BAND-MAID・SAIKIの歌い方・発声|低い声が重い演奏をまとめる理由

BAND-MAID・SAIKIの低い声と高音の歌い方を分析する記事のアイキャッチ SAIKI(BAND-MAID)

SAIKIさんの歌声は、女性ロックボーカルとしては低く、落ち着いて聞こえます。
けれど、BAND-MAIDの音の中で本当に効いているのは、低さそのものではありません。

ギター、ベース、ドラムが全員前へ出る演奏で、声まで同じように暴れたら曲は輪郭を失います。
SAIKIさんは、太い芯を残しながら言葉とメロディーを一本の線にし、演奏の圧を「聴ける形」にまとめています。

この記事では、SAIKIさんの歌い方と発声を、単なる低音やミックスボイスの分類ではなく、密度の高い演奏を束ねる声として読み解きます。

SAIKIの低い声は、目立つためではなく演奏を整理する

BAND-MAIDが二人目のボーカルを探した時、選ばれた理由の一つは、小鳩ミクさんとは異なる低く重い声でした。
可愛らしい外見と激しい演奏の落差を強くするだけでなく、バンドの音そのものを重く見せる役が必要だったのです。

ここで大切なのは、低い声が常に大きく鳴っているわけではないことです。
SAIKIさんは、声の芯を中央に置くような歌い方を保ちながら、楽器が細かく動く場面では言葉を短く進め、メロディーが広がる場面では長い音を残します。

発声を扱う複数の見立てでも、深さのある音色、前へ出る成分と奥行きの両方、低めの女性声という評価は共通しています。
一方で、響きの位置や声区の呼び方は一致していません。
外から見えない喉の動きを一語で決めるより、「太さを残しても演奏の動きを邪魔しない」と捉える方が実際の魅力に近いでしょう。

個々の楽器が強いのに、歌が埋もれず、かといって演奏の上へ不自然に浮かない。
SAIKIさんの低音は主役を奪う重りではなく、五人の音を同じ画面へ収める額縁のように働きます。

強い声より先に、強い言葉を作っている

初期のインタビューで、SAIKIさんは現在の声を多くの練習の結果だと話しています。
しかし、その後の録音で見せた成長は、単純な声量の増加ではありませんでした。

「Awkward」は、従来より柔らかく切ない曲です。
録音は30〜40分ほどで終わるほどイメージが明確だった一方、優しく歌っても言葉の意志が弱くならないよう、アクセントの置き方を意識していました。

これはSAIKIさんの歌い方を理解する重要な手掛かりです。
強い女性を表現するために、全部を大声へするのではありません。
声を抑えた場面でも、どの言葉を前へ置くかを決めれば、人物の強さは残せます。

「Don't you tell ME」では、サビの言葉が頭の中で繰り返されるメロディーを自ら求めました。
歌手が完成した伴奏を受け取るだけでなく、聴き手がどこを持ち帰るかまで曲作りへ渡しているのです。

高い音域でも従来と違う声の入口を試したSAIKI

「Unleash!!!!!」は得意な高さを越えて作った声

SAIKIさんの高音を何でも地声やミックスボイスの一語へ入れると、本人が経験した難しさが消えてしまいます。
「Unleash!!!!!」の冒頭は、少し裏返るような声が強いフックになっていますが、本人にとって普段おいしいと感じる音域よりさらに上でした。

デモを受け取った時には、いつもより高い気がしながらも、求められているなら挑むものだと受け止めました。
録音ではボーカルテックへ何度も相談し、複数の歌い方を試しています。

出来上がった声は、当たり前に出るものではなく、ライブで同じ負荷を背負う難しさも本人が認めています。
つまり、あの高音は「低い声の人が簡単に裏声へ逃げた」結果でも、「全部を太い地声で押し切った」結果でもありません。

自分の得意な場所を少し越え、曲の入口として一番面白い声を探した結果です。
本人は引き出しが増えたと表現しましたが、その裏には、録音で成立する声とツアーで繰り返せる声を分けて考える冷静さがあります。

ミックスボイスと裏声の違いを読む時も、音の名前だけで正解を決めないことが大切です。
同じ歌手でも、曲の高さ、音量、言葉、必要な質感によって選択は変わります。

荒い声は常備品ではなく、場面を変えるスイッチ

近年の「Shambles」では、SAIKIさん自身がエッジのある声を多く使ったと説明しています。
狙いは一曲を最初から最後まで荒くすることではなく、展開が落ちる場所の空気を大人っぽく変えることでした。

ここにも、低い声を売り物として連打しない姿勢が表れています。
荒さは声の本体ではなく、直前までの景色を切るための効果です。

ファンの間でも、初期より現在の方が荒い質感を必要な時だけ選べるという見方がある一方、すべてを同じ発声用語で説明することへの異論があります。
この食い違いは欠点ではありません。
SAIKIさんが、きれいな声、低い芯、高い裏返り、短い唸りを曲ごとに持ち替えているため、一つのラベルでは足りないのです。

声を荒らす表面だけを真似するのはおすすめできません。
本人は現在も定期的にレッスンを続け、体と喉の状態を整えながら、古い曲も新しい曲もライブで更新できるよう取り組んでいます。

小鳩ミクとの二声が、SAIKIをさらに太く聞かせる

SAIKIさん一人だけを切り取ると、BAND-MAIDの歌の設計を半分しか見られません。
小鳩ミクさんの明るく高い声があることで、SAIKIさんの暗さと太さは輪郭を増します。

本人も、互いに持っていないものを補える二人だと説明しています。
同じ高さを同じ声色で重ねるのではなく、異なる声が同じメロディーへ入るため、厚みが増えても境界が消えません。

重い演奏の中で声が聞こえる理由も、SAIKIさんの声量だけでは説明できません。
二人の声の相性、コーラスが入る位置、ドラムが歌を引き立てるために一歩下がる場面まで含めて作られています。

声と楽器の役割を組み替えながら現在のBAND-MAIDを作るSAIKI
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現在のSAIKIは、伴奏の上で歌う人から曲を動かす人へ変わった

SAIKIさんは、自分をゼロから一を生む人ではなく、出てきた案を一から百へ進めるのが得意だと話しています。
この言葉は、現在のボーカル像をよく表します。

メロディーの反復を提案し、曲の展開を求め、歌詞を書き、歌い方のイメージを仮歌で示す。
「Zen」や「Ready to Rock」では、作品の物語を歌詞へ移すだけでなく、小鳩さんが歌う言葉や、楽器が目立つイントロの長さまで考えています。

声が演奏をまとめるのは、音色が低いからだけではありません。
歌う前の段階から「この曲はどこへ向かうか」を決め、その設計と同じ方向へ声を置いているからです。

高音が出るか、地声か裏声かという問いだけでは、この面白さは見落とされます。
SAIKIさんの歌を聴く時は、声が一番大きい瞬間より、楽器が激しくなるほど言葉の線がどう整理されるか、柔らかい場面でも意志がどう残るかに注目してみてください。

まとめ

SAIKIさんの歌い方の核は、低い声を力で押し出すことではありません。
太い芯を残しながら、言葉、音量、荒さ、高音の入口を曲の目的に合わせて選び、密度の高い演奏を一つの物語へまとめることです。

初期には練習で声そのものを強くし、その後は柔らかくても意志が残る歌、得意域を越える高音、必要な時だけ使う荒さへ選択肢を増やしました。
現在は歌詞や曲の構造にも関わり、声が完成品へ乗るのではなく、曲が生まれる方向まで動かしています。

SAIKIさんの低さを真似するより、曲の中で何を一番伝えたいかを決め、不要な力を増やさない考え方の方が参考になります。
その選択の積み重ねが、BAND-MAIDの強い演奏を押し返すのではなく、聴き手へ届く形に変えているのです。

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