山中拓也の歌い方・発声|流行の声を捨てて「艶」を武器にした理由

山中拓也の歌い方と艶のある高音を分析する記事のアイキャッチ シンガー

山中拓也さんの歌声は、きれいに磨かれたハイトーンとは少し違います。
低音には湿り気があり、高音へ上がっても声の癖が消えません。
そのため、初めて聴いた数秒でTHE ORAL CIGARETTESだと分かります。

ところが山中さんは、最初からこの声を迷いなく武器にしていたわけではありません。
流行していたバンドのように軽く、さらりと歌おうとした時期がありました。
うまく歌えず、自分にも似合わなかったと本人は振り返っています。

転機になったのは、「誰にも真似できない特徴的な声が最大の武器だ」と言われたことでした。
山中さんの歌唱を面白くしているのは、理想の声へ近づいたことではありません。
逃げたかった自分の声を、曲の中心へ置き直したことです。

「誰にも真似できない声」は、最初から長所ではなかった

2014年の山中さんは、自分の声についてかなり率直に書いています。
周囲で人気だったバンドに憧れ、もっと軽い声で歌おうとしました。
しかし思うように歌えず、声にも合いませんでした。

そこで他人から伝えられたのが、特徴的なボーカルこそオーラル最大の武器だという言葉です。
山中さんは、それまで短所のように感じていた声を「プラスに変える」と考えるようになります。

この順番が大切です。
個性的な声を持つ人が、そのまま個性的な歌手になるとは限りません。
癖を隠そうとすると、息、母音、音程のすべてが不自然になり、自分の歌なのに借り物のように聞こえることがあります。

山中さんは新しい声を手に入れたのではなく、もともとの声が最も生きる歌い方へ戻りました。
だから「起死回生STORY」の時点で、整いすぎていない音色までバンドの署名になっています。

他人の耳には「艶」と「こもり」が同時に聞こえる

山中さんの声に対する評価は、きれいには一致しません。
メジャーデビュー時のインタビューでは、艶、存在感、情熱的という言葉で評価されました。
別の発声系個人ブログでは、こもりや喉の詰まりを感じるという厳しい見方もあります。

正反対に見えますが、同じ特徴を別の角度から聞いている可能性があります。
明るく透明な声なら、前へ抜けるほど癖が薄くなることがあります。
山中さんは反対に、低い位置から持っている暗さや鼻に集まるような色が、中高音でも残ります。

それを官能的な艶と感じる人もいれば、少しこもっていると感じる人もいる。
好みが分かれるからこそ、無難な上手さでは代替できません。

インタビューで自身の声について語る山中拓也

外から声帯の動きを確認できないため、特定の筋肉や発声法を断定することはできません。
ただ、複数の評価を並べると、山中さんが声の癖を消す方向へ進まなかったことは見えてきます。

低音の湿り気が、高音へ上がっても消えない

山中さんの高音が印象に残る理由は、最高音の高さだけではありません。
低音で聞こえる湿り気や暗さが、高いサビでも別人のように消えないことです。

ロックの高音では、声を軽くするほど明るく、若く聞こえやすくなります。
山中さんも高音に合わせて声の重さは調整していますが、音色の核まで真っ白にはしません。
そのため「狂乱 Hey Kids!!」のような速い曲でも、浮遊感より危うさが前に出ます。

Real Soundは山中さんの声を、低く鼻にかかった声、湿り気のある質感、細かなビブラートと表現しました。
これは医学的な発声診断ではなく、聴き手が受ける印象です。
それでも、オーラルの妖艶さが高音の鋭さだけではなく、低音から続く暗い色で作られていることを理解する助けになります。

高音だけでなく、声色の落差が一曲の中に劇を作る

山中さんは、いつも同じ妖艶な声で押し通しているわけでもありません。
2020年の「Fantasy」では、一般的な高いメロディーのラップではなく、自分が出せる最も低い位置を意識したと説明しています。

低い語りに近い声があるから、その後のメロディーが急に開けて聞こえます。
高音を強くするだけでは作れない落差です。

近年の「OVERNIGHT」でも、本人は最初に浮かんだ声が通常の地声のイメージではなかったため、高い声と低い声を重ねたと話しています。
一つの正しい発声を全編へ当てはめるのではなく、曲の人物や場面に合わせて声の高さ、密度、色を選んでいます。

オーラルの歌が芝居のように聞こえる瞬間があるのは、この声色の切り替えがあるからです。
強いサビだけを切り取ると、高音歌手としての半分しか見えません。

逃げられなかった「キャッチーさ」まで、現在は武器になった

山中さんは声の癖だけでなく、歌謡的で大きなメロディーを書く自分らしさからも逃げようとしました。
音楽的に複雑な曲を追求しても、最後には自分らしいキャッチーさが出てしまう。
2026年の「VOICE」をめぐるインタビューでは、それを長くコンプレックスとして抱えていたと語っています。

ところが「LIMIT」を経て、その大衆性こそ他の人には置き換えられない武器だと考え直しました。
「VOICE」は、山中さんらしい大きなメロディーを隠さず、自分の苦しさを観客と共有する曲になっています。

現在の歌声とキャッチーさを受け入れた山中拓也

声質と作曲は別の話に見えます。
しかし山中さんの場合、どちらにも同じ流れがあります。
自分から自然に出てしまうものを洗練不足と考え、一度は遠ざけようとし、最後には唯一性として引き受けました。

現在の高音が強く聞こえるのは、無理に太くしたからではありません。
この声で歌うことへの迷いが減り、曲の大きさと音色が同じ方向を向くようになったからです。

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山中拓也らしさは、鼻声や喉声の表面だけでは真似できない

山中さんの声に近づこうとして、鼻へ強くかける、喉を狭くする、語尾を必要以上に震わせるという真似をすると、苦しそうな部分だけが残ります。
声帯ポリープの手術でライブ活動を止めた経験もあるため、痛みや強いかすれを「本人らしい音」として再現するべきではありません。

参考にするなら、音色そのものより、自分の声から逃げない姿勢です。
録音した声が理想より暗い、細い、鼻にかかると感じても、まず全部を消そうとしない。
言葉が聞こえ、音程を保てて、歌った後に普段の話し声へ戻れる範囲で、その声が生きる曲やキーを探す方が安全です。

山中さんも、他人のように軽く歌うことをやめたところから始まりました。
誰かの癖を借りるより、自分の声で一番説得力が出る場所を見つけることが、結果として個性につながります。

まとめ

山中拓也さんの歌い方を支えているのは、ハイトーンの高さだけではありません。
低音の湿り気や暗さを高音でも消さず、低い語りから大きなサビまで、声色の落差を一曲の中で使い分けています。

その出発点には、流行の軽い声を真似してうまくいかなかった経験がありました。
特徴的な声も、避けられないキャッチーさも、逃げる対象から自分にしか使えない武器へ変わっています。

この声がデビュー、声帯ポリープ手術、音楽性の拡張を経てどう変わったかは、山中拓也さんの歌唱変遷で年代順に整理しています。
現在の歌声だけでなく、本人が自分らしさを受け入れるまでの時間を知ると、オーラルの高音は少し違って聞こえてきます。

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