きゃりーぱみゅぱみゅの歌い方|柔らかな声で、言葉とリズムを際立たせる

きゃりーぱみゅぱみゅ(2025年取材掲載) きゃりーぱみゅぱみゅ
きゃりーぱみゅぱみゅ(2025年取材掲載)

きゃりーぱみゅぱみゅの甘い歌声は、力いっぱい張り上げる声とは違う魅力を持っています。
本人も、話すときと歌うときの声はあまり変わらないと感じていました。
では、その親しみやすい声は、どのように曲の中で働いているのでしょうか。

声を大きくすることより、どのくらい力を込めるか、言葉をどの長さにするか、どんなリズムで置くか。
録音での具体的な選択を見ていくと、軽やかな印象の内側にある細かさが見えてきます。

声そのものを作り込みすぎず、曲の中へ置く

きゃりーは自分の声について、普段から高く、歌うときも裏声を使って別の声にしている感覚ではないと話しています。
これは本人の感覚を表す説明です。
高く聞こえることだけを理由に、すべてを裏声と決めることはできません。
日常の声とつながっていると本人が感じる響きを、歌にも持ち込んでいるのでしょう。

一方、録音では、感情を大きく乗せて歌い上げるより、淡々と歌うよう求められることがあります。
小さな声であれば何でも同じという話ではなく、歌手が強く前へ出すぎない置き方を選んでいるのです。
声を曲の主役として押し出す方法だけでなく、周囲の音と一緒になって、その曲らしさを作る方法もあります。

きゃりーの声を、柔らかく薄い響きでありながら、子音が明瞭だと評した専門家もいます。
柔らかさと言葉の分かりやすさは、両立するのです。
声全体の甘い印象だけでなく、言葉が始まるところに耳を向けると、不思議な言い回しが歌の中でどう形を持つのかにも注目できます。

「きみのみかた」――強い気持ちを、強い声に直結させない

きゃりーぱみゅぱみゅ(2021年取材掲載)
きゃりーぱみゅぱみゅ(2021年取材掲載)。
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「きみのみかた」の録音で、本人は歌詞の強さを受けて力強く歌ってみました。
ところが、求められたのはもっと柔らかな歌い方でした。
きゃりー自身は、強く言いすぎると怒っているように聞こえるからではないかと考えています。
これは本人が受け止めた理由ですが、言葉の内容だけで声の強さを決めない姿勢が分かる場面です。

歌詞の意味と、声が与える感触を、別々に考えてみたくなる一曲です。

さらに、この曲では言葉の発音も工夫しています。
日本語を平らにつなげるように歌うのでなく、部分的に英語のような響きへ寄せ、リズミカルに運びました。
本人は、韻を踏む感覚も歌っていて心地よいと話しています。
柔らかな声を選んだうえで、言葉の端まで曖昧にするのではなく、音の形を変えて動きを作る。
声の力加減と発音の工夫が、一緒に働いています。

歌い込んで完成させるだけが、録音の方法ではない

普段の録音では、あらかじめ長く歌い込むのではなく、その場で短時間に曲を覚えて歌う方法を取ってきました。
2016年には、曲を覚える時間は10分ほどで、一、二回目の歌がよいことが多いと話しています。
中田が望んでいたのは、先に歌い方の癖を固めすぎないことでした。
迷いが残る段階の声にも、その曲に合う表情があるのです。

ただし、いつも知らない曲を同じ方法で録るわけではありません。
CAPSULEのカバー「恋ノ花」は、本人が既に知っていた曲で、一度通して歌って録音しました。
中田は最初から歌えていたため、そのまま録るほうがよいと判断しています。
録音の方法も、その曲と歌い手の関係から選ばれているのです。

「おやすみ」――ゆっくり歌うと、別の難しさが現れる

「おやすみ」は、ゆっくりしたワルツの曲です。
本人は、音を伸ばすことや、急に上がったり下がったりするメロディが難しく、何度も録音したと話しています。
反対に「ぎりぎりセーフ」では、曲の軽やかさに合わせて、いつも以上にふわりと歌いました。
同じ人の柔らかな声でも、曲によって必要な扱いが違います。

一つの音を長く保つ曲では、次の言葉へすぐ移ることができません。
その長さを引き受けながら、メロディの動きにも合わせる必要があります。
軽く聞こえる歌声の持ち主だから、ゆったりした曲も苦労なく歌えるとは限らないのです。
声の印象と、歌うときに感じる難しさを分けて考えると、この曲で取り組んだことが見えてきます。

「キャンディーレーサー」と「どどんぱ」――声で時間を刻む

『キャンディーレーサー』の表題曲では、言葉を小さく詰めるところや、逆に伸ばすところに細かな指示がありました。
本人は、簡単そうに見える曲でも、そのニュアンスが難しいと話しています。
大きく歌えるかどうかとは別に、一音をどこまで続け、どこで止めるかが問われるのです。

「どどんぱ」では、旋律をなぞるだけでなく、声でリズムを作る役割が前に出ます。
完成した歌詞を普通に読むようには覚えられず、本人は聞き取った音を自分で書き留めながら取り組みました。
言葉として何を意味するかより、口から出る音の並びをどうリズムにするかが大切になる場面です。

声は旋律を運ぶものでもあり、時間を細かく区切るものでもあります。
同じ明るい声を使っていても、長く伸ばす歌と、音を刻む歌では仕事が違う。
きゃりーの歌を一つの声色だけで説明しようとすると、この違いが抜け落ちます。

録り直しがある曲、短時間で形になる曲

「ガムガムガール」は、本人にとって歌いやすいメロディの曲でした。
それでも録音は二度行われています。
理由はうまく歌えなかったからではなく、歌詞を変えたためでした。
本人も、録り直したほうが耳に残ると感じています。
歌声の軽快さを作るのは発声だけではなく、その声で歌う言葉の選び方でもあるのです。

「一心同体」では、言葉が多すぎず、メロディも歌いやすかったため、録音は短時間で進みました。
きゃりーは、自分には歌いやすい曲だったと説明しています。
音域の広さや声量だけで難しさが決まるわけではありません。
どれだけの言葉を、どんなメロディに乗せるかという組み合わせも、歌う感触を変えています。

録音するときの歌と、完成した音の間にあるもの

KURU KURU HARAJUKU発表期のきゃりーぱみゅぱみゅ(2025年)
KURU KURU HARAJUKU発表期のきゃりーぱみゅぱみゅ(2025年)。
画像出典:画像掲載元

「KURU KURU HARAJUKU」を録音したとき、伴奏は完成版より穏やかな印象で、本人は歌い方やブレスをどうするか考えていました。
ところが、仕上がった音は硬質なダンス曲へと変わっていました。
録音の場で声を出したときと、完成した曲を聴くときとでは、声を囲む音の条件が異なっていたのです。

KURU KURU HARAJUKU――2025年発表曲/MVは2026年公開

きゃりーぱみゅぱみゅの歌い方は、甘い声という一言では終わりません。
力を抑える判断にも、言葉の長さを細かく作ることにも、曲に応じた仕事があります。
大きな声の変化だけを探すより、同じ声がそれぞれの曲で何を担っているかに目を向けると、その表現は広く見えてきます。
そうした選択を重ねてきた歩みは、きゃりーぱみゅぱみゅの歌声の変遷でたどっています。

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