アクセル・ローズ(Guns N’ Roses)の歌声の変遷|二つの「You’re Crazy」から、AC/DCとUFOの曲へ

2022年、ロンドンで公演するアクセル・ローズ アクセル・ローズ
Kreepin Deth / CC BY-SA 4.0

アクセル・ローズの初期の歌声を聴くなら、同じ曲を続けて聴く面白い組み合わせがあります。
ガンズ・アンド・ローゼズが1987年と1988年の作品に収めた、二つの「You’re Crazy」です。
片方は速いロック、もう片方はテンポを落としたアコースティックの演奏。
アクセルの声も、曲の進み方に合わせて大きく変わっています。

ここには、年月を重ねたから声が変わった、では説明しきれない違いがあります。
まだ初期の段階から、彼は一つの声色で全部の曲を歌う人ではありませんでした。

**アクセルの歌声の歩みは、声そのものの変化に加え、曲や編成が変わったときに、どんな声で歌うかを選んできた歩みでもあります。**
二つの初期録音から、大きな編成、緻密なスタジオ作品、ほかのバンドの曲へと順にたどってみます。

1987年――速い演奏に、鋭い声をぶつける

1987年のデビュー作『Appetite for Destruction』に収められた「You’re Crazy」は、速いテンポで進む曲です。
ギターもドラムも前へ走り、アクセルの声は高いところから強く入ってきます。
語りかけてから少しずつ熱くなるというより、最初から押しの強い人物が現れるような歌です。

言葉が次々に来るため、聴き手が一つの語尾を味わう前に、次のフレーズへ進みます。
その速さと高い声が組み合わさって、落ち着きのなさや反発する勢いが生まれています。
アクセルの鋭い声と、初期ガンズの疾走する演奏が、同じ方向へ向いている録音です。

ただ、この声だけでデビュー期のアクセルを代表させると、もう一方の面が抜け落ちます。
同じアルバムの「It’s So Easy」では、低い声が前に出ます。
初期の彼には、すでに高く叫ぶ声と、低く押し出す声の両方がありました。

1987年のインタビューでも、アクセルは「It’s So Easy」のような曲と、オーケストラを伴う美しいバラードのどちらも、自分にとっては表現なのだと話しています。
荒いロックを出発点に、あとから別の音楽を知ったというだけではないのです。

1988年――同じ歌が、ゆっくり言葉を聞かせる曲になる

翌1988年の『G N’ R Lies』には、アコースティック版の「You’re Crazy」が収められます。
同じ題名の曲でも、1987年版と比べるとテンポが大きく違います。
アクセルの歌にも、低めの声で言葉を運ぶ時間が生まれています。

速い版では、次の言葉へ向かう勢いが目立っていました。
ゆっくりした版では、言葉を言い終えたあとにも音が残り、アクセルがどんな調子で言っているかに耳が向きます。
低い声で含みを持たせたあとに、鋭い声を出すと、その変化も目立ちます。

アコースティック版だから、曲全体がおとなしくなったと考えると、少し違います。
速度で押していた歌が、声を低くしたり、急に強くしたりすることで、別の迫力を作っているのです。
急いで言い返す人から、相手の反応を見ながら言葉を投げる人へ変わったようにも聞こえます。

レコード会社の担当者トム・ズータウは、バンドがデビュー作の完成前から、電気楽器のライブと並行してアコースティックの演奏もしていたと振り返っています。
こうした演奏は、売れたあとに急に足した路線ではありませんでした。
『G N’ R Lies』は、もともと持っていた別の歌い方を、まとまった形で聴ける作品でもあります。

同作の「Patience」も、穏やかな声から強い声へ進む曲です。
その変化が歌の感情をどう動かすかは、アクセル・ローズの歌い方で詳しく扱っています。

1993年5月、イスラエルで公演するアクセル・ローズ
1993年5月、イスラエルで公演するアクセル・ローズ。写真:אליבאבא (Hebrew Wikipedia) / CC BY-SA 3.0

1991〜1992年――大きな編成の中で、長い曲を歌う

1991年の『Use Your Illusion I』には、「November Rain」が収められます。
ピアノから始まり、歌、ギター、重なった伴奏が、長い時間をかけて大きな曲を作っていきます。
「Patience」のように少ない楽器で声を目立たせる場面とは、歌手が立つ場所が変わりました。

ここでは、声を一度強くすれば曲が終わるわけではありません。
抑えて歌う部分、旋律を大きく歌う部分、ギターが前へ出る部分が続くため、アクセルの歌も長い展開の中に置かれます。
強さを出すことと、その強さへ至るまでを歌うことの両方が、曲の聴きどころになっています。

1992年のRolling Stoneの取材では、ライブの編成にもホーン、コーラス、もう一人の鍵盤奏者が加わったことが話題になりました。
初期の簡素な姿を好む人がいると聞かれたアクセルは、今のほうがエネルギーは大きいと答えています。
「November Rain」をピアノで弾きながら、新しいメンバーと同じステージにいることをうれしく感じたとも話していました。

荒々しさを保つ方法は、人数や音を減らすことだけではなかった。
歌を抑えて始め、伴奏が大きくなるところで声を張り、ギターが前へ出れば歌を休む。
大きな編成の中で、こうした歌い方の切り替えも、長い曲を聴かせるために働くようになります。

2008年――本人が気に入っていたのは、主役の声だけではなかった

長い制作期間を経て、2008年に『Chinese Democracy』が発表されます。
この作品で自分の歌が最もよくできた部分を聞かれたアクセルは、曲全体を一つ選ぶ答え方をしませんでした。
「There Was a Time」の終盤と、「Catcher in the Rye」のバックボーカルを挙げています。

高い声で前へ出る歌手、という印象からすると、後者は少し意外でしょう。
歌詞を主に伝える歌の後ろで、別の旋律や響きを加える声にも、本人が手応えを感じていたのです。

バックボーカルは、主役の歌と同じ言葉を同じ高さで歌うだけの役割ではありません。
違う高さや動きの声が加わると、主旋律だけでは生まれない厚みや広がりを作れます。
いくつもの声色を使えるアクセルにとって、録音で声を重ねることも、その力を生かせる場だったと考えられます。

「This I Love」のような大きなバラードもあるこのアルバムでは、どこまで高い声が出るかだけでなく、主役以外の声をどう組み合わせたかにも、聴く楽しみがあります。
初期の一曲の中で見せていた声の落差が、一曲の中で声を録り重ねる作り方でも働いているのです。

2016年――AC/DCには、先に親しまれていた二人の歌があった

2016年、アクセルはAC/DCのツアーに参加します。
ブライアン・ジョンソンが聴力の問題でツアーを続けられなくなり、残る公演で歌うことになったためです。
ガンズの代表曲を歌うときとは違い、観客の耳には、ブライアンや、以前の歌手ボン・スコットの声が残っています。

アクセルは本番前のNMEの取材で、二人の歌手が曲ごとに違うことをしていて、その歌い方によって曲の個性ができていると話しています。
ただ高い音が出せれば、どの曲も同じように歌えるという考え方ではありませんでした。

とくに「Hells Bells」は、これまで歌う必要があった曲の中で最も難しいと感じていた曲です。
リハーサルでうまく歌えたときには、それが楽しみになったと説明しています。
長年知られた歌手になってからも、ほかの歌手の曲には、改めて取り組む難しさがありました。

ガンズの曲なら、アクセルの声そのものが、聴き手にとっての基準です。
AC/DCでは、先にある歌の特徴を踏まえたうえで、自分の声を使う必要がある。
自分の曲を作るときとは異なり、ほかの歌手が残した特徴をつかんで歌う仕事も担ったのです。

2016年9月、ワシントンD.C.でAC/DCと共演するアクセル・ローズ
2016年9月、ワシントンD.C.でAC/DCと共演するアクセル・ローズ。写真:MrBark / CC BY-SA 4.0

2024年――三曲を歌って、一曲を残す

2024年には、ギタリストのマイケル・シェンカーの作品『My Years with UFO』に参加しました。
シェンカーがかつて在籍したUFOの曲を、さまざまな歌手や演奏者と録り直す企画です。
アクセルが歌った「Love to Love」は、1977年のUFOのアルバム『Lights Out』に収められていたバラードでした。

この録音について、シェンカーはGuitar Worldの取材で、アクセルは最初に三曲を歌っていたと明かしています。
しかし、「Only You Can Rock Me」と「Too Hot to Handle」の出来を本人が気に入らず、「Love to Love」に絞ったといいます。

ここで分かるのは、歌えた曲を全部そのまま発表したわけではない、ということです。
アクセルは、一曲ごとの歌に納得できたかどうかを確かめ、発表するものを選んでいました。
シェンカーも、残った「Love to Love」を高く評価しています。
同じ企画で三曲を歌っても、録音ができたことと、本人がその歌を気に入ることは別だったのです。

鍵盤を含む伴奏が長く展開し、ギターの大きな見せ場もある曲の中で、アクセルは旋律を歌います。
初期の速い「You’re Crazy」と同じように言葉を押し込む場所ではありません。
長く続く曲の中で歌を届けるという点では、ガンズのバラードで見せてきた表現にもつながります。

曲が変わるたびに、声の使い方も変わる

アクセルの歩みを二つの「You’re Crazy」からたどると、声の違いを全部、年齢だけで説明することはできないと分かります。
初期の短い期間にも、速い演奏へ鋭く入る声と、テンポを落として言葉を聞かせる声がありました。
その後は、大きな編成で長い曲を歌い、スタジオで声を重ね、別の歌手が歌った曲にも取り組んでいます。

2025年には、ガンズとして「Nothin’」と「Atlas」も発表されました。
新しい作品が加わる一方で、歌手がどんな声を使うかを考える手がかりは、過去の録音にも豊富に残っています。

速い曲では勢いになる鋭い声が、ゆっくりした曲では切迫した感情になる。
低い声は、高い声へ進む前の通過点になるだけでなく、言葉をじっくり聞かせる主役にもなる。
アクセルの歌声を聴き比べる楽しさは、同じ人の声が、曲の中で違う役割を担うところにもあります。

今入れる? 近くで入りやすい飲食店がわかる混雑予報マップ

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました