北山宏光の歌い方|「ICY」の声の切り替えと、強く打ち出す歌

2026年4月掲載のインタビュー撮影での北山宏光 シンガー
2026年4月掲載のインタビュー撮影での北山宏光

北山宏光は、「ICY」でファルセットと地声を行き来し、流れるように歌うことを意識しています。
一方、「ADrenaline」では、サビに勢いがあふれるような歌い方を選びました。
声の切り替え、言葉の運び、録音とライブで変える選択から、その歌い方を見ていきます。

ICY 公式MV(2026年)

「ICY」|ファルセットと地声を行き来して、流れを作る

「ICY」は、斎藤宏介が北山に向けて書いた曲です。
北山は、斎藤の透明感のある高音と同じ方向で競うのではなく、自分を通すとどうなるかを示そうと考えていました。
提供者の声を再現するより、自分の声で軽快さを表すための選択が、録音にもあります。

2026年の「ICY」の録音で、北山が意識したのは、言葉を一つずつ粒立てないことでした。
軽快なリズムの中へ、すっと入っていくように歌いたかったと話しています。
言葉を強く区切るよりも、流れるように歌うための選択です。

サビでは、裏声のファルセットと地声を行き来しました。
声を切り替える方法も、流れるように歌うという意図の中に組み込んでいます。

言葉の伸びやかさを際立たせたいという考えから、編曲でもブラスの音を減らしました。
声の運び方と、伴奏に何を残すかを合わせて、一曲の表情を作っています。

2025年9月27日の『波紋-HAMON-』ツアーで歌う北山宏光
2025年9月27日の『波紋-HAMON-』ツアーで歌う北山宏光。
画像出典:写真掲載元

「ADrenaline」|勢いのある歌い方と、録音で作る音

2025年の「ADrenaline」では、サビを、アドレナリンがあふれるようなイメージで歌ったと説明しています。
具体的には、歌詞の「独白」が「ドバドバ」と聞こえることを意識したそうです。
歌詞を別の言葉へ変えるのではなく、発音の聞こえ方に勢いを持たせる工夫でした。
その後にぐっと衝撃が来る感じも含め、ライブでの動きにつながる歌にしたいと考えていました。

この曲では、ボーカルの加工にも本人の意図があります。
拡声器をずっと使っているようなイメージで、音作りを頼んでいました。
言葉を滑らかにつなぐ「ICY」に対して、ここでは一語の響きに勢いを込め、さらに拡声器のような音へ仕上げる。
曲ごとの違いは、強い声か弱い声かという二択よりも、言葉をどう聞かせたいかに表れています。

ADrenaline 権利者提供音源(2025年)

速い言葉の運びも、別の課題になります。
『波紋-HAMON-』の取材では、「OMG!!!」のラップがとても速く、苦労したと振り返っていました。
声を強く聞かせる「ADrenaline」に対し、こちらは短い時間に言葉を運ぶ難しさが、本人の記憶に残った曲です。
ロックを軸にした同じアルバムでも、必要になる声の仕事は一つではありません。

曲や共演者に合わせて、声色を探す

声を選ぶ基準は、曲ごとに細かく変わります。
2026年の取材で、北山は「タイムトラベラ」では艶を、「ULTRA」では爽やかさと包み込むような感覚を意識し、そこに強さも入れたと説明していました。
同じ時期の作品でも、同じ声で一律に歌い切るわけではありません。

共演曲「11:11」では、SHUN、Jua、SERINAの声がすでに入ったところへ、自分の歌を加えています。
その世界の中で浮かない表情や声色を探し、普段ラップで使う声を選びました。
相手の声があることは制約になるだけでなく、自分がどんな声で参加するかを考える手掛かりにもなっています。

ここで聴き比べたいのは、北山の声が一番大きく聞こえる場所だけではありません。
単独の曲で作る艶や爽やかさと、共演者の中に入るための声の表情には、それぞれ役目があります。
声色の違いを曲の世界観と結び付けると、歌い分けが単なる変化ではなく、その曲に必要な選択だとわかります。

自分のよさが出るキーと、録音で攻める声

北山は2026年10月の取材で、自分は低音が強いと話しています。
グループではメンバーそれぞれに合うキーが異なったのに対し、ソロでは、自分のよい部分が出る音の高さや声の使い方を考えて曲を作るようになったそうです。
高い音をどこまで出せるかと、自分の魅力がよく出る場所を選ぶことは、同じではありません。

そのうえで、曲のために普段とは違う声を選ぶこともあります。
「BACKLASH」では、一度録った歌を聴き直し、別の日にサビを録り直しました。
ライブで歌い続けることを考えた普段の声の使い方から、今回は疾走感を出すための、録音に合わせた声へ切り替えたと説明しています。

この判断では、歌いやすさだけで仕上がりを決めていません。
曲に必要な勢いを、どこまで声に乗せるかを聴いて選び直しています。
また、ライブではその勢いを抑えながら、どこで力を引き上げるかが難しいとも話していました。
録音での一瞬の強さと、公演を通じて届ける歌は、異なる条件の中で組み立てられているのです。

録音で試す声と、ライブでよく鳴る声

北山は、レコーディングではテイクを重ねながら、新しい歌い方や音を試すことがあると話しています。
一方、ライブでは、声色よりも音がよく鳴る歌い方になり、喉を潰さないことも意識するそうです。
録音で表現を探るときと、ライブで歌を届けるときでは、優先するものが変わります。

2025年9月27日の『波紋-HAMON-』公演には、その声の幅が表れた場面があります。
「始まりの螺旋」では少し甘い歌声を爽やかに響かせ、「EYE Shadow」では繊細なファルセットとウィスパーボイスを聴かせたと報告されています。
公演の中には、大きな声で押す場面だけでなく、息を含む細やかな声を聴かせる場面もありました。

さらに「Selfish」では、高低差のある旋律に、言葉を語るポエトリーリーディングを織り交ぜています。
本編最後の「波紋-HAMON-」では、客席とシャウトを重ねました。
歌う、語る、観客へ声を投げかけるという違いも、一つの公演を動かしています。

「ICY」の滑らかな流れと「ADrenaline」の強い響きを比べた後は、こうした静かな声や語りの場面にも注目できます。
強い歌を歌えることに加え、声を細かく変えて聴き手との距離を作れることが、北山のライブの表情を広げています。
曲の途中で声の質感が変わるとき、その変化がどんな言葉や場面に伴っているかを追うと、歌の狙いを捉えやすくなります。

「ICY」で声を切り替えながら流れるように歌い、「ADrenaline」では歌い方と音作りで勢いを表す。
北山宏光の歌い方には、曲の表情と歌う場に合わせて、声の使い方を選ぶ姿があります。

昔の曲をどう歌い直し、新しい録音で何を選んできたかは、北山宏光の歌唱変遷でたどっています。

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