Raychell(RAISE A SUILEN)の歌声はどう変わった?R&Bからロックへ、声の選び方を広げた歩み

Raychell(2022年のSPICEインタビュー掲載写真) Raychell
Raychell(2022年のSPICEインタビュー掲載写真)

力強い歌とベースでバンドを引っ張るRaychell(RAISE A SUILEN)は、もともとマイク一本でR&Bやバラードを歌うシンガーでした。
ロックに向き合い始めた頃には、ベースを持つことも新しい経験だったといいます。

そこから歌の幅を広げるきっかけになったのは、バンドの仲間や、演じるキャラクター、録音の現場で求められる新しい表現でした。
強い声に加え、細かな表情や言葉の響きまで選び直してきた歩みをたどります。

「Drown Out the Noise and Push Through the Trash」公式ミュージックビデオ(2025年)。

2010〜2017年|R&Bを歌っていたソロシンガーが、ロックとベースに向き合う

Raychellは2010年にLayとしてメジャーデビューし、2013年に現在の名前へ改名しました。
もともと歌っていたのは、R&Bやバラードです。
2019年のラジオでは、当初はマイク一本で歌うシンガーとして活動し、ロックを本格的に歌うようになったのは比較的最近だったと振り返っています。

Raychell(avex公式プロフィール掲載写真)
Raychell(avex公式プロフィール掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

そこへ至る道は、本人の得意な歌だけを続けるものではありませんでした。
2020年の回想では、バラードでの活動が思うように広がらず、ダンスミュージックへ転じた時期にも触れています。
しっとり歌ってきた自分が踊る姿を想像できず、やりたいことと求められるものの違いに戸惑いながら、ダンスや歌のレッスンへ通っていました。

ベースを手にするきっかけになったのは、「Are you ready to FIGHT」でした。
ロック調の曲を担当することになり、本人の記憶では2016年頃からベースも持ち始めたといいます。
同曲を収めたアルバムは、2017年に発表されました。

「Are you ready to FIGHT」公式映像(2017年発表曲、2018年投稿)。

ソロの歌には柔らかな歌い回しもあると、小原莉子は話しています。
ソロでの歌を重ねる一方、ロックとベースボーカルという新しい形にも向き合うようになっていきました。
ラジオの司会者には、長年ロックのベースボーカルを務めてきた人のように見えていたそうですが、Raychell自身が挙げた支えはメンバーの存在でした。
堂々と見えるステージの内側には緊張もあり、仲間と一緒に新しい歌の形を作っていたのです。

2018〜2020年|レイヤを演じる経験が、歌の声にも入ってくる

2018年には、RAISE A SUILENとしての活動が始まります。
このバンドは、リアルな演奏活動が先にあり、その後にキャラクターが加わったという成り立ちを持っています。
Raychellはベースとボーカルに加え、レイヤの声も担当することになりました。

レイヤは何でも歌いこなせるプロとして描かれる人物です。
一方、Raychellには、当初まだアニソンやロックをあまり歌ってこなかったという意識がありました。
参加をきっかけにそれらをよく聴くようになり、役に負けないよう、楽曲を手掛けるElements Gardenの制作陣と歌を磨いていきます。
レイヤならどう歌うか、仲間との掛け合いや歌詞をどう表すかも考えるようになりました。

2020年の取材では、アフレコで学んだ声の出し方を、歌にも取り入れたと話しています。
声の高低や張り方を考えながら演じ、歌では音の抜き方なども学んでいきました。
本人も、RASの初期から歌い方が変わってきたと捉えています。
映画や舞台などの演技経験があっても、声だけで人物を表すことは難しかったといいます。
歌い慣れた声を使う仕事にも、学び直す部分があったのです。

同年の「Sacred world」は、その時期に広がっていた歌の表現を具体的に語れる曲です。
Raychellによると、ファルセットを細かく使い、ブレスも多く取り入れた歌になっていました。
強さに加え、美しさや繊細さもある曲に向き合ったと説明しています。
この曲は『アサルトリリィ BOUQUET』の主題歌で、自分も作品の戦士の一人であるような気持ちで歌ったそうです。
ライブで初めて披露した時には、特に神経を使った曲として挙げていました。

「Sacred world」公式配信音源(2020年のシングル収録版)。

声を強く出す場面と、細かな表情を付ける場面。
曲の求めるものに合わせて、その両方を使う歌へと、表現が広がっていました。

2022年|「CORUSCATE -DNA-」で、それまでと違うハイトーンを使う

2022年にシングルとして発表された「CORUSCATE -DNA-」について、Raychellは、それまでのRASでは使っていなかったようなハイトーンを使ったと話しています。
歌い方にも、従来とは違う面が出た曲でした。

「CORUSCATE -DNA-」公式配信音源(2022年のシングル収録版)。

本人は、この曲の音がバンドの生演奏になると、想像以上に迫力を増したことも話しています。
録音で作った歌を、メンバーが鳴らす音の中へ置き直す楽しみがありました。
「Sacred world」で細かな表情を加え、「CORUSCATE -DNA-」では新しい高さを使う。
同じバンドでも、曲の要求に応じて声の見せ方が変わっています。

2022年発表の「Big Wave」|別企画の録音で見つけた、英語に合う声

同年のソロアルバム『DON'T GIVE UP!』には、全英詞の「Big Wave」が収録されました。
もともとは別のゲームのために作られ、録音も済んでいましたが、コロナ禍で発表がなくなってしまった曲です。
Raychellは気に入ったこの歌を眠らせたくないとスタッフへ繰り返し伝え、アルバムに収録できることになりました。
2022年は、その録音をようやく届けられた年でもあります。

Raychellはこの曲の制作を振り返り、ミックスを使って張る歌い方を多く取り入れたと説明しています。
英語の韻や言葉の柔らかさが出しやすくなり、新しい発見になったというのです。

声を張ることにも、言葉によって合う方法が違う。
全英詞の曲に向き合った経験が、ロックを歌う選択肢を増やしていました。
本人は、この曲ならこれまでと違う歌も届けられると感じたそうです。
発表を諦められなかった背景には、曲への愛着とともに、歌い手として得た手応えもありました。

「Big Wave」公式配信音源(2022年、ソロアルバム『DON'T GIVE UP!』収録)。

2025年|「Drown Out the Noise and Push Through the Trash」で、高いキーに再び挑む

Raychell(2025年のリアルサウンド取材写真/撮影:はぎひさこ)
Raychell(2025年のリアルサウンド取材写真/撮影:はぎひさこ)。
画像出典:画像掲載元

2025年には、Fear, and Loathing in Las Vegasから2曲目の提供曲となる「Drown Out the Noise and Push Through the Trash」を発表しました。
最初の提供曲「Repaint」は2022年に配信され、全英詞に苦労しながらも、ライブの歓声を呼ぶ曲へ育っていたと振り返っています。
新しい提供曲は、その経験の先に来た、さらに難しい課題でした。

「Repaint」公式アニメーションMV(2022年、RAISE A SUILEN歌唱版)。

2曲目は、提供元のボーカル、Soに合わせた高いキーだったため、録音前には、高さに対応できそうかを確認されたといいます。
難しければメロディーを変える案もありましたが、結果として、変更せずに録音したと話しています。

本人が注目してほしいと挙げたのも、最後のサビの高いキーです。
その勢いが曲に合っていると感じていたからこそ、元のメロディーで届けたかったと話しています。

同曲では、Raychellの歌い出しに続き、ほかのメンバーの歌やチュチュのラップが入る構成にも新鮮さを感じていました。
自分の高い声を届けることと、仲間の声を交えて曲を届けることが、同時に進んでいます。

「CORUSCATE -DNA-」で使ったハイトーンも、「Big Wave」のミックスも、曲から求められたものに応える中で選んだ声でした。
仲間に支えられてロックへ踏み出し、役の演技や録音のやりとりで、自分の歌を少しずつ広げてきたのです。

ミックスやファルセット、声を切り替える準備の具体的な話は、Raychellの歌い方で取り上げています。

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