ドヨン(NCT)の歌唱変遷|繊細なバラードから、ひとりの公演を支える声へ

2024年9月の東京公演に立つドヨン シンガー
2024年9月の東京公演に立つドヨン

ドヨンの歌声を、NCTの曲で響く高音から知った人も多いでしょう。
けれど、その歩みにはもう一つの軸があります。
声を重ねる細部に気を配り、バラードの感情を丁寧に届けてきた歌手が、やがて自分の選んだ曲で公演全体を支えるようになったことです。

ソロでバンドの音を選んだことも、高音を歌う力が伸びたと感じたことも、突然別の歌手に生まれ変わったという話ではありません。
グループで育てた声を土台に、曲を選ぶ責任と、長く歌い続ける課題が増えていったのです。

2016〜2020年、高音とバラードの両方を育てる

2016年にNCT Uでデビューしたドヨンは、グループの活動と並行して、自分の歌を聴かせる場を広げてきました。
ソロアルバム以前の歌声を考えるとき、NCT 127のバラードは欠かせません。
大きな動きや強いビートのある曲とは違う場所で、声そのものに感情を託していたからです。

ただし、初期の活動が静かな歌だけだったわけではありません。
2016年の「Without You」は、ギターの響きを伴うEDMロックで、ドヨンを含む三人の歌声が前面に出る曲でした。
「The 7th Sense」と同じデビュー期から、異なる音楽の中で歌う場があったのです。
後に選ぶバンド音楽をまったく新しい出発と考えるより、もともとあった歌の幅を、自分の意思で掘り下げたと見るほうがつながります。

2019年、ユウタがドヨンの歌で特に挙げたのは「No Longer」の最後のパートでした。
舞台の後ろで聴いている自分まで泣きそうになる、と伝えていたのです。
同じステージに立つ人の心を動かす歌が、すでにグループの中にありました。

同じ年には、顔と名前を伏せて歌う「覆面歌王」にも出演しています。
NELLの「記憶を歩く時間」を選び、決勝まで進みました。
ドヨンは練習生の頃から出演を望み、歌うなら何を選ぶかを考えていたため、緊張が少し和らいだと話しています。
単独で歌う場は、その場で急に作った挑戦ではありませんでした。

本人が喜んだのは、アイドルのボーカリストとしてここまで進めたことでした。
グループにいる自分を捨てて認められたかったのではなく、その立場への誇りと、一人で歌う力を示すことが結びついていたのです。

2020年のドヨン自身は、「Make Your Day」で細かく作り込んだコーラスと、一曲を通した心地よさに注目してほしいと話しています。
カバーでは、原曲の歌手と違う自分の良さをどう出すかを考えていました。
自分の声を目立たせることと、曲に合う声を探すことは同じではない。
その違いを考える姿勢が、後のソロ制作につながる土台になっています。

2020年の取材に登場したドヨン
2020年の取材に登場したドヨン。
画像出典:画像掲載元

2021〜2023年、舞台と日本語の歌で増えた課題

2021年には、ミュージカル「マリー・アントワネット」に初挑戦します。
練習中のドヨンは、実力のある共演者から多くを学び、結果を重視していた自分が、一緒に作る過程も大切にするようになったと語りました。
完成した歌だけでなく、そこに至る人とのやり取りを学ぶ場でもあったのです。

この経験を、声量や呼吸法が一気に変わった転機とまでは言えません。
ただ、グループの録音以外でも歌と向き合う時間が増え、自分だけで仕上がりを決められない場を経験したことは、その後の活動を考えるうえで大切です。

2023年には、日本のドラマ「星降る夜に」の挿入歌「Cry」を担当しました。
日本語の発音のためにも録り直しを重ね、言葉の自然さまで整える仕事へ向き合っています。

2024年「YOUTH」で、自分の声が生きる音楽を選ぶ側へ

2024年の初ソロアルバム「YOUTH」では、ドヨンが以前から好きだったバンド音楽が前に出ます。
高校時代にバンドで歌っていた彼は、「Little Light」の制作をLUCYのチョ・ウォンサンに依頼しました。
惹かれていたのは、明るさの中に感傷もある音楽です。
勢いのあるギターに乗っても、切なさを伝える声の持ち味を生かせる選択でした。

グループでは、メンバーの意見を交えながら作品を作ります。
ソロでは自分で決められる範囲が増えたぶん、その責任も大きくなりました。
ドヨンは「Beginning」と「From Little Wave」の作詞に参加し、自分の経験や感情を言葉にしています。
用意された一節を歌うだけでなく、何を歌として残すかにも関わるようになったのです。

「Time Machine」には、自ら少女時代のテヨンとマークを迎えています。

制作では、アイデアを資料にまとめ、一つの歌のフレーズにも長い時間をかけています。
自然に届く歌であっても、作る過程まで簡単だったわけではありません。
以前からの細部へのこだわりを、一枚のアルバム全体へ広げたのがソロデビューだったのでしょう。

2024年のツアーから2025年へ、高音を歌い続ける力

初のソロツアーでは、アルバムの世界を一人で届ける時間が始まります。
2024年9月の東京公演では、「Back 2 U」「Sticker」などのNCT曲もバンド編曲で披露しました。
グループで共有していた曲を、自分の公演の流れに組み込み直す試みです。
ソロ曲を増やすだけでなく、これまでのレパートリーにも新しい置き場所ができました。

2024年9月の東京公演で歌うドヨン
2024年9月の東京公演で歌うドヨン。
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その経験を経た2025年、2作目の「Soar」を出す頃には、本人が高音への対応の向上を感じるようになります。
最初のアルバムとコンサート以降、歌う力が伸びたと考え、録音では良い状態を維持することに意識が向いていました。
一度高い音を出せることから、その声で仕事を続けられることへ、課題の置き方も進んでいます。

この年には、ミュージカル「笑う男」でグウィンプレンも演じています。
ソロ公演に加え、役の感情を大きな劇場へ届ける場所にも戻っていました。
「Open Your Eyes」では、女王や貴族に向き合う場面の高音に、鋭さと澄んだ響きを併せ持つ歌として評価が寄せられています。
高音は、歌手の力を示すだけでなく、登場人物の訴えを届ける役割も担いました。

「Soar」でNELLのキム・ジョンワンと作った「Sand Box」は、シンセサイザーにギターが重なり、音の広がりを増していく曲です。
2019年にはNELLの歌を選んで一人で舞台に立ったドヨンが、2025年には、その音楽家と自分の作品を作る側に回っていました。
好きだった音楽と自分の歌声の関係が、カバーから一緒に作品を作る段階へ進んだことも、この時期の大きな変化です。

同年秋、ドヨンは、舞台で思うように歌える瞬間には、飛ぶような喜びがあると語りました。
高音を出せるかどうかだけにとらわれず、歌いたいものを自由に歌えることが、新しい手応えになっていたと考えられます。

2025年末「Promise」、大きく歌える声で静かな感情を届ける

2025年12月の「Promise」は、ドヨン自身が詞を書いたバラードです。
少ない鍵盤の音から始まり、後半に弦の響きも加わる中で、感情を深めていきます。
愛情が深いからこそ簡単に言えなかった言葉を届ける曲であり、強い声だけで押し通す作品ではありません。

同じシングルの「Whistle」では、KISS OF LIFEのBELLEと共演しています。
ジャズギターの上で声を会話のように交わす姿は、ほかの声と混ざる持ち味が、ソロ活動の中でも続いていることを示します。

ドヨンの変化は、繊細な歌手が力強い歌手になった、という一方向のものではないでしょう。
声を重ね、言葉を整えてきた人が、自分の音楽を選び、高音の多い公演を支える力も育てた。
だからこそ、静かなバラードに戻ったときにも、その柔らかさを歌手としての選択として受け取れるのです。
曲ごとの声の使い方は、ドヨン(NCT)の歌い方で掘り下げています。

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