土屋アンナは、持っている声を生かしながら、学べる技術を加えたいと話してきました。
「rose」での歌への向き合い方と、後年に語った声の使い方から、その考えを見ていきます。
ANNA inspi’ NANA(BLACK STONES)「rose」(2006年)のMV。
「rose」は、きれいに整えるより思いを出す
アニメ『NANA』のオープニング曲「rose」について、土屋アンナは、自分の心の中にあるものを思いきり歌える曲にしたかったと語っています。
ナナが本気で歌う画に合わせ、自分も本気で、ライブと同じように思いを出して歌ったという説明でした。
歌をきれいに整えることより、その場の気持ちを前に出す。
本人の話は、この曲の勢いを、歌うときの姿勢から捉える手がかりになります。
一曲を通して歌い、その流れを選ぶ
勢いを大切にする一方で、録音では納得できる歌を何度も探していました。
2005年の『Taste My Beat』をめぐるBARKSの取材で、土屋は、もっとよくしたいと思って繰り返し歌うことを話しています。
「FROZEN ROSE」では、最初から最後まで通して歌ったテイクを複数録り、その中からよいものを選んだそうです。
こちらの「FROZEN ROSE」は、アニメ『NANA』の「rose」とは別の曲です。
一曲を通して録る方法では、ある一音の仕上がりだけでなく、歌い出しから結びまでの気持ちの流れも残ります。
土屋が大切にする、思いを出して歌う感覚を、録音の中でも生かそうとしていたことがうかがえます。
同じ取材では、「in my hands」の少し柔らかい声について聞かれ、こうした曲があると落ち着くと答えていました。
強い曲だけを並べるのではなく、柔らかな歌も一枚の作品の中に置いています。
土屋アンナの歌を聴くときは、強い声の印象だけで決めつけず、曲が変わったときにどんな表情を選ぶかにも耳を向けたいところです。
持っている声に、学んだ技術を加える
2014年、Billboard JAPANで行われたゴスペル指導者・北出治男との対談では、ブラックミュージックをまねるだけでなく、吸収できる技術を学び、自分に加えたいと話しています。
その前提にあるのは、自分が持っている声を生かしたいという考えでした。
好きな歌の感動を、自分の中にも取り入れたい。
そのために、声の持ち味と学ぶことを、両方大切にしていたのです。
合唱の声を受けて、自分の歌も動く
同じBillboard JAPANの対談で、土屋は、クワイアと呼ばれる合唱団と歌う魅力にも触れています。
楽器とは違う、人の声や息の重なりが感じられ、後ろから背中を押されるように、自分の中のスイッチが入ると話していました。
一人で声を張るときとは違う力を、共演者から受け取っていたのです。
「Melt Into Blue」については、自分一人の声より、合唱と演奏する形で音源にしたかったほどだと語っています。
人の声が加わることで生まれる厚みや重さを、それだけ大切にしていました。
この曲を聴く入口としても、主旋律の歌だけでなく、ほかの声が入ることで気持ちがどう広がるかという視点が役立ちます。

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声をまっすぐ出せる曲を選ぶ
『ザ・マスクド・シンガー』を振り返った2022年の取材では、R&Bやヒップホップは、リズムや歌い方の面で苦手な分野だと話しています。
そのため、シンプルなビートの曲や、声を思いきりストレートに出せる曲を選んだそうです。
好きな曲だけに偏らないように、好きな曲と挑戦する曲を半分ずつ取り入れていたともいいます。
自分の声をどう出したいかを考えることは、曲選びの段階から始まっていました。
実際に番組で歌った鬼束ちひろの「月光」とSHOW-YAの「限界LOVERS」は、普段からカラオケで歌っていた曲だといいます。
また、名前や見た目の印象をいったん消し、自分の声と歌い方だけで聴き手を動かせるか試したかったことも、出演の理由でした。
選曲の好みと、歌そのものを届けたいという意志が重なった挑戦です。
歌詞の強さの奥にある気持ちも伝える
2023年末、翌年の舞台「SaGa THE STAGE~再生の絆~」へ向けたOVOの取材では、言葉の意味に合う歌い方をしたいと語っています。
この時点では楽曲についてこれから相談する段階でしたが、歌詞を音と一緒に届けたいという方針は明確でした。
特に日本語の歌詞は、意味がまっすぐ心へ届くものだと捉えていました。
土屋が挙げたのは、強い言葉の奥にある悲しさや本当の気持ちまで伝えることです。
言葉が激しいから声もただ激しくする、というだけでは、その奥の思いが取り残されてしまいます。
何を言っているかと、なぜそう言うのかを一緒に歌う考え方です。
役として歌う場合も、その人物の感情と自分の感情を結びつけ、うそのない歌を届けたいと話していました。
これは、本人にとって普段のライブと共通する姿勢です。
別の人物を演じる歌でも、自分の中で気持ちを動かすことを大切にしています。
聴く人や場所に合わせて、歌の表情を選ぶ
「Switch On!」の録音では、また別の方向を意識していました。
2011年の『仮面ライダーフォーゼ』主題歌発表会見で、子どもたちが乗れるように歌い方を変えたと明かしています。
自分の声の持ち味を出しながらも、その曲を受け取る相手に合わせて届け方を考えていたのです。
ブルーノート東京のインタビューでは、同会場で何を表現するかを考え、美しいメロディーの曲や深いメッセージのある曲、影響を受けた歌手のカバーを用意した経験を語っています。
バンドに支えられて歌う中で、自分の歌い方も変わり、いろいろな引き出しを開けた感覚があったそうです。
会場と選曲が、普段とは異なる声の表情を引き出す機会になっていました。
同じ取材で振り返った自宅での「紅蓮華」のカバーには、部屋の大きな反響音も入っていたといいます。
そのとき伝えたかったのは、整ったスタジオだけでなく、どこでも音楽はできるということでした。
同じ歌声でも、響く場所や録音の条件によって、届く印象には違いが生まれます。
ロックの勢い、柔らかな曲の落ち着き、合唱に支えられる歌、言葉の意味を届ける舞台。
土屋アンナは、自分の声を軸にしながら、その場に合う表現を探しています。
「rose」の歌の勢いと、まっすぐ声を出せる曲を選ぶという話。
土屋アンナの歌を聴くときは、声の強さに加えて、思いをどのように前へ出そうとしているかにも注目してみてください。
ゴスペルの先生に学んで感じた声の変化は、土屋アンナの歌唱変遷でたどっています。







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