竹内朱莉の歌唱変遷|歌い込んで育てた表現と、ソロで選び直した声の感覚

2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA) シンガー
2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA)

竹内朱莉の歌唱をたどると、歌を繰り返すうちに表現を育てていく姿と、慣れたはずの歌をもう一度整え直す姿が見えてきます。
スマイレージ、アンジュルムで実演を重ね、ギター一本との共演も経験した竹内は、卒業後のソロ録音では意外な難しさに直面しました。

録音後に歌い込んで表現が増え、違う伴奏でも歌を成立させ、久しぶりの録音では自分の感覚に合うキーを探す。
歌い慣れた曲への向き合い方を、新しい場面に合わせて選び直してきたのです。

『愛だろ、やっぱ!』(2024年)のMV。

スマイレージからアンジュルムへ――歌い込むことで育った表現

竹内は2011年、スマイレージのサブメンバーに選ばれ、同年に正式メンバーとなりました。
後年のnon-noのインタビューでは、スマイレージ時代に47都道府県を回ったツアーを振り返り、日々歌って踊るうちに、自分たちでも気づかないまま実力がついたと話しています。
周囲から歌やダンスを評価される機会が増えたことも、その時期の記憶として語りました。

当時の活動を振り返る中では、他のグループとの合同イベントで、観客の反応の差を感じていたことも話しています。
竹内によれば、注目されにくいのなら人目を気にせず思いきりやろうと、ステージでの振る舞いも変わっていきました。
そこへ、毎日のように歌って踊るツアーが重なります。
人前で経験を積むことと、ステージで自分たちをどう出すかを探すことが、一緒に進んでいたのです。

2015年の「大器晩成」では、積み重ねた経験が、歌詞に込める気持ちとも結びつきます。
当時のBillboard JAPANのインタビューで竹内は、下積みのような時期を経験したからこそ、この曲には気持ちを込めて歌えると説明しました。
それまで時間をかけて積み上げてきた結果を、新しいシングルが上回りそうだと聞いた驚きも語っています。
手応えがすぐには得られなかった経験と、ようやく周囲の反応が変わり始めた実感が、曲に重なっていました。
グループがアンジュルムに変わったこと以上に、それまでの道のりが歌う本人にとって曲の意味を具体的にしていたのです。

歌い込むことは、その後も録音と実演の違いを生みました。
2023年には、CDに残る歌はまだライブで歌い込んでいないため、自分には淡々として感じられると話しています。
後から聴くと恥ずかしく思う一方で、ライブではアレンジを加えすぎているのかもしれないと、笑い交じりに振り返りました。
一度録った形をそのまま再現するだけでなく、曲と付き合う時間の中で歌い方を動かしていたことがわかります。

2021〜2022年――ギターとの共演と、客席へ開かれる歌

2021年のバースデーイベントでは、堂島孝平のギターと共演し、「七転び八起き」や「私の心」を歌いました。
きっかけは、共演した番組で竹内がイベントへの出演を呼びかけたことでした。
その後、堂島からも確認の連絡が入り、一緒に歌う機会が実現します。
2023年の対談で堂島は、このときはほとんどリハーサルがなく、竹内もギター一本で歌う形には慣れていなかったと振り返っています。
それでも本番を成立させた姿に、ステージに立つ人としての誇りを感じたと話しました。

竹内自身も、この共演が楽しく、また機会があればやりたいと思ったと語りました。
この二曲は、グループの持ち歌を、一人の歌とギターで届ける作品にもなったのです。
竹内には慣れない編成で歌う経験が加わり、堂島には、歌い手としての竹内の姿が強く残りました。

翌2022年には、堂島がアンジュルムに「愛すべきべき Human Life」を提供します。
まだ観客が声を出せない時期に、竹内たちは、いずれ声援が加われば盛り上がるだろうと期待していました。
2023年の対談では、実際に声援が戻り、公演の終盤や最後を担う曲になったと話しています。

竹内がこの曲で気に入っていたのは、少しふざける余地があり、普段の自分たちをステージに出せることでした。
激しく踊る曲が多い中で、肩の力を抜いた表情も見せられる。
ギターとの共演で見えた一人の歌唱力に加え、客席の反応を受けながらグループの持ち味を出す曲も育っていきました。

『愛すべきべき Human Life』(2022年)のMV。

2023年――「行かなくちゃ」で見えた、一人で歌う先

卒業時のソロ曲「行かなくちゃ」は、堂島が作詞作曲を担当しました。
もとはグループへの候補として渡されていたデモで、竹内の卒業曲として最初から作られたものではありません。
竹内がデモを聴いて気に入った曲に、卒業という場面に合わせた言葉が加わりました。
堂島は、竹内個人の卒業だけに閉じず、新しい環境へ踏み出す人にも届きながら、竹内が歌うからこそ成立する曲にしたいと考えていました。
本人の普段の言葉に通じる、わかりやすい歌詞にすることも大切にしています。

2023年6月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:柿沼琉)
2023年6月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:柿沼琉)。
画像出典:写真掲載元

仕上がった歌について、堂島は自分の想像を大きく上回ったと話しました。
ミックスのスタジオで歌のテイクを聴くたびに、シンガーとしての良さを周囲に伝えていたという証言が残っています。
曲を書く段階のイメージを、歌い手がさらに広げたのです。

『行かなくちゃ』(2023年)の公式音源。

一方、竹内は当初、卒業後は歌を終えるつもりだったと明かしています。
周囲から歌を続けてほしいと言われたことや、最後のツアーで再び観客の声援を受けたことが、その考えを動かしました。
2023年6月の対談時点では、まだ続けると決めたわけではありませんでしたが、もう少し歌いたい気持ちが生まれていたのです。

最後のツアーで声援を受けたときには、この感覚を味わえるのが残りわずかであることを寂しく感じたとも話しています。
歌い続ける理由は、周囲の評価だけでなく、観客の前で歌う本人の中にも戻ってきていました。
「行かなくちゃ」は、卒業の区切りに置かれた歌であると同時に、一人の歌い手としての声を制作側が強く評価した作品でもあります。
その評価と、本人が実演で感じた楽しさが、卒業の先にも歌う可能性を残しました。

2024年から――感覚を取り戻し、自分のキーで歌う

2024年12月、竹内は「愛だろ、やっぱ!/泣いてOVER」でソロデビューしました。
ところが久しぶりのレコーディングは、最初から思いどおりには進みませんでした。
2025年のSTREAMの取材では、年中ライブをしていた頃と比べて、体力だけでなく喉の使い方も衰えたように感じたと振り返っています。
録音の始めには、たいせいから以前との違いを指摘され、30分ほどウォーミングアップをしたそうです。

これは、以前の歌唱経験があっても、同じ感覚ですぐ歌えるとは限らなかったという本人の実感です。
積み重ねてきた経験を、その日の録音で使える状態に戻す時間が必要になりました。

2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA)
2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA)。
画像出典:写真掲載元

ananのインタビューでは、テイクを重ねて慣れてからは、歌いやすいようにキーを調整でき、楽しく歌えたとも話しています。
グループの曲を歌う経験に加えて、自分一人の声に合わせて曲を整える余地が、ソロの録音にはありました。
感覚を取り戻すだけでなく、歌いやすい条件も選び直していたのです。

新しい二曲は、表す人物像も同じではありません。
竹内は「愛だろ、やっぱ!」の元気な曲調に、グループ時代とは違う自分らしさを感じていました。
一方の「泣いてOVER」は、それまであまり歌ってこなかった本格的な失恋の歌です。
ソロでは、自分に近い明るさを出す曲と、なじみの薄い感情を扱う曲の両方が、一枚のシングルに並びました。

収録曲「お好きにどーぞ!feat.竹内アンナ」では、竹内アンナと作詞にも参加しています。
ただ、長く歌ってきた経験が、そのまま言葉を生み出す容易さにつながったわけではありません。
本人はフレーズを考えるのに苦労したと振り返りました。
また、歌のフェイクも思い浮かばなかったと話しています。
決まった曲を歌い込んで表現を育てることに加え、自分で新しい言葉や歌の動きを出す難しさにも出会ったのです。

『お好きにどーぞ!feat.竹内アンナ』(2024年)の公式音源。

2025年3月には、竹内アンナの「atELIER」にゲスト出演し、二人で「愛だろ、やっぱ!」や「お好きにどーぞ!feat.竹内アンナ」を披露しました。
encoreの公演記事では、アンナが朱莉の声のはつらつとした抜けの良さを評価した言葉も紹介されています。
以前からの共演経験は、ソロの持ち歌を別の歌い手と重ねる場面へ続いています。

竹内朱莉の歌唱の歩みには、長く歌ってきたからこそ育つ表現と、環境が変わるたびに向き合う課題があります。
歌い込んで表現を増やすことも、慣れない編成で歌うことも、声の感覚を取り戻してキーを選ぶことも、その時々の曲を届けるために必要でした。
繰り返す中で育った歌を、新しい場面でまた整える。
その往復に、竹内の歌唱の変化があります。

音の覚え方やハモリ、リズムへの意識は、竹内朱莉の歌い方で詳しく扱っています。

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