ナノの力強さは、いつでも声を押し出し続けることから生まれているのでしょうか。
曲作りや録音の話をたどると、歌いやすい高さを自分で選び、言葉を明瞭にし、相手の声に刺激されるなど、違う形で歌を支えていることが分かります。
激しさと自然さを、曲に合わせてどう使うのか。
具体的な作品から、ナノの歌い方を見ていきましょう。
音符に、声で表情を加える
堀江晶太は、ナノが旋律に歌詞と声を加えると、想像していた以上に魅力が増したと振り返っています。
音符に情感が入り、作曲時にはなかった表情が生まれたのです。
「FIGHT SONG」でも、その声が作る表情をナノへ任せようと考えました。
音の高さを正しく追うことに加えて、一つの音をどんな言葉として届けるかが、歌の印象を動かします。
ナノの歌を考えるときも、声量の大小だけでなく、旋律に表情を与える働きへ目を向けると、作り手が惹かれた部分が分かりやすくなります。
英語の滑らかさと、日本語の明瞭さを大切にする
ナノは、洋楽と邦楽の両方の良さを歌に残そうとしています。
日本語まで英語のような響きへ寄せるのではなく、それぞれの言葉の良さを生かすことを重視してきました。
どちらの言葉でも、歌として伝わる形を探す姿勢です。
その具体例が、2018年の「ウツシヨノユメ」です。
和の響きを取り入れた曲で、テレビで流れる部分は日本語、2番からは英語も使っています。
ナノは祭りのような楽しさを意識しながら、日本語ははっきり分かるように歌うことを大切にしました。
勢いのある曲でも、言葉の輪郭まで勢いで流してしまわないのです。
英語を加えたことにも、海外の人へ和風の曲を届けたいという考えがありました。
異なる言葉が入る場所は、単なる飾りではありません。
日本語の美しさを伝える部分と、自分に馴染む英語で表現を広げる部分が、一曲の中で役割を持っています。
歌いやすい旋律を選ぶと、声を押す必要が変わる
『ANTHESIS』の「All I Need」など、中西航介と作った3曲では、ナノ自身が旋律を書きました。
自分に馴染む音の動きや高さを選べたため、本人はそれまでで最も力を抜いて歌えたと話しています。
「All I Need」の大人びた曲調を支えるのは、歌いやすい旋律そのものです。
発声を考えるときにも、この順番は大切です。
同じ歌手でも、音の高さや動きによって、声に求められる仕事は変わります。
力強い声を持つから難しい旋律をどれだけでも押し切れる、と考えるより、その声が自然に働く曲をどう作ったかに注目したいところです。
「All I Need」を聴くときは、大きな見せ場だけを探すより、旋律が進む間の声の運びに耳を向けてみてください。
声量を上げる場面だけが表現なのではなく、力を抜いて言葉を置けることにも、歌の余裕は表れます。
本人が語る歌いやすさを手がかりにすると、激しい曲との違いも捉えやすくなります。
伴奏を減らして、飾らない声で歌う
2017年の「GALLOWS BELL」には、ピアノと声だけで録った版があります。
ナノはピアノと一緒に歌って録音し、格好をつけずに歌えたと話しました。
大きな音で歌を包むことができない編成で、自分の素直な声を作品として残しています。
ここでは、歌声の迫力を伴奏の大きさと分けて考えられます。
強いドラムやギターがなくても、一つの旋律を人へ届けられるか。
声だけを特別なものとして取り出すより、ピアノと歌が一緒に進む関係へ耳を向けると、この版を選んだ意味が見えてきます。

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優しく歌うときにも、自分らしさを探す
『NOIXE』の「Circle of Stars」では、優しい歌い方が新たな課題になりました。
爽やかなJ-POPの表現は得意な領域ではなく、ナノは優しさと自分らしさの両立に悩んでいます。
作曲したSUNNYに、初心者へ教えるように指導してほしいと頼み、歌の表現を探しました。
十年の経験があっても、柔らかな曲をいつもの歌い方で処理できるとは限りません。
優しく歌うという言葉だけでは、曲に合う表現を決められないことが分かります。
歌い慣れた方法をいったん脇に置く姿勢も、表現の幅を支えています。
カバーでは、原曲への愛情と自分の声を結びつける
同じ『NOIXE』のカバー盤に入った「Rolling Star」では、アヴリル・ラヴィーンを思わせる方向で、ロックの感触を強めて歌ったと本人は説明しています。
原曲の歌い方をなぞることだけを正解にせず、自分にしっくりくる歌のイメージを選んでいるのです。
英語へ置き換える作業も、その声の選択と結びついています。
「深い森」では、元の日本語が持つ情景を、英語として自然で、旋律にも馴染む言葉へ移すことに悩みました。
意味が合う訳を作るだけでは、歌としては完成しません。
言葉を音へ乗せたときの自然さまで考えることが、ナノの英語カバーを支えています。
「ENDGAME」では、一緒に歌う相手が声を動かす
「ENDGAME」のコーラスは、同じマイクを使ったり、同じ空間でマイクとの距離を変えたりして録っています。
ナノは、一緒に歌うと自分も刺激されると感じました。
その場での反応を残す録音です。
終盤のスクリームは、Survive Said The ProphetのShowが担当しています。
ナノの声と共演者の声、それぞれの役割に注目すると、曲が生む強さをより深く捉えられます。
一方、「Do or Die」の録音では、思うように歌えず、自分を追い込みすぎた場面もありました。
いったん休み、同席していた堀江晶太と話した後に、歌がうまく進んだとナノは振り返っています。
感情の強い歌を作ることは、本人を追い詰め続けることと同じではありません。
一人で抱えた難しさを言葉にすることも、同じ空間で誰かと声を合わせることも、歌の選択を変えています。
声の強さは本人の持ち味でありながら、その力を引き出す過程には、作曲家や共演者とのやり取りがあります。
完成した歌の迫力の奥に、そうした具体的な録音の場面があるのです。
ナノらしさは、同じ強さで歌い続けることではない
言葉を明瞭に届ける曲、自分に馴染む高さで歌う曲、伴奏を減らして声を見せる曲。
ナノは、そのたびに同じ方法で歌を成立させているわけではありません。
激しい声だけを真似るより、曲に必要な力と自然さを選ぶところに、この歌い方の面白さがあります。
こうした選択が増えてきた過程は、ナノの歌唱変遷でもたどれます。







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