寺西拓人(timelesz)の歌唱の変遷|役を生きる歌から、自分を出す歌へ

寺西拓人(2025年の「美的」掲載写真) シンガー
寺西拓人(2025年の「美的」掲載写真)

舞台のソロ歌唱で、予想していなかった強い緊張を知った寺西拓人。
その後、timeleszの一員として初めてのツアーを終えたときには、客席の景色を「絶景」と表しました。
その間に、役を生きる歌から、自分を見せる歌へ、どんな課題が加わったのでしょうか。
本人の言葉と具体的な公演をたどります。

Rock this Party — 2025年のシングル音源

一人で歌い切るときに知った緊張

2021年の『マイ・フェア・レディ』で、寺西はヒロインに恋をする青年フレディを演じました。
11月下旬の東京公演を観た中山優馬に明かしたのは、劇中のソロ歌唱で感じた強い緊張です。
稽古ではそれほど意識していなかったのに、本番で一人で歌い切るときには、自分がこんなにも緊張するのかと驚いたと話しています。

練習した歌を劇場で届ける段階になって、自分でも予想していなかった気持ちが現れる。
舞台経験があっても、初めて向き合う役や歌唱場面には、別の難しさがありました。

中山は実際に聴いた歌の感想を伝え、課題や緊張への向き合い方も助言しています。
寺西は、一つの作品についてこれほど詳しく感想をもらえたことや、先輩の考えを聞けたことを喜んでいました。
歌い終えたあとに他者の目を通して舞台を振り返る時間も、この経験の一部だったのです。

中山優馬と寺西拓人(『マイ・フェア・レディ』に関する2021年の取材)。
中山優馬と寺西拓人(『マイ・フェア・レディ』に関する2021年の取材)。
画像出典:TV LIFE

複数の役を切り替える歌から、一人の人生を生きる歌へ

2023年の『ロジャース/ハート』では、2018年の初演から役が変わり、作曲家のロジャースを演じています。
初演で複数の役を担ったときは、場面ごとに切り替える瞬発力が大切でした。
再演では一人の人物の人生を生きるため、芝居をより深めたいと考えていました。

この5年で、寺西自身がミュージカルに感じる魅力も大きくなっています。
言葉だけでは届かないものが、音楽によって伝わる。
作品に出演するたびに、その良さを感じるようになったと語っていました。

再演の舞台は、台詞が少なく、39曲のナンバーで人物の思いや時代をつないでいく構成です。
東京のゲネプロを取材した演劇ライターの宮崎新之は、成功を祝うパーティーの場面でも、それぞれの恋心が音楽とハーモニーで交錯する様子を伝えています。
歌は物語の途中に挟まる見せ場であると同時に、登場人物の関係を進めるものでもありました。

寺西も開幕時の取材で、多くの曲を通してストーリーを展開する難しさを挙げています。
一曲ごとに歌い切るだけでなく、曲から曲へ、同じ人物の歩みをつないでいく。
役が変わったことで、歌をどう物語の中に置くかという課題も、より具体的になっていました。

ロジャース/ハート — 2023年公演の開幕スポット映像

林翔太・寺西拓人(2023年「ローチケ演劇宣言!」掲載写真)
林翔太・寺西拓人(2023年「ローチケ演劇宣言!」掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

「SWEET」で、これまでのイメージから離れてみる

舞台で役を生きる経験を重ねながら、歌って踊るアイドルへの思いも残っていました。
「timelesz project」のオーディションに参加した理由を、寺西は、芝居をやりたい気持ちも本当だが、アイドルとしても活動したく、自分に言い訳をしたくなかったからだと説明しています。

5次審査の課題曲「SWEET」では、可愛らしいアイドルの表現に取り組みました。
本人にとっては、周囲が持つ自分のイメージから離れていて、どう表現するか想像がつかない曲です。
それでも役者としての経験から、挑戦できる部分はあるのではないかと考えていました。

中間発表で菊池風磨が評価したのは、その寺西でした。
難しいと思っていた寺西が最もできていて、楽しそうだったと話しています。
慣れた印象を守るよりも、役に向き合うように新しい表現へ入っていく。
舞台で培った経験が、アイドルとしての見せ方を広げる場面になりました。

加入後には、「SWEET」は8人による録音で『FAM』にも収められています。

SWEET — 加入後の8人による『FAM』(2025年)収録音源

役の個性と、寺西自身の個性

加入後、2025年のアルバム『FAM』の録音時期には、別の戸惑いも生まれています。
前のパートで原嘉孝が歌うラップに感心し、その勢いに合わせて歌ったところ、スタッフから自分らしくない歌い方だと指摘されたのです。

寺西は、舞台とグループのライブを別のものとして捉えていました。
役によって自分の個性を抑えることもある舞台に対し、timeleszでは、グループの中の自分と、個人としての自分の両方を示すことになります。
録音での指摘には、その違いも表れていました。

timeleszで初めてのツアーを終えて

2025年の「We’re timelesz LIVE TOUR 2025 episode1〜FAM〜」を振り返った寺西は、達成感の大きさを語っています。
オーディションを通してファンになった人たちと、ライブという特別な場所で会えた。
目の前に広がった景色を、本人は「絶景」と表しました。

そこへ至る準備は、舞台の仕事との両立でもありました。
以前から決まっていた舞台出演にグループの活動が加わり、自分だけライブのリハーサルへ行けないことも、逆に舞台の稽古へ参加できないこともあったと明かしています。
その状況を支えてくれたスタッフへの感謝も、ツアー後の言葉に含まれていました。

2021年には、一人で歌う自分の緊張に驚いていた寺西が、2025年には、自分たちを応援する客席と出会った喜びを語っている。
歌う場所と届ける相手が増え、ステージを終えたときに持ち帰る実感も広がっています。

「half & half」では、二人の経験を曲にする

2026年には、菊池とのユニット曲「half & half」で楽曲制作にも参加しました。
作詞は二人、作曲はtofubeatsと二人の共作で、『MOMENTUM』に収められています。
同期の二人がルーツを巡った体験から生まれたこの曲では、自分たちの経験も歌の出発点になりました。

その曲をライブで届けるときには、共に作った相手がいない場面にも向き合っています。
菊池が不在だった公演について、寺西は、MVの未使用カットや菊池が歌う場面の映像を使い、その存在を感じられる演出にしたと説明しました。
一人で出演する日にも、二人の曲として届けようとしたのです。

本人は、菊池の不在によって他のメンバーの役割が少しずつ変わり、普段は見えなかった動きに気付いたことも語っています。
自分をどう出すかという加入当初の課題に、仲間の存在をどう伝えるか、という視点が加わっていました。

half & half — 菊池風磨・寺西拓人のユニット曲。
『MOMENTUM』(2026年)収録音源で、本文の菊池不在公演とは異なります。

役の人生を歌でつなぎ、慣れないアイドル像に挑み、自分たちの経験を曲にする。
寺西の歩みを通して変わってきたのは、歌の中で誰を表し、客席へ何を届けるかという選択です。
曲の中で声や言葉をどう使うかは、寺西拓人(timelesz)の歌い方で取り上げています。

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