ユキナ(花冷え。)の歌い方|日本語をシャウトに乗せる工夫と、録音に持ち込むライブの力

花冷え。(2023年の「BARKS」掲載写真/前列中央がユキナ) シンガー
花冷え。(2023年の「BARKS」掲載写真/前列中央がユキナ)

ユキナのシャウトと、マツリのクリーンな歌声が組み合わさる花冷え。
ユキナ自身の歌い方を考える時には、日本語をどう叫びに乗せるかが、具体的な手がかりになります。
言葉の響き、曲の中での役割、録音時の気持ち。
本人とメンバーの取材から、その選択をたどります。

『来世は偉人!』(2023年)収録の「TOUSOU」のミュージックビデオ。

普通に歌う時と、シャウトする時の言葉の違い

2023年の「Rolling Stone Japan」の取材で、ユキナは、普通のトーンで歌えば語呂が合うのに、シャウトすると聞き取りにくくなることがあると話しています。
日本語には出しにくい言葉もあり、勢いを出したいところで思うように出ないなど、試行錯誤していました。

2025年の「BARKS」の取材では、日本語の言葉を崩し、子音のような響きにして遊ぶ方法も語っています。
本人にとって、英詞は子音を出しやすいと感じるもの。
日本語でも音の形を変えながら、シャウトに乗せていました。
歌詞を読んだ時に、どんな言葉を歌っていたのかが分かる面白さも挙げています。

言葉の意味とともに、叫んだ時の響きも選ぶ。
ユキナの日本語のシャウトには、そんな工夫があります。

自分のパートの言葉を、自分で声にしていく

シャウトに合う言葉を探す作業は、歌詞を渡されてから始まるわけではありません。
2024年の「STREAM」の取材でユキナは、自分が歌うシャウトなどの部分は自分で書き、マツリが歌う部分はマツリが書くと説明しています。
2人とも歌い手であると同時に、自分のパートの言葉を作る人でもあるのです。

まずマツリが楽曲の土台を用意し、ユキナが歌詞のテーマを提案する場合もあれば、曲から相手の意図をくみ取る場合もあります。
別々に用意した詞を制作の場へ持ち寄り、最後は一緒に練り上げるという進め方です。
自分が発する音を自分で考えつつ、もう一人の声が入った時の曲全体へ戻って確かめていきます。

この作り方を知ると、シャウトとクリーンな歌が切り替わるところも、単なる声の強弱とは違って見えてきます。
それぞれが選んだ言葉と歌い方を持ち寄り、同じ曲の中で接続しているからです。
言葉が詰まる部分とメロディが開ける部分の関係にも、耳を向けたくなります。

「TOUSOU」は、2人の声で追いかけっこを作る

『来世は偉人!』(2023年)収録の「TOUSOU」について、マツリは、シャウトが警察側、クリーンな歌が逃げる側になり、追いかけっこをする曲だと説明しています。
ユキナのシャウトとマツリの歌の違いが、曲の中の役割にも結びついているのです。

激しい声とメロディを歌う声を、ただ交互に置くだけでなく、登場する役の違いとしても使う。
2人の声で一つの場面を作る、このバンドの歌の面白さが表れています。

花冷え。(2025年の「BARKS」掲載写真/前列中央がユキナ)
花冷え。
(2025年の「BARKS」掲載写真/前列中央がユキナ)。
画像出典:画像掲載元

スタンドを握り、ライブの力を録音へ持ち込む

ユキナは、気持ちを強く込めて叫びたい時、レコーディングでもマイクスタンドの棒を握って歌うと話しています。
ライブでマイクを持つ時の力を、録音でも出したいからです。
マツリも、スタンドの有無でテイクの印象が変わると語っています。

これは、ユキナが録音で選ぶ、自分の気持ちを歌へ向ける方法です。
言葉の音をどう変えるかに加え、どんな状態でその声を録るかも大切にしていました。

録った声を選び抜く姿勢は、初の全国流通盤『開花宣言』(2018年)の制作にも見られます。
「激ロック」の座談会で、プロデューサーの田浦楽は、それまで時間や予算のために満足できるテイクを残せなかったこともあっただろうと振り返り、今回は納得するまで録ってもらったと説明しました。
勢いが出た一回で必ず完成する、という録音ではありません。

マツリによれば、この時はライブと録音が続く中、最後にシャウトのパートを録ったユキナが特に緊張感を保っていました。
迫力ある声にも、繰り返し試し、作品として残す声を決める過程があります。
スタンドを握る工夫も、そうした録音の場で、ライブの時に出せる力をどう呼び戻すかという具体的な選択として受け取れます。

声に表情と動きを重ね、曲の場面を作る

ライブでは、ユキナは声を出す自分の姿も表現に使います。
2024年の「Billboard JAPAN」の取材では、JINJERらとのアメリカツアーで、ショーを見るような相手のステージに刺激を受けたと話しました。
自分も表情や身振りを意識し、曲の雰囲気を作るようになったというのです。

そこで考えたのは、決まった箇所でジャンプやヘッドバンギングをするだけの動きから、一歩進むことでした。
音に合わせて体を動かし、客席と同じ雰囲気を作りたい。
幼い頃に習ったバレエの感覚をツアーの休日に思い出し、ステージへ取り入れたとも語っています。

この話は、動けば特定の声が出るという発声法の説明ではありません。
同じシャウトでも、どのような表情で、どちらへ向かって届けるかという、舞台上の表現についての話です。
「TOUSOU」で声の役を分ける作り方と同じく、ユキナは激しい音の中にも場面や登場人物を作ろうとしています。
歌声だけを取り出した時の迫力に加え、曲の世界を目の前で演じる面があります。

自分の叫びを、客席も参加できる声へ

声の届け先については、2026年の「Billboard JAPAN」のインタビューにも具体的な話があります。
海外では、観客が日本語で一緒に歌い、自分のラップと同じ速さで口を動かすこともあると、ユキナは驚きを交えて語っています。
歌詞の言語が違っても、声を重ねる時間は共有できる。
そのことをファンから教わったと受け止めていました。

MCでは英語を基本に、その国の言葉にも挑戦するといいます。
話す時には相手の言葉へ近づき、歌では日本語の速いフレーズも一緒に楽しんでもらうという交流です。

『HOT TOPIC』収録の「ICONIC」には、日常で疲れた人にも一緒に叫んでもらいたいという思いを込めています。
自分たちにしかできないことを目指す気持ちに加え、聴く人へ何かを返したいという意識が強まったとも話しました。
ここでのシャウトは、自分の強さを提示するだけでなく、聴き手が気持ちを解放するための声でもあるのです。

発しやすい言葉を選び、2人の声に役割を与え、録音では納得できる勢いを探す。
その一つひとつの工夫が、ライブでは観客も声を出したくなる場につながります。
ユキナの歌を追う面白さは、叫びの激しさと、人が参加できる親しみやすさを同じ曲の中でどう成立させるかにもあります。

シャウトを探った出発点から、ラップやアニメ風の声を加えていった歩みは、ユキナの歌唱変遷でたどっています。

シンガー人気投票。投票ページはこちら

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました