HAN-KUNの声を説明するとき、高音は欠かせません。
けれど歌作りには、キーや息継ぎを確かめる工程もあります。
高い声が出ることと、その曲を最後までどう歌うかは、別々に考えられているのです。
張りのある歌の印象を持っている人ほど、どこで声を押し出し、どこで言葉を待つのかに目を向けると、選択の細かさが見えてきます。
録音とライブ、オリジナルとカバーを行き来する、その歌い方をたどります。
「元気を出して」(2021年・リモートセッション)
高音と、言葉を刻む声を同じ人が担う
HAN-KUNの特徴は、高音に加えて、激しい掛け合いとサビの歌唱を両方担えることです。
レゲエのディージェイとは、この文脈ではレコードをかける人ではなく、リズムに言葉を乗せて歌う人。
即興で言葉を繰り出すラバダブも、彼の持ち味です。
音の高さに注目すると、どこまで高い声が出るかが気になります。
一方、言葉の乗せ方から考えると、細かく刻んで進める場面と、メロディを歌う場面で、同じ声に違う役割が生まれます。
一曲の中で何を前に出すかを知るには、音域とともに、この二つの役割を見る必要があります。
日本語の発音についても、本人はジャマイカの音楽に近づこうとするほど、言葉のリズムの違いを感じると話しています。
その違いを、自分たちの個性として受け止める考えも持っている。
本人が2025年に語ったのは、日本語を別の言語そっくりに押し込めるのではなく、自分の言葉で伝える歌を目指す姿勢でした。
発音の違いまで消すことが、理想の歌い方なのではないのです。
一曲通して歌えるかが、息継ぎの基準になる
2017年の『VOICE MAGICIAN V ~DEEP IMPACT~』では、録音した曲をライブでもそのまま歌えることを前提にしました。
HAN-KUNが気にしたのは、パートを分けて録音すると、一曲通したときに息継ぎの場所がなくなる場合があること。
そこで曲ができたら、まず最後まで歌えるかを確かめています。
本人が2018年に振り返った、この作品の作り方です。
録音を細かくつなげば、声が途切れない仕上がりは作れても、舞台では歌う人の呼吸が必要になる。
HAN-KUNはそこを、歌が完成してから埋め合わせる問題にせず、曲を形にする段階へ戻しました。
長く声を保つ力と、息を継げるフレーズを作る判断が、つながっているのです。

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舞台で声が届く距離への意識もあります。
本人は2017年、ライブハウス公演を前に、マイクを通さなくても声が届きそうな近さについて話していました。
会場の規模が変われば、歌う相手の存在の感じ方も変わる。
録音と同じ音を作るだけでなく、その場の人と声を交わすことが、彼のライブを考える出発点になっています。
キーを下げると、語りかける余裕を作れる
「元気を出して」などを収めた2021年のカバー集では、リラックスして歌えるよう、キーを低めに設定しました。
HAN-KUNが求めたのは、懸命に声を張ることより、経験を重ねた自分が語りかける感触。
高い声をどれだけ出すかではなく、歌詞をどんな距離で渡すかから、曲全体の高さを決めています。
高さを変えて生まれる余裕も、表現の一部です。
その余裕をレゲエのくつろぎにつなげる、という目的がありました。
選曲にも声の判断があります。
2019年のカバー集では、スタッフとカラオケで歌い、声に合う曲を選びました。
好きな曲を、自分の声で表現できるか。
原曲への敬意から、そこを確かめたのです。

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言葉を減らし、歌詞が届く時間を空ける
「夏のメロディー」では、心地よさを狙い、他の曲より歌詞の量を減らしています。
一つの言葉を置いてから次へ進むまでの時間も含めて、歌が届くようにした曲です。
速い言葉をさばく技術があっても、いつも最大限に使うわけではありません。
声を足さずに待つ選択が、その曲の柔らかな距離感を作っています。
その考えの背景には、カバーで名曲を歌い直した経験もあります。
本人は、日本の曲にもレゲエにも間を味わう共通点があると話しています。
また、ボブ・マーリーの曲については、言葉を完全に理解しなくても口ずさめる、メロディと言葉数の関係に引かれたと説明しました。
歌う人が音を詰め込むほど、聴き手も参加しやすくなるとは限らない。
こうした本人の話からは、口に出して歌える形を大切にする姿勢が伝わります。
「あなたに」のカバーをライブで歌ったときには、客席から大合唱が起こり、自分が要らなくなるほどだと喜んだこともありました。
声を出す側と受け取る側が入れ替わる瞬間です。
HAN-KUNの歌では、自分の声で空間を満たすことに加え、聴き手の声が入ってくる余地にも意味があるのです。
「あなたに」(2019年・MV短縮版)
加工した声と、誰かの世界で歌う声
「DO IT」では、久しぶりにオートチューンを使いました。
本人が近年聴いていたアフロビーツやアマピアノでの使われ方に、新鮮さを感じたことがきっかけです。
ここでは加工後の質感も表現の一部。
歌声の特徴を考えるときには、歌う身体が出した声と、作品として仕上げた声の両方を見る必要があります。
他者との制作では、自分の声を置く世界も変わります。
「君となら・・・feat. RYOJI」は、ケツメイシのRYOJIが提案する世界観へHAN-KUNが入った曲。
自分が招いた相手の音楽に、逆に迎えられるような作り方でした。
本人は、自分のソロなら書かなかった甘い歌詞やメロディに、自然に向き合えたと語っています。
この曲でHAN-KUNが受け入れたのは、いつもの自分にすべてを合わせる以外の歌い方です。
息を継げる流れを作り、必要ならキーを下げ、言葉の数や声の加工まで選ぶ。
強く存在を示せる声だからこそ、その強さを何のために使うかという判断が、歌の表情を決めています。
高音の印象から一歩進むと、そこには歌いやすさと届きやすさを、具体的に組み立てる人がいます。
その選択がどのように増えてきたかは、HAN-KUN(湘南乃風)の歌唱変遷でたどっています。

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