+α/あるふぁきゅん。の歌い方とは?「再教育」の一人二役と、言葉で変わる声

+α/あるふぁきゅん。 シンガー

「再教育」で一人二役のように歌う、あるふぁきゅん。
何十種類もの声を自在に出し分けているように見える歌手だ。
ところが本人は、大きく分ければ声は三種類くらいで、そこに小さな工夫を加えているのではないかと話す。
数を増やすことより、誰がどんな気持ちでその一言を言うかを決めることが、彼女の歌い方を理解する近道だ。

多声のカバー、物語を想像する歌、録音現場で学んだ言葉のニュアンス、そしてライブのためのキー選び。
場面ごとに異なる判断を、本人が説明した方法から見ていく。
活動の時期による考え方の変化は、別記事の彼女の歌唱変遷で扱っている。

声を変える前に、「どう言うか」を決める

2017年の取材で、彼女は声色を意識して変えることは認めながらも、力んで無理やり別の声を出すわけではないと説明した。
遠くにいる人を呼ぶと自然に声が太くなるように、「こういう声を出す」より「こういう言い方をする」と考える方が変えやすい、という例えである。
声を機械の設定のように切り替えるのではなく、伝える状況から出発する方法だ。

「再教育」は、その発想が分かりやすい。
鏡音リン・レンの二人で歌う原曲を、一人で二人らしく成立させるには、ただ高い声と低い声を交互に出すだけでは足りない。
どちらが話し、どちらが応じるのかという関係を聴き手に感じさせる必要がある。
本人のいう「言い方」に注目すると、声の高さに加えて、一言の勢いや相手との距離も聴きどころになる。

「しんでしまうとはなさけない!」でクプラと共演したときも、単に二人が並んで歌ったのではなかった。
クプラの台本に彼女が意見を出して歌詞を作り、クプラの仮歌、彼女の本録音、クプラの本録音という順で掛け合いを仕上げた。
声の面白さは、台詞の順番と相手から返ってくる言葉を設計する仕事に支えられている。

二人が同じ部屋で一度に歌った録音ではなく、相手の歌を受けて別々に仕上げている点も面白い。
言葉を投げる側と受け止める側を、録音の順序の中で確かめられる。
「再教育」では一人の中で作った人物同士の関係を、こちらでは実際の相手の声と組み合わせている。
声色の多さだけでなく、やり取りが会話として届くことが重要になるのだ。

+α/あるふぁきゅん。
2017年の+α/あるふぁきゅん。
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写真出典:2017年の本人取材写真

曲の人物に入れないとき、想像を作り直す

同じ「役を想像する」方法でも、すぐにうまくいくとは限らない。
彼女は「桜ノ雨」の詞を読んだとき、描かれた青春を自分は経験していないと感じ、歌いにくかったと話している。
何度も曲に触れるうちに、自分が憧れる学生生活を思い描くようになり、その景色から歌へ入れたという。
思い出のない歌を、経験したふりで処理したわけではない。

オリジナル曲「ENDLESS“I”」では、もがいて光を求める詞から自分の中に映像を作り、そこへ声を置いたと説明した。
カバーでは作詞・作曲者が持つ景色を想像し、オリジナルでは自分の景色をより自由に描ける。
この違いは「カバーは制限、オリジナルは解放」と単純化できない。
「桜ノ雨」のように、他人の詞の中でも自分の感情が届く場所を探せるからだ。

大きな声だけでなく、言葉の細部に感情を置く

「ガール&ラグドール」の録音では、作曲したGomから、正確に歌うだけでなく言葉の端々のニュアンスが感情を伝えると教わったと本人が語る。
いつもよりテイクを重ねたという点も大切だ。
声色の変化や高音はすぐ耳に残るが、一語にどんな表情を与えるかには、録り直して選ぶ作業がある。

一方、録音の完成度を動画投稿だからと軽く扱ってはいない。
彼女は「ECHO」を投稿用にスタジオで録り、その録音をアルバムにも使ったと話している。
曲を演じる力と、作品として残すための精度の両方を求める姿勢だ。

2016年の取材では、準備は家で曲の景色を想像することから始まり、スタジオで二、三回ほど通して歌うことで雰囲気をつかむと説明していた。
当時は、一回の録音で一曲に取り組む形だったという。
最初から細部だけを切り分けるのではなく、一曲を通した感覚をつかんでから言葉の表情へ進む。
普段は録り直しが多くない彼女が「ガール&ラグドール」ではテイクを重ねたという話も、全体の雰囲気に加えて、細かなニュアンスを選び直した場面として理解できる。

だから歌い方を「地声か裏声か」「何オクターブ出るか」だけで説明すると、肝心の言葉の選択が抜けてしまう。

「-ERROR」は、録音と舞台で同じ条件にしなかった

キーの高い歌を力で押し通すのが彼女の持ち味、という見方にも、本人の説明は別の角度を与える。
超パーティー2022で歌った「-ERROR」は、本当は最も届けたい曲だったが、高くて難しいため候補では三番目に置いていた。
本人が特に難しいと話したのは、ゆったりした曲調に見えて息を継ぐ時間が少ないことだ。

舞台ではキーを二つ下げ、それに合わせてコーラスも録り直し、練習した。
録音なら休みながら高い音へ挑めるが、ライブは続けて歌わなくてはならない、と本人は区別する。
キーを下げた事実は「原曲の高さでは歌えなくなった」という意味ではない。
一曲を客席へ最後まで届けるため、録音とは別の条件を選んだのである。

ここでは、最高音だけを取り出して難易度を考えると、大事な点が抜ける。
高い音の後にも歌詞が続き、次の息を入れる場所が少なければ、一瞬その音が出せても一曲を運ぶ余裕は生まれにくい。
本人がキーと息継ぎの両方を挙げたことからも、この曲では言葉をつなぎ続ける負担が大きかったことが分かる。
コーラスまで準備し直したのは、その場しのぎで音を下げるのでなく、新しい条件で歌を完成させるためだった。

同じ取材で、ワンマンでは15〜20曲を歌うため、短いイベントの1、2曲と同じ全力の出し方はしないとも話した。
歌い方は、一曲の中だけで完結しない。
曲順と会場、歌う長さが変われば、どこに力を配るかも変わる。

+α/あるふぁきゅん。
2022年の+α/あるふぁきゅん。
(右)といかさん。
写真出典:2022年の超パーティー写真

多彩な声の中心には、一つの判断がある

彼女はカバーを選ぶ際、キーだけでは決めず、曲の雰囲気と自分の得意なところをどれほど出せるかで判断すると言う。
ファンの記憶が集まる超パーティーでは、以前いかさんと歌った「虎視眈々」を選んだ。
別の客席には別の曲が必要だと考えたからだ。

一人二役の遊び、詞の人物を探す想像、一語ごとの表情、ライブでのキー変更は、一見別々の技術に見える。
だが彼女の説明をつなぐと、その場で何を誰へ届けたいかを先に決め、声をその目的に合わせるという一つの判断に戻る。
多声が印象に残る歌手だが、声の数そのものが歌の答えではない。

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