ジョンヒョンの声を「力のある高音」とだけ捉えると、ソロ作品にある柔らかさを説明しきれません。
声を強く響かせるところに加えて、軽くなるところや、相手の言葉を受け取るところにも、表現の面白さがあります。
その使い分けを支えているのは、どのくらい高い音を出すかだけでなく、誰が誰に、どんな気持ちで歌っているのかという考え方です。
裏声、息、リズム、相手の声との関係から、ジョンヒョンの歌い方を見ていきます。
「Crazy」の裏声は、声の細さを生かす
「Crazy」では、地声と裏声を行き来する歌い方が使われています。
同じ曲の中で声の質感を変えられることが、表現の幅になっています。
すべてを同じ太さで歌うのではなく、声が軽くなるところにも役割があるのです。
この曲を、ジョンヒョン一人の歌唱だけで考えないことも大切です。
共演するアイアンの声は太く荒々しく、ジョンヒョン自身が、その声と自分の細い裏声との相性を説明していました。
声の違いが大きいからこそ、互いの特徴が分かりやすくなる。
裏声の細さも、この組み合わせでは持ち味になります。
また、『BASE』でユンナと歌った「Love Belt」は、温かく甘い雰囲気を持つ曲です。
同じアルバムでも、共演する相手と曲が変われば、声を組み合わせたときの印象は変わります。
ジョンヒョンの歌い方を知るには、どこまで強く歌えるかに加えて、誰と、どんな空気を作っているかを見ると理解が深まります。
息にも、泣く・笑う・驚く表情がある
ジョンヒョンは、感情を表すときに、声の音色や太さだけでなく呼吸を使うことを重視していました。
泣くとき、笑うとき、驚くときでは息のあり方が違い、その違いを声の表情につなげられるという考え方です。
歌詞を書く段階から、歌う人物の性格と、言葉を受け取る相手の状況を考えていました。
この説明から分かるのは、息を多く混ぜれば必ず切なくなる、といった一種類の方法を目指していたわけではないことです。
同じ短い言葉でも、笑いながら伝えるのか、言いよどんで伝えるのかで、その人の気持ちは変わります。
声の音色を変える前に、そもそもどんな状態で言葉が出てくるのかを考える。
ジョンヒョンのいう呼吸の表現は、そうした人物の描写と結びついています。
『She Is』には、一人の青年が9曲を歌うという設定があります。
曲ごとに場面を変えながら、同じ人物として歌う。
そこでも声が担うのは、その人物の気持ちや態度です。

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「AURORA」――複雑な音楽の中で、裏声をゆったり使う
「AURORA」では、ジョンヒョン本人が、ファルセットを多く用いた歌唱について説明しています。
マクスウェル、プリンス、ディアンジェロらから受けた影響を、自分の曲の旋律やリズム、ソウルの感覚に取り入れた作品でした。
裏声の軽さを、音楽の流れの中で生かそうとしていたことが分かります。
本人はこの曲を、以前の「NEON」を発展させたものとも話しています。
和声やリズムには複雑な部分がある一方、歌は少し余裕を持って歌いたかったというのです。
伴奏に細かな動きがあるからといって、声まで同じ密度で動かす必要はない。
ここでは、音楽の複雑さと、歌う人の余裕が一緒に成り立つように考えられています。
「Crazy」の裏声を、相手の太い声との対比として捉えるなら、「AURORA」では、リズムや和音の中に置かれた声として捉えられます。
同じ裏声という言葉でも、曲の中で働く理由は一つではありません。
声の種類を知ったあとに、その声が何と組み合わされているかまで見ると、ジョンヒョンの選択がより具体的になります。
一人の声と、重ねたコーラスが作る厚み
ジョンヒョンは、自分で歌うことに加えて、複数の声を組み合わせる音作りにも関わっていました。
「Hallelujah」では、アメリカでクワイアのコーラスを録音しました。
本人は、韓国にいながら録音の様子をリアルタイムで確かめられたことに、技術の進歩を実感したと話しています。
完成した曲で感じる厚みには、主旋律を歌う一人の声だけでなく、こうした別の声の重なりも関係しています。
一人の声を太くするのとは、別の音作りです。
主旋律の歌い方と、後ろに重ねたコーラスの働きを分けて考えると、声の迫力がどこから来るのかを捉えやすくなります。
「Lonely」で選ぶ、会話としての歌
テヨンとのデュエット「Lonely」では、二人が会話するように歌います。
ピアノと弦を中心に楽器を絞り、一緒にいても寂しいという感情と、一人でいるほうが楽だという感情を交わす曲です。
この設定では、もう一人の歌手がいること自体が、歌の内容につながっています。
テヨンを選んだのは、彼女が歌手として持つ孤独な雰囲気や、確かな自分の世界が、この言葉に合うと考えたからでした。
一方、テヨンは難しい曲が来るのではと予想していたものの、実際には心地よい印象を受けたと話しています。
強い歌唱力を持つ二人が、その力を競う曲を選んだわけではありません。
どんな声で物語を伝えたいかという、ジョンヒョンの意図が先にあったのです。
一方、「End of a Day」は、ピアノと柔らかな歌声で、一日を終えた人に語りかける曲です。
同じ穏やかさでも、相手と気持ちを交わす「Lonely」と、疲れた相手をねぎらう歌とでは、声が向かう先が違います。
強弱を決める前に、相手との関係がある。
この視点は、ジョンヒョンの静かな歌を理解する助けになります。

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華やかなアドリブにも、決めている音と即興がある
歌詞の代わりに短い音節などで歌うスキャット。
「Sherlock」でのスキャットについて尋ねられたとき、ジョンヒョンは、毎回決まった音を歌っているため、即興のスキャットと呼ぶには無理があると答えていました。
一方、ソロコンサートでは、曲によってもっと即興的に歌うこともあると説明しています。
自由に聴こえる歌唱でも、あらかじめ作ったものと、その場で生み出すものを区別していたのです。
この話は、技巧の見方を変えてくれます。
細かい音が続くことだけで、その場のひらめきとは限りません。
曲の中に収まるように音を選び、何度も再現することも表現です。
ジョンヒョンは、決めた形を歌う面白さと、その場で動かす面白さの両方を持っていました。
Sherlock――SHINee WORLD IV公演版(2016年発売のライブ音源)
彼の歌い方を貫いているのは、持っている声や技術を全部見せることより、曲の人物と場面に合うものを選ぶ姿勢です。
細い裏声が生きる共演もあれば、呼吸が表情になる場面もあり、別の声を重ねて作る厚みもある。
その一つ一つが、ジョンヒョンの歌の強さと親密さを支えています。
こうした選択が、SHINeeでの活動からソロ作品へどう広がったのかは、ジョンヒョンの歌声の変遷でたどっています。

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