「Believe」でデビューした玉置成実は、14歳の頃から歌とダンスを結びつけてきました。
その歩みの途中には、本人が戸惑うほどの声の変化があり、舞台で役に合わせて声を変える経験がありました。
2024年の「Reborn」では、一曲の中で強さと引いた表現を使い分けています。
初期の録音から現在までをたどると、変わる声に合わせて歌い方を選び直してきた過程が見えてきます。
「Believe」公式MV(2003年のデビュー曲)。
14歳の「Believe」――踊れる少女が、録音で歌を形にするまで
玉置成実の出発点には、体を動かして人を楽しませることへの憧れがありました。
幼い頃からバレエを習い、小学生の頃にジャネット・ジャクソンのパフォーマンスに出会って、歌とダンスの両方で魅せたいと思うようになります。
2003年4月23日に発表したデビュー曲「Believe」は、『機動戦士ガンダムSEED』のオープニングテーマとなりました。
人前に出ることが好きだった彼女も、初めてのレコーディングには苦戦しました。
2007年の取材では、スタッフが何を求め、何を直そうとしているのかがつかめず、自分に苛立ったと振り返っています。
スタジオの窓にカーテンを付けてもらったこともあったそうです。
華やかなデビューの裏には、好きな歌を、他の人の意図も受け止めながら録音する難しさがありました。
それでも、自分の曲が生まれることへの期待のほうが大きかったといいます。
「Believe」は、その最初の試行錯誤を経て形になった歌でもあります。
その後、アメリカでダンスや歌のレッスンを受けた経験は、自分から表現を選ぶ姿勢につながりました。
2007年には、海外に目を向けたことで視野が広がり、自分はこういうものをやりたい、と主張できるようになったと話しています。
録音で求められることがわからなかった出発点から、自分の希望を言葉にして伝える段階へ進んでいたのです。
「Get Wild」の頃に変わった声と、舞台で増えた選択肢

画像出典:画像掲載元
声をどう出すかが、切実な課題になる時期も訪れます。
本人が転機として挙げるのは、2005年の「Get Wild」を発表した高校2年生の頃です。
2024年の取材では、その頃に声が大きく変わり、以前より太くなった一方で、高い音が出しにくくなり、低い音域が広がったと説明しています。
高いキーの持ち曲が多かったため、歌ううえで悩んだそうです。
「Get Wild」公式MV(2005年)。
この変化と向き合うなか、2006年から舞台にも取り組むようになります。
役によって異なる声の出し方を学ぶことが、自分の声を見つめ直す機会になりました。
その姿勢は、2007年の『ハイスクール・ミュージカル』の取材にも表れています。
ガブリエラ役について、自分とは違う控えめな人物だから、声のトーンを高めにして演じたいと話していました。
ここで語っているのは役作りの方針ですが、声の高さや印象を、演じる人物に合わせて選ぼうとしていたことがわかります。
自分の持ち歌を歌うことに加え、別の人物として声を作る経験が積み重なっていきました。
10周年の「Believe」――同じ曲を録り直すという節目
デビュー曲との向き合い直しは、2024年に初めて行ったことではありません。
2013年4月発売の10周年記念シングル「REAL」の通常盤には、「Believe -2013-」が収められました。
レーベルはこれを、デビュー曲の初のセルフカバーとして紹介しています。
「Believe -2013-」公式配信音源(2013年のセルフカバー)。
2003年の初録音と、その10年後の録り直し、さらに後年の一発撮りでは、曲が同じでも歌う状況が異なります。
2013年版が間にあることで、「昔の声」と「現在の声」の二つだけで分けるよりも、歌い続けた曲を節目ごとに作り直してきた歩みとして捉えられます。
2014年――親しまれたダンス曲と、深い声を使う曲の両方へ
2014年のシングル「Vivid Telepathy」では、デビューから続くダンスサウンドを、自分の強みとして改めて捉えています。
本人は当時の取材で、ロックや濃いダンス曲を歌ってきた経験も含めて、自分らしさが広がったと説明しました。
踊りながら歌うという軸を保ち、その中に違う表情を持たせようとしていた時期です。
その再確認には、学生歌手として注目された時期を過ぎ、自分には何があるのかと悩んだ経験がありました。
本人は、歌とダンスこそ自分の武器だと考え、ダンスを一から学び直したとも語っています。
「Vivid Telepathy」は、その軸へ立ち返る曲です。
一方の「Do Ya Wanna Dance」では、強気な女性像を、今なら自分と重ねて歌えると捉えていました。
同じダンス曲でも、演じる人物や曲の狙いによって声の印象を変えようとしています。
「Vivid Telepathy」公式MV試聴版(2014年・短縮版)。
同じシングルの「Do Ya Wanna Dance」は、その広がりを考える具体例になります。
本人は、表題曲と対照的な、深みのあるダンス曲として選んだと話しています。
取材で低く迫るような歌い方に触れられると、音声にかけたエフェクトによって厚みも増していると応じていました。
「Do Ya Wanna Dance」公式配信音源(2014年の「Vivid Telepathy」収録曲)。
この録音の厚さには、歌い方と制作上の処理の両方が関わっています。
表題曲ではメッセージを伝え、カップリングでは気分を高めるダンス曲を楽しんでもらう。
その対比を作るために、声と音作りの両方を使っていたといえるでしょう。
2024年の「Reborn」――一曲の中で張る声と引く声を選ぶ
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のオフィシャルサポーターソング「Reborn」は、2024年1月24日にシングルとして発売されました。
ここでは、舞台などで広げてきた声の使い方が、自分の楽曲の中にも持ち込まれています。
本人は、Aメロでは声を張ることに加え、引いた表現も意識したと説明しています。
別の取材でも、力強さに強弱や深さを加えるため、Aメロ、Bメロ、サビで少しずつ歌い方を変えたと話しました。
「Reborn」で目指したのは、曲全体を同じ勢いで押し通すことよりも、場面ごとに声の出方を選ぶ歌です。
「Reborn」公式MV(2024年発売のシングル曲)。
ここで舞台経験が生きるのは、出せる声の種類だけではありません。
本人は、役として生きる経験を重ね、歌詞の主人公になって歌うことや、際立たせたい言葉を選ぶことができるようになったと話しています。
2007年には人物に合わせて声のトーンを考えていましたが、2024年には、人物の感情をどの言葉に込めるかまで、自分の曲に持ち込んでいました。
強弱は、声の大きさを変えるためだけのものではなく、歌の中の感情を伝える選択になっています。
また、録音では作曲者やボーカルディレクターと細かく相談し、舞台では経験していても自分の楽曲では試してこなかった表現に取り組んだそうです。
初録音でスタッフの意図をつかめずにいた頃から、相談を重ねて一曲を作る歌手へ。
「Reborn」は、その変化を本人が楽しめるようになった作品でもあります。
同じ「Believe」を、今の録音に合う発声で歌う
2024年1月12日には、「THE FIRST TAKE」で「Believe」を歌いました。
2003年のスタジオ録音とは異なり、特別なバンドアレンジによる一発撮りの歌唱です。
本人は、この収録に向けて約2か月間ボイストレーニングで調整し、ライブとは違う録音の場に合った発声にも取り組んだと説明しています。
長く歌ってきた曲でも、収録の条件に合わせて準備し直していました。
「Believe」THE FIRST TAKE(2024年・特別なバンドアレンジによる一発撮り)。
演奏にも、デビュー曲とのつながりがありました。
キーボードの齋藤真也は当時の編曲者で、ギターの石井裕も初期の音源に参加していた奏者です。
本人は、長い付き合いのある演奏家たちと再びこの曲を歌えたことを喜んでいます。
曲の出発点を知る演奏家と、新しい編成で向き合う。
この歌唱には、玉置成実の歩みに加え、長く曲を支えてきた人との再会も重なっていました。
この時期には、活動の置き方も変わっていました。
舞台への出演を重ねたのち、2023年の20周年ライブを機に、音楽活動へ改めて力を注いでいます。
2024年の取材では、ダンサーと細部まで動きをそろえる練習に加え、踊りながら歌を保つために発声も学び直していると話しました。
一発撮りに向けた準備は、今後のステージで使う声を考え直す機会にもなっていたのです。
![2026年の取材での玉置成実(松島史弥[BOIL]撮影/La Voix掲載)](https://hightonelab.jp/wp-content/uploads/2026/10/nami-tamaki-evolution-late.jpg)
画像出典:画像掲載元
2026年9月公開のインタビューでも、玉置成実は、その時々の声に合う発声をレッスンで探していると話しています。
同時に、歌詞の受け止め方も変わりました。
中学生の頃は懸命に歌うことに集中していたのが、経験を重ねると、同じ歌に以前は気付かなかった哀愁を感じるようになったといいます。
声に合わせた調整と、言葉の理解の深まりが、歌い続けてきた曲に別の表情を与えています。
「Believe」で始まった歌とダンスは、声の変化や舞台経験を通り、強さ、柔らかさ、引いた響きを選べる表現へと広がってきました。
現在の発声の選び方と曲ごとの具体例は、玉置成実の歌い方で詳しく扱っています。

こちらの記事もおすすめ
![2026年の取材での玉置成実(松島史弥[BOIL]撮影/La Voix掲載)](https://hightonelab.jp/wp-content/uploads/2026/10/nami-tamaki-style-feature-160x90.jpg)
玉置成実本人の説明から、声の厚みと曲ごとの響きの選択を考えます。

同じ強烈な声が、ビジュアル系バンドのボーカル…

実際には、自分の歌い方…



コメント