レイヴェイの歌声の変遷|低い声の居場所を見つけ、語りとスキャットを自分の歌へ

レイヴェイ(2021年掲載の写真) シンガー
レイヴェイ(2021年掲載の写真)

レイヴェイは、歌い始めた頃の自分の声を、低い声だったと振り返っています。
その声を重ねられる歌手に出会っても、初めから迷いなく自分の音楽を作れたわけではありません。
最初のアルバムでは、ジャズやクラシックの要素を強く出すと、若い聴き手に届きにくいのではないかと考えていました。
声の手本を見つけるところから、自分の感情を歌にし、その音楽的な背景も受け入れていくまでをたどります。

レイヴェイ「From The Start」(2023年)のMV。

低い声に、自分を重ねられる歌手との出会い

2021年の取材でレイヴェイは、当時のポップ歌手には高く軽やかな声が多く、自分の低い声を重ねにくかったと話しています。
そこで親近感を覚えたのが、エラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリデイの、深く豊かな声でした。

クラシック音楽を聴き、チェロを弾いて育った自分にとって、その歌はなじみがありながら、新しいものでもあったと振り返っています。
エラの歌声をチェロのようだと感じたことも、声と楽器の両方を身近にしてきたレイヴェイらしい受け止め方です。
自分の声を重ねられる歌を見つけたことが、ジャズを歌うことにつながっていきました。

幼い頃の音楽は、彼女にとって学校の授業にも似たものでした。
放課後に帰宅し、楽器を練習する日々の中で、歌は少し違う意味を持ちます。
2022年の取材では、13歳か14歳頃に歌い始め、自分を表現する方法だと感じたこと、歌うことが自然に思えたことを振り返っています。

レイヴェイ(2021年掲載の写真)
レイヴェイ(2021年掲載の写真)。
画像出典:画像掲載元

「Street by Street」で、つらい気持ちを自分の歌にする

2020年のデビュー曲「Street by Street」には、大学に入ってからの失恋が関わっています。
2025年に初めての曲作りを振り返ったレイヴェイは、相手から連絡が途絶え、ボストンという街までつらく感じるようになったことを話しています。
それまでなら衝突を避けていた彼女が、この街を自分のものとして取り戻そうと考えたことが、曲の発想につながりました。

そのとき強く覚えているのは、苦しい感情を、形のある曲へ変えられた喜びです。
自分に合う声の手本を探すことに加え、自分が経験したことを歌として外へ出す楽しさも見つかっていきました。
古い歌への憧れと、いま自分に起きている出来事が、一人の歌い手の中でつながり始めたのです。

レイヴェイ「Street by Street」(2020年)の公式音源。

エラの豊かな揺れから、チェットの控えめな歌にも惹かれる

手本にした歌手は、エラだけではありません。
2022年の取材では、その3、4年前からチェット・ベイカーに強く惹かれるようになったと話しています。
エラの歌い方にはビブラートやクラシックに近い感覚を見いだしながら、チェットには、トランペットを思わせる控えめな歌い方の美しさを感じていました。

ここで加わったのは、声に親近感を覚える歌手をもう一人見つけた、ということだけではありません。
声を豊かに揺らす歌だけでなく、抑えた表現にも惹かれ、楽器を演奏する人の感覚から歌を考える手本が増えていたのです。
エラへの憧れを捨てて別の歌い方に替えるのではなく、歌の中で選べる表情を増やしていく過程として見ることができます。

同じ取材で、レイヴェイは、既存の音楽を演奏するだけでなく、自分の音楽を作りたいと思っていたとも説明しています。
クラシックとジャズを混ぜ、現代的な形にする試行錯誤を経て、曲を発表するところまで来たという振り返りでした。
影響を受けた歌い方も、自作曲の中で生かすものになっていきます。

「Valentine」では、最後の一節へ向かう間合いを考える

2022年の「Valentine」を説明するとき、レイヴェイは、少し酔っているような、ずれた進み方をする曲だと話しています。
その落ち着かなさを保ったあと、最後の一節で解決する感覚を作りたかったそうです。
何かが終わり、腑に落ちるような満足を、その結びに感じていました。

声の高さや響きに加え、どこまで気持ちを引っ張り、どこで落ち着かせるかも、歌の表情を考える手がかりになります。
本人はこの頃、曲の書き方は自分の話し方にとても近く、ユーモアも含まれていると説明していました。
憧れの歌手から学んだ音の世界へ、自分の話す感覚や感情の進み方を持ち込んでいたのです。

レイヴェイ「Valentine」(2022年)の公式音源。

聴き手に合わせて控えるより、自分の背景を信じる

2023年の「Bewitched」へ進むときには、作りたい音楽に対する考えにも変化がありました。
最初のアルバム「Everything I Know About Love」では、ジャズやクラシックを強く押し出すことに、ためらいがあったと話しています。
若い聴き手にも理解してもらいたい、という思いがあったからです。

ところが、比較的よく受け入れられたのは、ジャズらしい曲や、交響楽団と録音した曲でした。
それを受け、次のアルバムでは、自分の音楽的な根にもっと素直に戻ろうと考えたそうです。
ジャズの曲はジャズとして、クラシック寄りの曲はオーケストラと録音する。
異なる曲を一枚につなぐものは、自分が書き、自分が歌うことだと信じるようになりました。

これは、編成が変わったから声そのものが変わった、という話ではありません。
自分の声で歌う音楽を決めるときに、出し方をためらっていた音楽的な背景を、もっと前へ出そうとした転機です。

レイヴェイ(2023年掲載の写真/撮影:Gemma Warren)。
レイヴェイ(2023年掲載の写真/撮影:Gemma Warren)。
画像出典:Tatler Asia

「From The Start」で、語る歌とスキャットを組み合わせる

2023年の番組「Song Exploder」では、それまでのボーカルトレーニングを振り返り、憧れのエラのスキャット・ソロを書き取っていたと話しています。
スキャットは、歌詞の代わりに意味を持たない音でメロディーを歌う表現です。
好きな歌手の声を、具体的な音の動きとして学んでいたのです。

「From The Start」で描いたのは、思いを寄せる友人が、別の恋の話を始めてしまう場面でした。
この曲の歌い方を説明するとき、レイヴェイは、ボサノバの歌は物語を語るようで、話し言葉に近いと話しています。
その曲の中には、学んできたスキャットも組み込まれています。

身近な出来事を言葉で語る歌と、声を音として動かす楽しさ。
二つを同じ曲に置くところに、学んだ歌い方を自分の表現へつなぐ彼女の歩みが表れています。
「From The Start」で本人が説明した声の使い方や、ほかの曲での表情は、レイヴェイの歌い方で取り上げています。

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