でも本人だと分かる声の個性と、低音の深みです。
ところが與那城自身は、その同じ取材で、JO1になってから歌い方を変えたと話しています。
すでに個性があるのに、なぜ変えるのか。
その後の歩みを見ると、仲間の声になじむ歌い方と、一人で自分の思いを伝える歌い方を、少しずつ使い分ける姿が浮かびます。
ソロ曲「約束」までたどると、弾き語りをしていた青年が、グループの中で何を育ててきたのかが見えてきます。
「約束」PLANJ・オリジナル映像(2025年)。
2020年、すでにある「自分の声」をJO1の中へなじませる
デビューシングル『PROTOSTAR』の「無限大」は、JO1としての出発点です。
與那城には、その前から積み上げた歌の好みがありました。
德永英明による「ハナミズキ」のカバーをラジオで聴き、声にひかれてほかのカバー歌手も探すようになり、やがて玉置浩二の歌い方を学んだといいます。
「無限大(INFINITY)」公式MV(2020年)。
2020年8月の本人取材では、JO1に入って歌い方を変えた一方、それまでの歌い方とも使い分けたいという考えを明かしています。
新しいグループの歌を覚えながら、好きで身につけてきた歌い方も持ち続けていたわけです。
その変化を試す場には、韓国の作曲家と遠隔で進めた2ndシングルの録音もありました。
作曲家からメンバーの上達を伝えられた時、與那城は、それまでの練習が間違っていなかったと思えたと振り返っています。
河野が認める声の個性がありながら、グループとしての練習を作品に結びつけ、その手応えを確かめていた時期です。

画像出典:画像掲載元
この年の11月、1stアルバム『The STAR』を評した高橋梓は、與那城の声がほかのメンバーの声と溶け合うようになったことに注目しました。
デビュー作ではすぐに本人だと分かった声が、アルバムでは一度で聞き分けられないほどなじみ、ソロの部分では歌い方を変えて個性を示すという評です。
本人が語った変更を、その年の作品から受け止めた見方として興味深いところです。
一人の歌手としての特徴を持ちながら、全員で一つの曲を作るときには声の見せ方を変える。
デビュー年の変化は、すでにそこへ向かっていました。
明るい「Shine A Light」から大人びた「Safety Zone」までを収めたアルバムで、声の個性と全体のまとまりを両立させる力が評価されていました。
「Shine A Light」公式MV(2020年)。
仲間と歌う言葉を書き、二人の声の組み合わせを考える
実は、歌う言葉を自分で選ぶ活動も、デビュー年に始まっていました。
2020年の2ndシングルに入った「My Friends」には、與那城が作詞で参加しています。
JO1に選ばれた後、オーディションでの経験や出会った人たちへの思いを形に残したくなり、1stシングルを録音していた韓国で、書いた歌詞を曲にできないか相談したそうです。
グループの曲になじむ歌い方を学ぶ一方で、そのグループが歌う内容にも自分の経験を加えていた。
後のソロ曲「約束」へ向かう歩みを考えると、声と同時に、言葉を届ける側にもなっていたことが見逃せません。
「My Friends」公式映像・JAM’s Day Edition(2020年)。
二人の声を組み合わせる時にも、出来上がった担当部分を歌うだけではありません。
2022年2月、河野と「LA・LA・LA LOVE SONG」をテレビでカバーする際は、歌詞を見ながら二人で歌い、どこを担当するか決めていきました。
與那城によれば、歌って聴き直すうちに、最初とは逆の割り振りがよいという結論になったそうです。

画像出典:WEBザテレビジョン
練習には豆原一成にも聴き手として加わってもらい、二人で歌った時の雰囲気を確かめていました。
自分の声の良さを知ることに加え、相手と並べた時にどう聞こえるかを考える。
デビュー時に語った歌い方の使い分けは、こうした歌の組み立てにもつながっています。
2023年、ひとりで歌う「PLANJ」という場所ができる
グループの曲では、自分に渡されるパートや、曲のジャンルには限りがあります。
そうした中で、自分たちの色を出して自由に挑戦する企画として始まったのが、個人コンテンツの「PLANJ」でした。
與那城は後年の取材で、カバーからオリジナル曲へ挑戦が広がり、メンバーの歌い方や表現する力も広がったと振り返っています。
2023年には、エルトン・ジョンの「Your Song」を一人でカバーした映像を公開しました。
短い担当部分で声を印象づけるグループ曲から、一人の声で曲を届ける場へ。
カバーを入り口に歌の好みを広げてきた與那城にとって、自分がどんな歌を届けたいかを形にできる場所ができたのです。
「Your Song」PLANJ・ソロカバー映像(2023年)。
2025年、「約束」で歌う言葉が自分の歩みと重なる
2025年1月28日のソロ公演「Day by day」では、一人の歌い手として届けたい音楽を、選曲から見せました。
JO1のユニット曲「Lied to you」を自らカバーして始め、ギターを手にスキマスイッチの「藍」も歌っています。
河野を迎えたデュエットも含め、グループで育ててきた歌と、個人として好きな歌を一つの公演に並べたのです。
公演名には、日々をあまり気負いすぎずに過ごせたら、という思いを込めたと話しています。
その最後に披露したのが「約束」でした。
與那城は、大学生の頃にアルバイトとオーディションを重ね、なかなか芽が出なかった時期の思いを曲にしたくて、歌詞を書いたと説明しています。
カバーで自分の好きな音楽を伝えるところから、自分にしか書けない経験を歌うところへ。
この曲では、歌詞の向こうにいる人物と、目の前で歌う與那城の歩みが重なります。
聴き手にとっても、深い声の持ち主という印象に、その声で何を伝えたいのかという物語が加わる曲です。
「約束」の映像は同年9月に「PLANJ」で公開され、11月には音楽配信も始まりました。
映像では本人もディレクションに加わり、夢を追っていた頃の姿を物語として描きました。
「My Friends」で出会った人たちへの思いをグループの歌にしていた青年が、今度は、夢がかなう前後の自分を一曲で伝える。
同じ自作の言葉でも、誰の立場で何を歌うかが、より個人の歩みへと近づいています。
「ひらく」で、弾き語りの原点がJO1の歌になる
同じ2025年には、秦基博が作詞・作曲した「ひらく」が、JO1の曲として発表されました。
歌手を目指して沖縄から東京へ出てきた與那城は、路上やライブハウスで弾き語りをしていた頃、秦の曲もカバーしていたそうです。
「ひらく」を初めて聴いたときには、その時代を思い出し、二度目でようやく曲を聴けたと振り返っています。

画像出典:画像掲載元
テンポもキーもテンションも高い曲が多かったJO1に対し、「ひらく」は歌詞と音楽を聴かせる曲。
與那城は、自分たちがやりたかったものをやっと見せられるという手応えを語りました。
秦は完成した歌から、與那城の表現の余裕や、聴き手が余白を感じられる声を受け取っています。
「ひらく」公式公開音源(2025年)。
自分の好きな歌を弾き語りしていた時間が、今度は仲間と歌う曲の中へつながる。
デビュー時に学んだ、声を全体になじませる歌い方も、一人で曲を届けてきた経験も、その両方が生きる場所です。
與那城の変遷は、声の個性をどこでどう見せるかという選択の積み重ねとしてたどれます。
全員の声をつなぐとき、自分の過去を歌うとき、憧れの人が書いた言葉を仲間と届けるとき。
歌う立場が増えたことで、もともとあった声の深みに、聴き手が出会える場面も増えてきました。
曲の中での声の使い方は、與那城奨の歌い方で詳しく扱っています。

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