北山宏光は、若い頃に作った「FORM」を、ソロ活動でも歌っています。
当時の歌詞に青さを感じながら、それも自分の一つの正解だと受け止めていました。
そして2026年の「タイムトラベラ」では、正確な仮歌に寄せた歌唱を、自分のノリで歌い直しています。
昔の歌を今も歌うことと、新しい歌い方を試すこと。
その間には、グループで歌っていた声を、自分に合う高さや曲の表情から考え直す歩みがありました。
同じ曲をもう一度歌う時、北山は何を残し、何を選び直してきたのでしょうか。
灰になる前に 公式MV(2021年)
2014〜2021年|グループの声と、自分の名で歌う曲
2014年の歌唱評で、芸能ライターのジャニ子は、Kis-My-Ft2の中で北山宏光の声量に注目していました。
藤ヶ谷太輔とハーモニーを重ねることも多く、二人はグループの歌を担う存在として捉えられています。
ミュージカル『愛の唄を歌おう』での歌唱も、同じ評の中で取り上げられました。
グループと舞台の両方に、歌い手としての活動がありました。
その頃から、北山には自分の名で歌う曲もあります。
2014年に発売された『Kis-My-Journey』には、ソロ曲「FORM」が収められました。
本人が初めて作詞・作曲した曲ですが、作った時期は発売よりも前です。
2024年の取材では、21歳の時に作った曲だったと振り返っています。
後にソロとして歌い直す曲には、若い頃から抱えてきた思いがありました。
2021年の「灰になる前に」も、グループでの活動の中から生まれたソロ曲です。
メンバー7人それぞれの楽曲は、その年5月の配信ライブ『HOME』を楽しんでもらうために制作されました。
グループの一員として歌う中でも、一曲を自分の声で届ける機会を重ねていたのです。
2024年|ファンの中で育った「FORM」を、今の自分が歌う
2023年にソロデビューした北山は、翌年6月に単独公演『RANSHIN』を開催しました。
6月15日の公演では、ソロデビュー曲「乱心-RANSHIN-」を歌い終えると、静かにセンターステージへ移動しています。
そこで始まったのが「FORM」でした。
公演レポートは、イントロが流れた瞬間、ファンから大きな歓声が上がったと伝えています。

画像出典:写真掲載元
この曲を選んだ理由を、北山は、自分以上にファンが大切にしてくれていたのではないかと説明しました。
自分の知らない場所で曲が育っていたように感じたそうです。
何を歌えば喜んでもらえるかと考えた時、浮かんだのが「FORM」でした。
一度作った歌が、聴き手の時間の中で持ち続けられていたのです。
もちろん、今の自分が歌詞を見返せば、青いと感じるところもあります。
21歳の時と現在では、考え方も同じではありません。
それでも、昔の言葉を自分の一部であり、一つの正解だと受け止めて歌っていました。
『ZOO』に再収録する時にも、本編の曲として並べるのでなく、ボーナストラックに置いたことに意味があると話しています。
新しい活動の中で、自分のルーツも一緒に届ける。
「FORM」を歌い直す変化は、昔の歌を今の声でどう引き受けるかという、本人の向き合い方に表れていました。
FORM 権利者提供音源(2014年原盤)
ソロ活動について北山は、自分で決める部分が大きくなったと話しています。
制作に使う時間も、何もないところから生み出す作業も増えました。
歌う曲を選ぶことから、その曲をどこに置くかまで、本人の判断が作品の形になっていきます。
2025年|ロックに振り切っても、一つの声には絞らない
2025年のアルバム『波紋-HAMON-』は、ロックを軸にした作品になりました。
北山は、小さい頃から好きだった音楽を選ぶことで、まだ出し切れていない自分を表したかったと話しています。
歌やダンスを含め、振り切った表現をライブへ持っていく考えでした。
声で取り組む新しい課題もありました。
「OMG!!!」の録音では、ラップが非常に速く、苦労したそうです。
好きな音楽へ進むことは、そのまま楽に歌える曲を選ぶことではありませんでした。
表したい音楽に、自分の言葉の運びを合わせていく難しさもあったのです。
「OMG!!!」MV(2025年)。
制作を終えた北山は、自分の尖った部分が残っていると感じつつ、それを単なる不満で終わらせず、エンターテインメントとして表せるようになったことを成長と捉えていました。
強い気持ちを、観客が受け取る歌とステージにしていく。
好きな音楽へ向かう勢いにも、届ける相手への意識が重なっていました。
9月27日のツアー公演には、いくつもの声の表情がありました。
公演レポートは、「始まりの螺旋」で少し甘い声をさわやかに響かせたと伝えています。
「EYE Shadow」では、繊細なファルセットやウィスパーボイスを聴かせました。
ロックを掲げる公演の中にも、細やかな声をじっくり聴かせる場所があったのです。
「Selfish」では、高低差のある旋律の中へ、言葉を語るポエトリーリーディングも織り交ぜています。
そして本編最後の「波紋-HAMON-」では、観客とシャウトを重ねました。
強く歌う、息を含む声で聴かせる、語る、客席と声を交わす。
自分の表現を前に出す公演でも、歌の届け方は曲ごとに変わっていました。
波紋-HAMON- 公式ライブ映像(2025年ツアー・LaLa arena TOKYO-BAY公演)
2026年|正確な仮歌から、自分のノリへ戻ってくる
2026年の「タイムトラベラ」は、ライブの後に藤家和依と、シティポップのような曲を作ろうと話したことから始まりました。
北山が参考にしたい曲を示し、藤家がデモを作っています。
その曲へ歌を入れる時、最初に手がかりにしたのは、ボーカロイドによる仮歌でした。
本人の説明では、仮歌には音程の揺らぎがなく、正確さがありました。
最初の録音では、そこへ寄せて歌ってみたそうです。
ところが、録った歌には何か違うと感じました。
そこで別の日に、自分が持っているノリや、こう歌いたいという思いを自由に出して、録音し直しています。
仮歌を再現する方向から、自分が曲をどう感じて歌うかへ、基準を移したのです。
自分で選んだ曲でも、最初に歌った形を、そのまま完成形にはしませんでした。
この曲では、艶のある表情も意識していました。
同じ作品に入った「ULTRA」では、爽やかさと包み込むような感覚を選んでいます。
自分のノリを生かすことは、全てを同じ声で歌うことではありません。
曲の中でどんな人物や景色を伝えるかを考えながら、自分の声に引き寄せていました。
タイムトラベラ 権利者提供音源(2026年)
自分に合う高さと、曲のために攻める声
2026年10月の取材では、ソロになって変わった歌との向き合い方を、さらに具体的に説明しています。
本人の自覚では、自分は低音が強い。
グループでは、それぞれに合う音の高さが違いましたが、ソロでは自分のよさが出るキーを考えて曲を作るようになりました。

画像出典:写真掲載元
ただ、歌いやすい位置を見つけて終わりではありません。
新曲「BACKLASH」では、一度歌を録った後で聴き直し、別の日にサビを録り直しました。
普段はライブを見据え、声を作り込みすぎないようにしていましたが、この曲では疾走感を出すため、録音に合わせた声の使い方を選んだといいます。
「BACKLASH」MV(2026年)。
「タイムトラベラ」では、仮歌から離れて自分のノリを戻しました。
「BACKLASH」では、普段の歌い方から踏み出し、曲の勢いを出し直しています。
同じ録り直しでも、選ぶ方向は曲によって違っていました。
ライブでは、その勢いを抑えながら、どこで力を引き上げるかが難しいとも話しています。
一度の録音で欲しい響きと、公演で歌い続ける声の両方を考える姿がありました。
昔の「FORM」にも、その頃の自分の正解がある。
新しい曲では、いまの自分がよいと思えるまで、歌い方を選び直す。
北山宏光の歩みには、過去の自分を引き受けながら、その先の歌を自分で決めていく変化があります。
ファルセットと地声の使い分けや、録音とライブでの声の選択は、北山宏光の歌い方で詳しく見ていきます。







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