ホ・ユンジンの歌い方を考えるとき、声の大きさや高音だけに注目すると、見えてこない部分があります。
話すように言葉を置く歌、柔らかな声を使うR&B、相手との組み合わせを生かすデュエット。
曲に合わせて、声の役割を選ぶところに注目したい歌手です。
では、その選択は録音の中でどのように行われているのでしょうか。
本人の説明と制作に関わった人の言葉から、具体的な曲を見ていきます。
声を響かせる力と、曲に合う声は同じではない
声楽の経験は、彼女を理解する大切な背景です。
KBSの「リムジンサービス」でも「Think of Me」を歌っています。
ただ、声楽の経験があることと、どの曲でもその響かせ方を選ぶことは別です。
「FEARLESS」の録音で求められたのは、音符よりも歌詞に意識を向け、話すように伝えることでした。
本人は強い人物像を想像し、声にその態度を持たせようとしています。
音の高さに加え、言葉を言い切る感じやフレーズ全体の姿勢にも、録音の狙いがあります。
柔らかい声にも、強い内容を持たせられる
「Impurities」について、ユンジンは、柔らかな歌と強い歌詞の組み合わせを魅力として挙げています。
声を強く押し出すことと、強い気持ちを表すことは、必ずしも同じではありません。
この曲では、R&Bの落ち着いた雰囲気を保ちながら、言葉の内容を届けることが大切になります。
声の柔らかさを、弱さと結び付けずに聴きたいところです。
具体的な声の種類に注目するなら、GroovyRoomの「Yes Or No」も手がかりになります。
Crushとともに参加したこの曲では、ユンジンの裏声が魅力を発揮しています。
第一のヴァースをはじめ、曲の多くを担う彼女の声と、Crushのソウルフルな声の組み合わせが聴きどころです。
裏声は、高い音へ届くためだけの手段ではありません。
この曲では、声の質感そのものが、聴き手に与える印象や共演者との違いになります。
どちらがより大きく歌うかではなく、二人がどんな声を持ち寄っているかに耳を向けると、共演の面白さが分かりやすくなります。
「Yes Or No」— GroovyRoom feat. HUH YUNJIN, Crush(2024年・公式音源)

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「EASY」は、風景を想像して声を選ぶ
「EASY」では、寒い場所で白い息が出る状況を思い描く指示を受けたと話しています。
身体の感覚につながるイメージを入り口にした録音です。
曲が求める自然さを、声の質感まで含めて探していたことが分かります。
これは、特定の呼吸法を説明した言葉ではありません。
どんな場面の声なら曲に合うのか。
想像する状況を通して、目指す表情を見つける方法です。
言葉が多い曲では、発音もリズムの一部になる
「Eve, Psyche & The Bluebeard’s wife」では、速い流れの中で同じ言葉を繰り返す難しさがありました。
ユンジンは、サクラやウンチェと発音を練習したことを話しています。
ここでは、伸ばした音の美しさだけでなく、短い言葉をリズムの中へ収める作業が重要です。
歌詞を知っていることと、曲の速さで口にできることには、別の準備が必要になります。
本人は、SZAの言葉の多さやフレーズの運びを研究し、ラップにも挑戦していると語りました。
声に感情を乗せる方法を、音色だけでなく、言葉の置き方にも求めていることが分かります。
一つのフレーズをどこまで続けるか、言葉をどんな調子で運ぶか。
ユンジンの歌を聴くときは、声の響きと一緒に、文章がリズムへ変わるところにも注目できます。
自作曲と共演曲では、歌う相手との距離が変わる
ユンジンは、グループで表す憧れの姿と、ソロで見せる無防備な自分を、どちらも本当の姿として説明しています。
自作曲では、完成された人物を見せることより、自分の迷いを話すような距離が大切になるのです。
また、ふと思いついたことをボイスメモに残す一方で、グループの歌詞では内容を短くまとめる難しさも語っています。
自由に話したいことを、そのまま曲へ詰め込めるわけではありません。
自分の言葉を残しながら、限られたフレーズで歌える形へ整える。
歌詞を書く作業にも、歌うときのリズム感が関わっています。
MAXとの「STUPID IN LOVE」では、声の相性が制作の大きな理由になりました。
MAXは、彼女の声が入ることで曲に必要なものがそろったと説明しています。
共演では、自分の声だけを完成させるのではなく、相手の声と並んだときの響き方を考える必要があります。
一人で歌う曲と聴き比べるなら、声量の差よりも、二人の声が交代することで生まれる表情を探したいところです。
「jellyfish」のように、アコースティックギターを中心とする曲もあります。
自作曲の中でも、伴奏の形は一つではありません。
ギターの音と歌声の関係を聴くことで、大人数のダンス曲とは違う、言葉を受け取る距離を考えられます。
ソロ曲だから特定の歌い方になると決めつけず、曲ごとの伴奏と声の組み合わせを捉えることが大切です。

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仲間の声を導くために、狙いを言葉にする
「Crazier」で制作の中心を担ったときには、メンバーへ録音の助言も行いました。
サクラがショーケースで挙げたのは、ユンジンの説明が具体的で分かりやすかったことです。
自分が感覚的にできることを、別の声を持つ人へ伝えるには、曲の狙いを言葉にする必要があります。
この経験は、歌い方を個人の才能だけで捉えないための手がかりになります。
「Crazier」—『CRAZY』収録の公式音源(2024年)
また、デビュー時には、歌とダンスを同時に行う難しさも率直に話していました。
歌と振付を合わせる練習に加え、有酸素運動にも取り組み、息の面で役立ったと本人は感じています。
録音で声の表情を選ぶことと、動きながらそれを届けることは、別々に準備する課題なのです。
歌う声と、唱える声の間にも表現がある
2026年の「BOOMPALA」の録音では、旋律を歌い上げるより、言葉を唱えるような表現を求められました。
ユンジンに対しては、森の中で瞑想するイメージが示されました。
言葉を繰り返す曲でも、声を強く押し出す方向だけが選択肢ではありません。
落ち着いた状態を想像し、その曲の中に収まる声を探すという方法もあります。
ホ・ユンジンの歌い方を知るには、出せる声の範囲と、その曲で実際に選ぶ表現を分けて考えることが役立ちます。
裏声の質感、話すような言葉、速いフレーズ、共演相手との組み合わせ。
一つずつ見ていくと、強い声を持つこと以上に、曲に必要な声を考える姿が見えてきます。
そうした選択がどのように広がってきたかは、ホ・ユンジンの歌唱変遷でたどっています。

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