森内寛樹/Hiroの高音はなぜ細くても強い?MY FIRST STORYの歌い方と発声を分析

森内寛樹Hiroの歌い方と発声 シンガー

MY FIRST STORYのHiroさんを語る時、「高い」「ハスキー」「兄のTakaさんに似ている」という言葉がよく並びます。
どれも一部は間違っていませんが、それだけでは現在の歌声の面白さに届きません。

Hiroさん自身が大きな成長として挙げたのは、最高音が伸びたことではなく、一曲を同じ調子で歌わなくなったことでした。
弱く始めるのか、鋭く切るのか、荒らすのか、澄ませるのか。
同じ高さでも声の表情を変えられるようになったことが、細い高音を強く聞かせています。

その特徴が分かりやすい公式映像が、HYDEさんと歌う「夢幻」です。
二人とも高音に個性がありますが、声の太さを競うのではなく、異なる色がぶつかることで曲の緊張が生まれています。

Hiroの高音を理解する鍵は「一辺倒」から抜け出したこと

2019年、Hiroさんは六年ほど前と比べて、歌が圧倒的にうまくなったと振り返っています。
そこで語られた中身が興味深いところです。

以前はBメロも一曲全体も、同じ勢いのまま歌ってしまうことが多かったそうです。
ところが曲数とライブ経験が増えるにつれ、この場面は落とす、この言葉だけ強くする、ここでは違う声を選ぶという判断が増えていきました。

つまり、Hiroさんの進化は高音を一本の太い線にしたことではありません。
一本しかなかった線を、濃さも角度も違う線へ描き分けられるようになったことです。

MY FIRST STORYの曲は、静かな導入から激しいサビへ移るものも、クリーンな声と荒れた声が短い間隔で交差するものもあります。
声量だけを上げ下げしても、この起伏は作れません。

高音へ到達する能力に、曲のどこでどの声を置くかという設計が加わった時、現在のHiroさんらしさが見えてきます。

「細いのに強い」は矛盾しない

Hiroさんの声は、低い声を土台にして厚みを増していくタイプとは違って聞こえます。
話し声から比較的高く、歌でも明るい成分が前へ出やすいため、声の輪郭は細く感じられます。

一方で、細いことは弱いことと同じではありません。
息だけに逃げず、音の中心が残るため、高い音でも言葉の子音と母音が埋もれにくいのです。

発声を扱う解説では、息と声のバランスがよく、高音域でも声の芯を保ちやすいタイプと説明されています。
別の解説では、響きが前方や高い位置へ集まりやすいという見方もあります。

これらは声の仕組みを理解する手掛かりですが、喉の内部を測定した診断ではありません。
確実に言えるのは、低音の太さをそのまま高音へ持ち上げているようには聞こえず、軽さを残しながら輪郭を失わない歌い方を選んでいることです。

ミックスボイスの出し方と見分け方を考える時も、「細いから裏声」「強いから地声」と二択にしない方がよいでしょう。
声の太さ、息の量、音量、母音は、同じ一曲の中でも変わります。

ハスキーさは常時かかる傷ではなく、必要な瞬間に足す色

Hiroさんの声には、乾いたざらつきがあります。
しかし、すべての音を同じ強さでかすれさせているわけではありません。

静かな部分では、ざらつきを薄くして言葉を近くへ置きます。
感情が噴き出す場面では、声の端に荒さを加え、クリーンな高音とは違う圧を作ります。

この使い分けがないまま、喉を擦ってハスキーさだけを再現すると、Hiroさんの歌い方から遠ざかります。
声が荒れていることではなく、きれいな声へ戻れることまで含めて表現だからです。

デスボイスや強い歪みも同じです。
MY FIRST STORYのライブでは激しい声が大きな武器になりますが、荒い音を長く維持することより、次のクリーンな旋律へ移った時に歌の焦点が戻ることが重要です。

同じフレーズを、声の違いで別の感情へ変える

Hiroさんは2013年、ナノさんとのデュエットで、同じ歌詞と旋律でも歌う人の声やアクセントによってまったく違うものになると話していました。
この感覚は、後のMY FIRST STORYにもつながっています。

一つのフレーズには、一つの正解しかないわけではありません。
語尾を残すのか、切るのか。
音の頭を柔らかく入るのか、鋭く当てるのか。
母音を長く見せるのか、言葉を先へ運ぶのか。

歌声の変化を語る森内寛樹Hiro

Hiroさんが「一辺倒ではなくなった」と話した変化は、声量の強弱だけではありません。
同じ声を使っているように見える場面でも、言葉の置き方を変え、主人公の感情がどちらへ向かっているかを示しています。

だから高音そのものが同じ高さでも、怒りに聞こえる曲と、助けを求める声に聞こえる曲が生まれます。
音域の広さより、声の意味を変える選択肢の多さがHiroさんの強みです。

初期のライブ評価が割れたのは、才能がなかったからではない

古いライブの感想をたどると、Hiroさんの歌声への評価は一枚岩ではありません。
透明で感情が伝わるという声がある一方、音程が不安定に感じられる、声が細く聞こえるという記録もあります。

これは、どちらかが間違っているという話ではありません。
高く軽い声はバンドの大音量を抜けやすい反面、息、体力、モニター環境の影響が表面へ出やすくなります。

しかも初期のHiroさんは、一曲を同じ熱量で押し切りやすかったと自分で認めています。
ライブの勢いが魅力になる日もあれば、細かな制御が追いつかない日もあったのでしょう。

その後、全国ツアーや日本武道館、大規模会場を重ね、激しい声の直後でも別の表情へ移る経験を積みました。
現在の安定だけを見て「最初から完成していた」と考えるより、評価が割れた時期を通ったからこそ選択肢が増えたと見る方が、歌手としての歩みを正確に捉えられます。

詳しい時代の流れは、森内寛樹/Hiroの歌声の変遷で整理しています。

「Sing;est」では、マイファスらしさを引いて声だけを残した

2021年、Hiroさんは本名の森内寛樹としてカバーアルバム「Sing;est」を発表しました。
狙いは、MY FIRST STORYの看板を大きく見せることではなく、歌声そのもので勝負することでした。

選ばれたのは女性歌手の曲です。
原曲の高さを単純に競う企画ではなく、ロックバンドで前へ出していた荒さを抑え、曲ごとに声の置き方を変える挑戦になりました。

この作品が示したのは、Hiroさんの声が激しいバンド音の中でしか成立しないわけではないことです。
高音の強さを保ちながら、言葉を柔らかく運ぶポップスの歌い方へ切り替えています。

歌を体系的なレッスンだけで作ったのではなく、学生時代からカラオケで歌い込み、自分なりの方法で声を身につけたという経歴も、この作品を面白くします。
我流だから変わらないのではなく、曲に合わせて我流を組み替えてきたのです。

HYDEとの「夢幻」は、似せないことで成立した

HYDEさんとの「夢幻」では、二人の声を同じ色にそろえていません。
HYDEさんの深さと妖しさに対し、Hiroさんは明るく鋭い輪郭を置きます。

HYDEと向き合って歌う森内寛樹Hiro

ここでHiroさんがHYDEさんの色気をまねたり、自分の声を無理に太くしたりすれば、ツインボーカルの意味が薄れます。
異なる人物の意思を二つの声で表現する曲だからこそ、声質の差が物語になります。

HYDEの歌い方の特徴と比べると、同じハスキー、高音という言葉でも中身が違うことが分かります。
HYDEさんは低い位置の厚みや母音の陰影を使い、Hiroさんは高い位置の輪郭と速度で切り込みます。

Hiroさんの現在地は、誰かに似ていることより、違う声の隣でも自分の役割を失わないことに表れています。

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Takaとの比較だけでは、Hiroの現在を見失う

HiroさんとONE OK ROCKのTakaさんは兄弟であり、声の印象が似ていると感じる人がいるのは自然です。
高音域を中心にロックを歌い、強い感情を声へ乗せる点にも共通項があります。

ただし、兄弟であることは発声法の証明にはなりません。
HiroさんはMY FIRST STORYの曲、長いツアー、バンド内での対話、ソロ作品を通じて、別の歌い方を作ってきました。

Takaさんが比較対象として大きく見え続けたこと自体は、Hiroさんの物語に影響しています。
それでも東京ドームで二人が向かい合えたのは、弟が兄の声へ近づいたからではなく、それぞれのバンドのボーカリストとして立てる場所まで進んだからです。

Takaの高音の歌い方と聴き比べるなら、似ている音だけを探すより、弱い部分の言葉の置き方、荒い声から戻る速さ、サビへ入る直前の余白に注目すると違いが見えてきます。

地声かミックスボイスかは、一曲につき一つではない

Hiroさんの高音を、ミックスボイスと説明する記事も、地声感の強い高音と説明する記事もあります。
用語が分かれるのは、解説者の定義が違うことに加え、Hiroさん自身が一曲の中で声の条件を変えているからです。

息を多く含む高音、音の中心が強い高音、荒さを足した高音、裏声へ寄せた高音を、すべて同じ名前でまとめる必要はありません。
録音を聴いただけで喉の内部を断定することもできません。

初心者に役立つ見方は、声区名を当てることより、その音の前後を見ることです。
高音の後に声を弱く戻せるか。
荒い声の後に澄んだ旋律へ移れるか。
同じ高さでも言葉によって音色が変わるか。

Hiroさんの高音が強いのは、一度だけ大きな音を出せるからではありません。
次の声へつながる形で高音を置けるからです。

参考にするなら、最高音より「同じ声で歌い続けない判断」を聴く

Hiroさんの歌い方から持ち帰りたいのは、無理にハスキー声を作る方法でも、兄弟に似た声を探す方法でもありません。
一曲の中で、声を変える理由を持つことです。

静かなAメロまでサビと同じ圧で歌っていないか。
すべての語尾を同じ長さで伸ばしていないか。
高音だけを見せ場にして、その後の言葉が弱くなっていないか。

Hiroさんは、初期の自分を振り返りながら、一辺倒ではなくなったことを成長として挙げました。
その言葉は、派手な高音の奥にある本質をよく表しています。

細い声を無理に太くするのではなく、細さ、荒さ、透明感、弱さを場面ごとに選び直す。
MY FIRST STORYのHiroさんの歌声は、声質の珍しさだけでなく、同じ声を同じまま使わない判断によって強く聞こえます。

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