上原大史の歌声はどう変わった?WANDS加入・模倣の限界・第5期終了まで

上原大史の歌声がWANDS加入から第5期終了決断まで変化した歩みをたどる記事のアイキャッチ シンガー

上原大史さんの歌声は、2019年にWANDSへ加入した瞬間から完成していたわけではありません。
変化の中心にあったのは、高音が出るようになったことより「WANDSらしく歌うとは何か」という答えが何度も変わったことです。

初期には歴代ボーカルの声へ寄せようとし、一曲なら成立してもライブでは喉が持たない壁へぶつかりました。
その後は新曲を増やし、自分の発声を土台にしてもWANDSになれる場所を作ります。
2025年には「WANDSだから」を考えすぎず、上原大史として自然に歌える段階へ進みました。

ところが2026年、本人は2027年3月でWANDSとしての活動を終えると発表します。
約7年続けても、歴史を損ねるのではないかという「枷」は消えなかったからです。
この記事では、受け継いだ声を真似た青年が、第5期の基準を作り、最後に大きな名刺を手放すまでを年代順にたどります。

2019年、第5期は「何を受け継ぐか」が決まらないまま始まった

WANDS第5期は、2019年11月17日に始動しました。
上原さんは後に、当初は過去を継承するのか、新しいWANDSになるのか、明確なビジョンがなかったと振り返っています。

これは歌い方にも直結しました。
WANDSという名前には、上杉昇さんと和久二郎さんが残した声の記憶があります。
新しいボーカルが自由に歌えば別のバンドだと言われ、似せれば物真似だと言われる。
どちらへ進んでも比較から逃れられません。

最初のシングル「真っ赤なLip」は、第5期の新曲でありながら、聴いた瞬間にWANDSだと分かる勢いも必要でした。
上原さんは強い高音で看板へ飛び込みましたが、この時点ではまだ「上原大史が歌えばWANDSになる」という信頼は積み上がっていません。

2020年、アルバムを作って初めて「前へ進めた」と言えた

2020年の『BURN THE SECRET』には、第5期の新曲と過去曲の第5期版が同居しました。
新しい声だけを見せることも、昔の曲だけを再現することもできない第5期にとって、この混在そのものが最初の試験でした。

上原さんは歴代の歌い方を真似しようとしました。
しかし一曲だけなら何とかできても、ワンマンライブ全体では無理が生じ、喉を痛めて歌えないこともあったと話しています。

ここで歌声が急に軽くなったわけではありません。
変わり始めたのは、WANDSらしさを声の土台にする発想です。
自分の発声を土台に置き、歴代のニュアンスを必要な場所へ足す方向を探し始めました。

2021年、「カナリア鳴いた頃に」で過去に正解のない声を作った

第5期が自分たちの歌を作るうえで、大きな一歩になったのが「カナリア鳴いた頃に」です。
上原さんが詞を書き、従来のWANDSから意外に感じられる柔らかな曲調へ進みました。

過去曲を歌う時には、聴き手の中に正解があります。
しかし新曲には、比べるべき上杉版も和久版もありません。
上原さんの声が、その曲の最初の記憶になります。

太い高音だけでWANDSを証明し続ける必要がなくなり、息や余白を含む表現が第5期の輪郭へ加わりました。
この曲で声の色を増やしたことは、模倣をやめるための小さな独立宣言だったと言えます。

新曲で第5期WANDSの最初の声を作り始めた上原大史

2022年、過去曲の第5期版を残すことで歴史との距離を測った

2022年には「世界が終るまでは… [WANDS第5期ver.]」が正式に発表されました。
第5期の新曲が育つ一方で、WANDSを象徴する過去曲から離れることもできません。

上原さんは、始動当初にはこの曲をうまく歌えず、厳しい反応も多かったと振り返っています。
その曲を第5期の作品として録音することは、似ているかどうかを競うだけでなく、自分たちが歴史のどこへ立つかを残す作業でした。

この時期の重要な変化は、比較が消えたことではありません。
比較されながらでも、ライブと新曲を続けられる歌い方ができ始めたことです。

2023年、『Version 5.0』で第5期の本当の一枚目ができた

2023年の『Version 5.0』を、上原さんは第5期にとって本当の一枚目に近い作品として捉えています。
加入直後のように「WANDSならどう歌うか」を考え込みすぎず、現在のバンド像が見えるようになったからです。

「RAISE INSIGHT」では速い曲の中で言葉を鋭く届け、「愛を叫びたい」では違う明るさを出します。
過去の声へ似せることより、一枚の中で第5期がどこまで振れ幅を持てるかが課題へ変わりました。

柴崎浩さんも、上原さんが歌うことで幅広い曲が格好よく成立すると評価しています。
「歴代ボーカルの代わり」ではなく、曲を上原さんへ渡す理由が生まれた時期です。

2024年、最大の再評価は達成感と虚しさを同時に連れてきた

2024年、THE FIRST TAKEで歌った「世界が終るまでは…」は大きく受け入れられました。
始動当初に厳しい評価を受けた曲で、約5年後に好意的な反応を得たことは、第5期が土台を作った証明に見えます。

ところが本人の感情は、単純な成功ではありませんでした。
再生されたのは自分の声の力なのか、曲が持つ伝説の力なのか。
歌詞を書き、最初にヒットさせた上杉昇さんの曲を借りて評価されることへ、うれしさと虚しさが同時にあったと明かしています。

ここが上原さんの変遷を特別にします。
過去曲を歌えるようになれば葛藤が終わるのではなく、うまく歌えて評価されるほど、誰の成果なのかという問いが深くなりました。

上杉昇さんの歌唱変遷と並べると、同じ曲を歌っていても二人が背負う時間の違いが分かります。

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2025年、「上原大史として歌う」ことが第5期の自然な形になった

『TIME STEW』の制作では、上原さんは「WANDSだからこうする」と考えることが減りました。
ボーカリスト上原大史として曲へ向かい、録音でもライブのように歌うことで、自然なテイクを残せるようになります。

「Shooting star」の滑らかな歌、「リフレイン」の長い音とシャウト、「WE ALL NEED LOVE」の開放感。
同じ声を歴代の型へ押し込むのではなく、曲ごとに必要な表情を選んでもWANDSとして成立する段階です。

2024年のツアーでは第5期曲が本編の中心となり、90年代曲がアクセントになる構成も見られました。
過去曲を借りて新曲を支えるのではなく、新曲の世界へ過去曲を迎え入れられるほど、第5期の時間が厚くなったのです。

第5期の曲がライブの中心となり上原大史の声が現在のWANDSを作った

2026年、歌えるようになった後も消えなかった「枷」を手放した

2026年7月22日、第5期WANDSは2027年3月のラストツアーをもって現体制を終了すると発表しました。
上原さんはWANDSとしての活動を終え、一人のアーティストとして進む決断を伝えています。

理由は、昔の曲が歌えないからでも、第5期が受け入れられなかったからでもありません。
本人は、約7年たっても、WANDSの歴史やイメージを損ねるのではないかという「枷」を拭えなかったと説明しました。

2019年には、WANDSへ合わせる正しい声を探しました。
2023年には、自分の声で第5期の基準を作りました。
2025年には、WANDSを意識しすぎず自然に歌えるようになります。
歌唱面では自由になったのに、名前を背負う心の負担だけは最後まで残ったのです。

上原大史の変遷は、物真似をやめた成功と、名刺を手放す決断で完成する

上原さんの歌声を初期と現在で比べると、単に高音が安定したという説明では足りません。

初期は、歴代WANDSの声へ近づくことが所属の証明でした。
新曲とライブを重ねるうち、自分の発声を土台にした方が長く歌え、結果として第5期らしさも強くなります。
最後には、上原さんが歌えば新曲も過去曲もWANDSとして成立する場所まで来ました。

それでも「WANDS」という大きな名刺を持ち続ける不安は消えませんでした。
だから2027年の終了は、模倣に失敗して退く結末ではありません。
借り物の声をやめ、自分の声で第5期を作り切ったからこそ、次は名前の外で何が残るかを試す決断です。

現在の高音や裏声、曲ごとの強弱をどう使っているかは、上原大史さんの歌い方・発声分析で詳しく整理しています。

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