橘慶太の歌い方と高音|正しい発声を覚えてから「あえて外した」理由

橘慶太の歌い方と高音発声を分析する記事のアイキャッチ シンガー

橘慶太さんの高音が特別なのは、ただ音域が広いからではありません。
むしろ面白いのは、発声理論を何年も学んだ末に「正しく出せる声だけでは、人の心が動くとは限らない」と考えるようになったことです。

本人は、安定した道を歩く姿より綱渡りの方が見ていて緊張するように、歌にも少し危うい部分があった方が耳を引きつけると説明しています。
これは喉を痛める歌い方を勧める話ではありません。
安全に戻れる技術を持ったうえで、曲の感情に合わせて声の輪郭を変えるという話です。

橘慶太さんの歌い方を「強い地声」「ミックスボイス」「きれいな裏声」のどれか一つに決めると、この核心を見落とします。
声を出す技術より先に、どの瞬間なら少し揺らしてよいかを判断する力こそ、現在の歌唱を支えています。

結論は「正しい発声を捨てた」のではなく、正しさを土台にした

橘慶太さんは、近年の歌唱を完全な自己流だと語っています。
ただし、それは何も学ばず感覚だけで歌っているという意味ではありません。

発声に違和感を覚えた2008年頃には、短期でロサンゼルスへ渡り、なぜ声が出るのかを理論から学びました。
感覚的な助言だけでは納得せず、身体の使い方に理由を求める性格だったからです。

何年も勉強した結果、正しい発声は喉を長く保たせる一方、それだけで必ず感情が伝わるわけではないと気づきます。
そこで技術を否定したのではなく、いつでも安全な声へ戻れる場所として残し、その上に曲ごとの危うさを加えるようになりました。

「少し荒く聞こえるから間違い」「滑らかだから正解」という単純な採点が通用しないのは、この順番があるためです。
橘慶太さんの声は、正確さを目標にした後、正確さをどう崩すかまで進んでいます。

高音の正体は、一つの声を太く押し上げることではない

「DoU」のサビでは、前半をファルセットで歌い、トラックが強くなる位置で声に芯を足して地声へ移ると本人が説明しています。
同じサビの中でも、すべてを同じ太さで通しているわけではありません。

この切り替えは、高音を出せることの誇示ではなく、楽曲の展開を声でも大きくするための編曲です。
伴奏が開く瞬間に声も前へ出るから、聞き手は音楽全体が急に広がったように感じます。

曲の展開に合わせて声の芯を入れ替える橘慶太

専門家やボイストレーナーによる解説では、橘慶太さんの歌唱について、軽いファルセット、高い位置でも崩れにくいリズム、地声らしい芯を持つ高音など、複数の特徴が挙げられています。
説明が分かれるのは、どれかが誤りだからではなく、一曲の中で声の状態が動いているからです。

ミックスボイスの出し方と見分け方でも整理しているように、声区名は音色を一つに固定するラベルではありません。
橘慶太さんの場合は、地声か裏声かを当てるより、伴奏のどこで芯を足し、どこで軽くしたかを見る方が歌の設計を理解できます。

hi-Dが出ることより、録音して「使える声」を選ぶことが重要だった

2021年の時点で、本人は地声ならhi-D付近まで余裕があったと話しています。
ただし、この数字だけを橘慶太さんのすごさとして切り取ると、本来の考え方とは逆になります。

本人が繰り返し重視しているのは、身体の内側で聞こえる声と、外へ届く声が違うことです。
さらに、肉声ではよく聞こえても、伴奏に混ざるとマイクが拾いにくい帯域があります。

そのため、自宅では同じ箇所を何度も録音し、どの発声なら音楽の中で抜けるかを確認します。
最高音を更新するより、録音された声が曲の中で役割を果たすかを選び続ける時間の方が長いのです。

ここに、ボーカリストとプロデューサーが同じ人物である強みがあります。
本人の喉で気持ちよい声ではなく、完成した音源で聞き手へ届く声を最終判断にできます。

万人に共通する「この感覚で出す」を信用しすぎない

橘慶太さんは、腹から出す、鼻へ響かせるといった感覚的な説明が、すべての人に同じように通じるとは考えていません。
身体の大きさも声帯も違うため、ある人に有効な感覚が別の人には逆効果になる場合があるからです。

自身もさまざまな発声法を調べ、海外の歌手が鼻の響きをどう使うかまで見直しました。
そこでたどり着いたのは、万能な一つの感覚ではなく、自分の基準点を知ることでした。

橘慶太さんの歌い方をまねる時も、「鼻にかける」「地声で押す」といった一動作へ縮めるべきではありません。
一曲の中で軽い声と芯のある声をどう並べ、録音した時に言葉が伴奏へ埋もれないかを見る方が、本質に近づきます。

制作を始めたことで、声は主役から「音楽の一部」になった

2009年の「New World」をきっかけに、橘慶太さんは楽曲制作へ関心を深めました。
2013年のソロ活動では、自分の要望を制作者へ言葉だけで伝え切れないと感じ、自ら制作ソフトを扱うようになります。

やがて作詞、作曲、編曲だけでなく、ミックスやマスタリングまで担うようになりました。
この変化は、歌声の見方にも影響します。

歌手から楽曲全体を設計する制作者へ進んだ橘慶太

ボーカルを常に一番大きく、太く、美しく聞かせる必要はありません。
音数が多い曲では短く鋭い声が合い、余白の多い曲では息や間が曲の空気を作ります。
近年のソロ作品では、歌唱力を前へ出すより、声をリズムや音色の一部として置く選択も増えています。

三浦大知さんの歌とダンスを一体化する設計と同じく、身体能力だけを見ても全体像は分かりません。
橘慶太さんの場合、歌い手がミックスの判断まで行うことで、声の強さを足すだけでなく、あえて引く自由も手に入れました。

今入れる? 近くで入りやすい飲食店がわかる混雑予報マップ

危うさは、苦しそうに歌うこととは違う

本人が語る「綱渡り」を表面だけまねると、張り上げや喉の痛みを表現力と取り違える危険があります。
橘慶太さんには、理論を学び、録音を重ね、ライブで長時間歌ってきた土台があります。

参考にしたいのは危うい音そのものではなく、どこを崩しても戻れるかを知っていることです。
痛みや強いかすれが出る声は、聞き手を引きつける表現ではなく、単に続けられない発声になり得ます。

見るべきポイントは、強い高音の直前だけではありません。
その前でファルセットへ軽くしたか、伴奏が広がる瞬間にだけ芯を足したか、次のフレーズでは再び力を抜いているか。
一曲の中に逃げ道があるから、強い瞬間が強く聞こえます。

声変わりを含めて歌い方を何度も作り直した過程は、橘慶太さんの歌唱変遷で年代順にたどります。
現在の自由な歌い方は、最初から持っていた高音を守り続けただけの結果ではありません。

まとめ

橘慶太さんの高音は、太い地声を最後まで押し上げる一種類の声ではありません。
ファルセット、芯のある声、息を含む声を曲の展開に合わせて入れ替え、録音した時に伴奏の中で生きる声を選んでいます。

最大の特徴は、正しい発声を知らない自由さではありません。
2008年頃から理論を学び、喉を保つ声を理解したうえで、感情を動かすために少しだけ均整を崩せる自由です。

だから参考にすべきなのは、危うい声をそのまま再現することではありません。
一つの声へ固執せず、何度も録り、曲の中で必要な声を判断する姿勢です。
橘慶太さんは、高音の高さよりも「どの声ならこの曲が生きるか」を考え続ける歌手です。

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました