堀込泰行の歌い方|無理のない発声のイメージと、曲の表情に応える声

堀込泰行(2025年掲載の写真) シンガー
堀込泰行(2025年掲載の写真)

堀込泰行の歌い方を、本人の発声イメージと、曲ごとの選択から見ていきたい。

堀込泰行「New Day」(2016年)の公式音源。

無理のない発声を、球のイメージで捉える

2026年の「ほぼ日」の取材で、堀込は、無理のない発声を「真球を探すこと」と表現している。
ものまねのために作った発声のいびつな部分が削られ、自分の歌い方ができ上がっていくというイメージだ。
歌うときの本人の比喩として、その感覚を知る手がかりにしたい。

自分にとって自然な声を探すことと、いつも同じ表情で歌うことは別だ。
無理なく使える声を土台にして、その曲に必要な色を選ぶという見方ができる。

澄んだ声だけでなく、粗い声でも遊ぶ

堀込の歌を、柔らかく澄んだ声だけで捉えると、意図的に質感を変える面が見えにくくなる。
2016年のカバー作品『“Choice” by 堀込泰行』について、OTOTOYの取材では、声に粗さを加えた例を本人が説明している。

「Oh Pretty Woman」では、ゆっくりした箇所をロイ・オービソンの雰囲気で歌い、ロックの感触が強い箇所では、がらがらした声を選んだという。
一曲の中でも、曲の動きに合わせて声の表面を変えている。
「Rich Girl」についても、ざらつきのあるシャウト風の歌い方を試したと話していた。

どちらも、声が荒れたからそのように聞こえる、と本人が説明したものではない。
曲を自分の作品にするため、遊びとして選んだ表現である。
なめらかな歌と粗い歌を、上手い歌と失敗した歌に分けるのではなく、曲の中で必要とされた表情として聴くことが大切になる。

同作では音数が少ないため、楽器だけでなく歌の細かなニュアンスも聴こえると、堀込は述べている。
大きな変化に加え、フレーズごとの小さな表情を追う楽しみもある。

「New Day」では、曲調に応じて歌い方を選ぶ

2016年の音楽ナタリーの取材では、「New Day」の歌い方が普段と違うという問いに、曲調に合わせて歌ってみたと答えている。
同じ声でも、曲が求める雰囲気にどう応えるか。
その選択を意識して聴くことが、この曲を知る入口になる。

日本コロムビアの公式インタビューでは、この曲に、スティーヴィー・ワンダーやドナルド・フェイゲン、1990年代以降のR&Bを混ぜたような感触を考えていたと説明している。
曲調に合わせるという言葉の背景には、具体的な音楽のイメージがあった。

そのため、「New Day」で聴きたいのは、いつもの堀込の声とどれだけ違うかだけではない。
伴奏が持つリズムや響きに対して、歌がどう収まるかにも注目したい。
声の個性を保ったまま、曲全体の景色を変えるという聴き方ができる。

同じ公式取材の「Wah Wah Wah」の話では、ソロになってもバンドの音を好み、バンドマンでありたいという気持ちが語られている。
歌手として声を前へ出すことだけで、作品を考えているわけではない。
ギターやオルガンなどの音と並んだとき、声がどんな役割を持つのかも大切なのだ。

声だけを抜き出して評価するのと、演奏の中で歌を聴くのとでは、見えてくる工夫が違う。
曲ごとの歌い分けを知るには、後者の視点も持っておきたい。

堀込泰行(2016年掲載の写真)
堀込泰行(2016年掲載の写真)。
画像出典:画像掲載元

鼻歌から、ビートに合う旋律を探す

「Sunday in the park+STUTS」には、声を使いながら曲を形にする過程が残されている。
FUDGEの対談によると、まずSTUTSが堀込をイメージしたトラックを作り、そこへ堀込が鼻歌で旋律を乗せた。
サビの展開についても提案し、二人でやり取りしながら完成させていったという。

Aメロの四つのコードが繰り返される中で鼻歌を重ねるうちに、ソウルの感触が生まれたと、本人は話している。
完成したメロディーを後から歌うだけでなく、声を出すこと自体が、その曲に合う流れを見つける作業になっている。
旋律と歌い回しを、最初からきれいに切り離せるわけではない。

さらに、堀込の歌詞から受け取った情景を、STUTSが音のアレンジへ戻している。
伴奏に歌が反応し、その歌や言葉に伴奏が反応する。
この往復を知ると、穏やかな曲の中にも、互いの発想を受け取る細かなやり取りがあることが分かる。

完成した歌では、言葉とビートがどうなじんでいるかを聴いてみたい。
無理に声を目立たせる以外にも、演奏と一緒に曲の気分を作る方法がある。

「Train Song」の後半で、鼻歌やスキャットを明るく

ゲーム『to a T』の「Train Song」では、受け取った優しいデモに素直に反応するように歌ったと、ORICON NEWSの対談で話している。
切なさを感じる部分もある中で、後半の鼻歌やスキャットでは、気分を明るくしていったという。

境亜寿香、堀込泰行「Train Song」(2025年)の公式音源。

言葉を伴う歌から、鼻歌やスキャットへ進む中で、声の表情をどう変えているか。
本人が語った明るさへの変化を、聴く手がかりにしたい。

対談では、作曲した境亜寿香が、堀込からキーを上げてもよいかという申し出があったことも明かしている。
収録での歌声の選択を知る、もう一つの具体例だ。

重なる声と、客席へ渡す歌

バンドの中で声が担う役割を考えるなら、キリンジ時代のライブにも具体例がある。
BARKSが伝えた2013年の兄弟二人による最後のステージでは、「悪玉」で泰行から高樹へ主旋律を引き継ぎ、二人の声が重なる様子が紹介されている。
一人の声の魅力と、声が合わさったときの魅力を、同じ曲の中で楽しめる場面だ。

その後、高樹がギターを弾く横で、泰行は自分のギターを手でたたいてリズムを刻み、客席の手拍子が加わった。
さらに観客を歌へ誘い、会場の合唱へとつなげている。
ここでの歌い手は、旋律を正確に届けるだけでなく、演奏と客席を結ぶ役目も担っていた。

歌の迫力を、声量の大きさだけで説明することはできない。
主旋律を渡すこと、声を重ねること、聴いている人が歌える場を作ることも、公演の熱を高める。
堀込の歌を一人の美声として聴くのに加え、他の声との関係で聴くと、表現の幅が見えてくる。

曲に応えることが、声の個性を生かす

カバーでは粗い声を選び、「New Day」では曲調に合わせ、「Train Song」では後半の気分を明るくする。
この違いを並べると、堀込の歌い方を一つの音色だけで説明するのは難しい。
自分の声を土台に、作品の表情に合わせて選択を重ねているのである。

聴き比べるなら、柔らかいか力強いかという印象の先へ進んでみたい。
曲のどの場面でその声を選び、伴奏や次のフレーズへどうつないでいるのか。
そこに目を向けると、自然に聞こえる歌の中にある、具体的な判断を知ることができる。

歌唱の歩みは、堀込泰行の歌唱変遷でもたどっている。

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