「鳥の詩」で知られるLiaは、長い音を美しく伸ばす歌い方を、自分の強みとして大切にしてきました。
その一方で、録音の現場では躍動感を求められ、カバー曲では息遣いを変え、2025年の「REBORN」ではビブラートを使わない細かな音程移動にも挑んでいます。
澄んだ歌声を持つ歌手が、曲ごとに何を選び直してきたのか。
初期の録音から2026年の作品まで、その歩みをたどります。
「鳥の詩」公式配信音源(2002年の『AIR ORIGINAL SOUNDTRACK』収録)。
「鳥の詩」――アメリカで学んだ歌が、Key作品と出会う
Liaは、アメリカの音楽大学で歌を学び、卒業後にロサンゼルスへ移りました。
その土台には、小学生の頃にミュージカルへ出演し、声楽を習い始めた経験があります。
2021年の取材では、留学先で優れた学生たちに圧倒されながらも、自分の個性を生かす大切さを学んだと振り返りました。
本人が自分の持ち味として挙げたのは、素直だと評価されてきた声質です。
ロサンゼルスでデモを作っていたスタジオに、ゲームブランドKeyのビジュアルアーツから連絡が届いたことが、歌手としての出発点につながります。
当初は連絡の橋渡しをしていましたが、予定されていた歌手が来られなくなり、Liaが歌を担当することになりました。
その出会いから生まれたのが、2000年のゲーム『AIR』で使われた「鳥の詩」などの歌です。
のちにテレビアニメにも引き継がれた曲ですが、最初の出会いはゲームの制作でした。
本人が2018年の取材で振り返った録音は、歌うだけに集中できる状況ではありませんでした。
日本側のスタッフと現地のエンジニアの通訳も務め、短い日程で多くの歌を録る緊張を感じていたといいます。
そうして作った歌が、彼女の知らないところでも聴かれるようになっていきました。
最初からアニメやゲームの歌手を目指して進んできたわけではなく、音楽を学んだ自分と、作品を作る人との出会いから道が開けたのです。
クラシックをルーツに持つことも、本人が後年のカバー作品を語る際に触れています。
2008年の「時を刻む唄」――難しい拍子を、歌い重ねて身につける
『CLANNAD ~AFTER STORY~』の主題歌「時を刻む唄」は、2008年11月にシングルとして発売されました。
Liaは2015年のシンガポールでの取材で、この曲の録音を、とくに難しかった経験として挙げています。
拍子をつかみにくく、麻枝准に楽譜を書いてもらったという話でした。
譜面を見てもすぐに曲へ入れるわけではなく、慣れるまでに苦労していたのです。
「時を刻む唄」公式配信音源(2008年のシングル版)。
一方で、同じ取材では、何度も歌い、公演でも取り上げたことで、すでに自分の曲として歌いやすくなったとも話しています。
最初の録音で難しく感じたことが、歌い続けるうちに身についていく。
「時を刻む唄」の歩みには、音程の高さや声の美しさに加え、曲の時間の流れを自分の中へ取り込む過程があります。
2010年の「My Soul, Your Beats!」――美しく歌う声に、前へ進む力を
『Angel Beats!』の主題歌「My Soul, Your Beats!」では、歌に求められた具体的な方向が制作側の記録に残っています。
音楽制作を担当した村山久美子は、作詞・作曲の麻枝准が、Liaの録音で躍動感を求めて何度も録り直しを重ねたと書いています。
「My Soul, Your Beats!」公式配信音源(2010年のシングル版)。
すでに歌える人に対しても、その曲に必要な勢いや動きが細かく求められていました。
長い音を美しく聴かせることと、曲を前へ運ぶように歌うことは、同じ課題ではありません。
この録音は、Liaの声を作品の中でどう生かすかを、作り手と詰めていった例として捉えられます。
2012年の「Infini」――高い音に、言葉を乗せる難しさ

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2012年には、島みやえい子が作詞・作曲した「Infini」の録音取材で、本人が歌の難しさを具体的に話しています。
この曲は『5TEARS Vol.2』に収録され、翌2013年にサービスを始めるゲーム『三千界のアバター』の主題歌にもなりました。
Liaは、メロディを鼻歌で歌えることと、言葉を付けて高い音を歌うことには違いがあると説明しました。
そこで島みやに実際に歌ってもらい、言葉をどう旋律に合わせるかをつかんでいます。
高低差のある曲を、作った本人の歌を手がかりに形にしていったのです。
このやり取りからは、高音が出ることに加え、言葉を入れたときにも曲が自然に流れるように整える作業が見えてきます。
その場で歌って相談し、方向を確かめる柔軟さも、Liaの録音を支えていました。
2018年のカバー――原曲の声から、自分の声へ近づける
2018年の『REVIVES -Lia Sings beautiful anime songs-』では、他の歌手の代表曲に、自分の歌をどう重ねるかが課題になりました。
カバーを求める声は以前から届いていましたが、原曲への思い入れが強いファンを意識し、取り組むまでにためらいもあったそうです。
慣れ親しんだ曲を自分の声に置き換えることには、原曲の魅力を受け止めたうえで、別の表情を示す難しさがありました。
「創聖のアクエリオン」については、原曲を練習するうちにAKINOの歌い方へ寄りがちになり、自分らしくする方法を考えたと話しています。
平出悟によるアレンジを受け取り、違うアプローチを取れると思えたそうです。
「創聖のアクエリオン」Liaによるカバーの公式配信音源(2018年『REVIVES』収録)。
「魂のルフラン」でも、原曲に近い方向から、息遣いを意識した切なさのある歌い方へ変えたと説明しています。
声の持ち味を生かすために、曲への入り方や表情を選び直していた時期です。
「魂のルフラン」Liaによるカバーの公式配信音源(2018年『REVIVES』収録)。
なお、この「魂のルフラン」の録音には、Liaの声をもとにした歌声合成ソフトIAも参加しています。
本人が語った息遣いの変化と、録音全体に重なる声の作り方は、それぞれの工夫として捉えたいところです。
2021年に語った、声を整えながら歌い続ける日々
澄んだ声を保つことにも、本人なりの試行錯誤がありました。
2021年の『Hong Kong LEI』の取材では、数年前から、ある高音を歌うと声にかすれを感じるようになったと話しています。
検査で異常が見つからず、周囲に伝わりにくい違和感に悩んだという本人の経験です。
その後は、自分の変化と付き合いながら、歌う前の準備や日々の手入れを大切にしていると語りました。
同じ取材では、誰の視点で歌うかを作り手に尋ね、息遣いで切なさを加えるかどうかも、一節ずつ相談すると説明しています。
その日の声を整えることと、作品が必要とする表情を探すこと。
長く歌い続ける日々には、その両方がありました。
2025年の「REBORN」――得意な長い音から、細かく動く歌へ

画像出典:画像掲載元
2025年11月のオリジナルアルバム『SAGARIBANA』で、Liaは自分の内面に近い楽曲にも取り組みました。
全曲を書いたGOOD之介へは、歌を始めた頃のことなど、本人がスタッフに話した内容が制作の材料として伝えられています。
作品の登場人物に寄り添ってきた歌手が、自分の経験を背景にした曲へ向き合う機会になりました。
最初に試した「僕と二つの世界」も、デモを受け取った段階では、自分が歌う曲としてしっくりこなかったそうです。
ところが実際に声を重ねると、自分にはこうした歌も合うと気付きました。
曲を受け取ったときの戸惑いが、録音によって新しい可能性へ変わっていきます。
「僕と二つの世界」公式配信音源(2025年『SAGARIBANA』収録)。
とくに「REBORN」は、本人が新しい歌い方を発見した曲です。
それまで得意としてきたのは、長く伸ばした音にビブラートを生かす歌でした。
「REBORN」のサビでは、音を揺らさず細かく音程を動かす表現が求められ、本人にとって慣れない方向だったといいます。
繰り返し歌ううちに、その表現も自分らしく歌えると感じるようになりました。
「REBORN」公式配信音源(2025年『SAGARIBANA』収録)。
「時を刻む唄」で難しい拍子に慣れていった経験にも通じますが、最初に歌いにくいと感じた曲が、そのまま自分に合わない曲になるわけではありません。
繰り返し声に出すことで、得意な響きとは違う方法にも、自分らしさを見いだしていました。
2026年の「雨宿りの憧憬」へ、澄んだ声を持って進む
2026年9月には、『いびってこない義母と義姉』のオープニングテーマ「雨宿りの憧憬」を、フルサイズで収めたシングルCDを発売しています。
発売時の紹介では、軽やかなアコースティックギターを伴うミディアム曲と、Liaの透明感のある歌声が特徴として挙げられました。
「雨宿りの憧憬」公式配信音源(2026年9月発売のフルサイズ)。
「鳥の詩」から続く澄んだ声の印象は、その後の作品にもつながっています。
その声をどう届けるかには、録音で求められた勢い、言葉の乗せ方、息遣い、ビブラートの選択が積み重なってきました。
Liaの歩みは、持ち味のある声と、作品に合わせて変える歌い方の両方からたどることができます。
長い音や息遣いをどう選んでいるのかは、Liaの歌い方で具体例とともに扱っています。

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